第84話:英雄としての帰還、世論の変化
国境の砦での戦いの後、ルーカスは学院に戻った。
しかし、戻った時には、状況が大きく変わっていた。
「殿下、お帰りなさい!」
学院の門で、多くの生徒たちが出迎えてくれた。
「これは……」
ルーカスは、驚いた。
「殿下の活躍、聞きました!」
「国境を守ったって、本当ですか?」
「すごいです!」
生徒たちが、口々に称賛の言葉を述べた。
* * *
ニュースは、すでに広まっていた。
第三王子ルーカスが、国境の砦を守った。
大型の魔物を、一人で倒した。
英雄的な活躍だった。
「殿下、新聞にも載っていますよ」
レオナルドが、新聞を持ってきた。
『第三王子、国境の危機を救う――英雄的な活躍で魔物の大群を撃退』
「こんな大きく……」
「殿下の功績は、国中に知れ渡っています」
「……」
ルーカスは、複雑な気持ちだった。
称賛されるのは、嬉しい。
しかし、教会派がどう反応するか、心配だった。
* * *
その日の夜、アルベルトから手紙が届いた。
『ルーカスへ
よくやった。
お前の活躍は、王都でも大きな話題になっている。
世論は、明らかに変わり始めている。
「禁忌」としてではなく、「英雄」として、お前を見る人が増えている。
教会派は、沈黙している。
今のところ、公式な反応はない。
しかし、内部では動揺しているようだ。
「禁忌を排除すべき」という主張が、弱くなっている。
国を救った者を排除するのは、世論が許さないからだ。
これは、大きな進歩だ。
しかし、油断はするな。
教会派は、まだ諦めていない可能性がある。
引き続き、警戒を続けてくれ。
アルベルトより』
ルーカスは、手紙を読んで少し安心した。
世論が、変わり始めている。
それは、良い兆候だった。
* * *
「殿下、良かったですね」
セラが、隣で微笑んだ。
「はい。でも、まだ安心はできません」
「分かっています。でも、一歩前進です」
「そうですね」
「殿下の努力が、実を結び始めています」
「……」
ルーカスは、セラの手を握った。
「セラのおかげでもあります」
「え……」
「セラがいなければ、僕は頑張れませんでした」
「殿下……」
「ありがとう、セラ」
「私こそ、ありがとうございます」
二人は、微笑み合った。
* * *
翌日、学院長室に呼ばれた。
「殿下、お見事でした」
学院長が、穏やかに言った。
「ありがとうございます」
「殿下の活躍は、学院の誇りです」
「そう言っていただけると、嬉しいです」
「これからも、頑張ってください」
「はい」
ルーカスは、頷いた。
「そして、一つお知らせがあります」
「何でしょうか」
「王宮から、正式な表彰が行われることになりました」
「表彰……」
「殿下の功績を称えるために、勲章が授与されます」
「勲章……」
ルーカスは、驚いた。
* * *
数日後、王宮で表彰式が行われた。
ルーカスは、勲章を授与された。
「第三王子ルーカス・フォン・ヴェルスタインに、国境防衛の功績を称え、騎士十字勲章を授与する」
フリードリヒ国王が、自ら勲章を授けた。
「ありがとうございます、父上」
「ルーカス、よくやった」
フリードリヒが、小声で言った。
「お前の勇気を、誇りに思う」
「父上……」
「これからも、頑張れ」
「はい」
ルーカスは、深く頭を下げた。
* * *
表彰式の後、多くの貴族たちがルーカスに挨拶に来た。
「殿下、おめでとうございます」
「素晴らしい活躍でした」
「殿下は、国の誇りです」
称賛の言葉が、次々と寄せられた。
その中には、以前は教会派寄りだった貴族もいた。
「殿下、失礼なことを言っていたかもしれません」
「いいえ」
「殿下は、真の英雄です。私は、殿下を支持します」
「……ありがとうございます」
ルーカスは、驚きながらも感謝した。
世論が、本当に変わっている。
それを、肌で感じた。
* * *
表彰式の夜、ルーカスは庭園を歩いていた。
セラと一緒だった。
「殿下、おめでとうございます」
「ありがとう、セラ」
「勲章、似合っています」
「そうですか……」
「はい。とても、格好いいです」
セラが、微笑んだ。
「でも、僕は変わりません」
「分かっています」
「勲章をもらっても、僕は僕です」
「はい。殿下は、いつも殿下です」
「……」
二人は、手を繋いで歩いた。
「殿下、これからどうなるのでしょうか」
「分かりません。でも、良い方向に向かっていると思います」
「そうですね」
「セラと一緒なら、どんな未来も乗り越えられます」
「殿下……」
「これからも、よろしくお願いします」
「はい。私こそ」
二人は、星空の下で微笑み合った。
* * *
世論は、確実に変わり始めていた。
「禁忌」から「英雄」へ。
ルーカスの評価が、大きく変わった。
しかし、教会派はまだ沈黙を保っている。
彼らが、次に何をするか分からなかった。
戦いは、まだ終わっていない。
しかし、希望の光は、確実に見え始めていた。
「僕は、人間として認められたい……」
その願いが、叶う日が近づいている。
ルーカスは、そう感じていた。




