第83話:激闘、ルーカスの真の力
大型の魔物が、ルーカスに迫ってきた。
巨大な爪が、空気を切り裂く。
「速い……!」
ルーカスは、ギリギリで回避した。
しかし、相手も素早い。
すぐに、次の攻撃が来る。
「くっ……!」
連続して攻撃を避ける。
しかし、攻撃に転じる隙がない。
「このままでは、ジリ貧だ……」
ルーカスは、覚悟を決めた。
力を、さらに解放する。
* * *
ルーカスの体が、変化し始めた。
目が、僅かに光を帯びる。
動きが、さらに速くなる。
「戦闘モード……」
前世の記憶が、蘇る。
戦闘用ロボットとして、戦っていた頃の記憶。
しかし、今は違う。
機械ではなく、人間として戦っている。
「僕は、人間だ……!」
ルーカスは、魔物に向かっていった。
* * *
二つの影が、激突した。
ルーカスの剣が、魔物の爪を弾く。
「おおおおっ!」
渾身の一撃を、魔物に叩き込む。
魔物が、よろめいた。
「今だ……!」
ルーカスは、追撃を仕掛けた。
連続して斬りつける。
魔物が、悲鳴を上げた。
しかし、まだ倒れない。
「しぶとい……!」
魔物が、反撃してきた。
巨大な爪が、ルーカスを捉えた。
「がっ……!」
吹き飛ばされた。
体中に、衝撃が走る。
* * *
「殿下!」
遠くで、セラの声が聞こえた。
「大丈夫……まだ戦える……」
ルーカスは、立ち上がった。
体の損傷は、自動的に修復されていく。
「僕は、負けない……」
再び、魔物に向かっていく。
魔物も、ルーカスに向かってくる。
二つの影が、再び交差した。
* * *
激闘は、続いた。
ルーカスと魔物は、何度も衝突した。
お互いに、傷を負いながら。
しかし、どちらも倒れない。
「くっ……こいつ、なかなか倒れない……」
ルーカスは、息を切らしていた。
いくら「自己修復機能」があっても、体力には限界がある。
「でも、諦めない……」
ルーカスの目に、強い意志があった。
前世では、感情がなかった。
ただ、命令に従って戦うだけだった。
しかし、今は違う。
守りたいものがある。
大切な人がいる。
「セラを……みんなを……守るために……!」
ルーカスは、最後の力を振り絞った。
* * *
ルーカスの体が、さらに変化した。
金属のような光沢が、一瞬だけ現れた。
「これは……」
前世の、戦闘形態。
その片鱗が、表面に出てきていた。
しかし、今は気にしている場合ではない。
目の前の敵を、倒さなければ。
「終わりだ……!」
ルーカスは、全速力で魔物に向かった。
その速さは、人間の域を完全に超えていた。
魔物が、反応する前に。
ルーカスの剣が、魔物の首を捉えた。
「はあああああっ!」
渾身の一撃。
魔物の首が、飛んだ。
* * *
大型の魔物が、崩れ落ちた。
地面が、揺れるほどの衝撃だった。
「やった……」
ルーカスは、膝をついた。
力を使い果たしていた。
周囲を見ると、他の魔物たちも騎士団によって倒されていた。
リーダーを失った魔物たちは、統率を失い、散り散りになっていた。
「勝った……」
ルーカスは、安堵のため息をついた。
* * *
「殿下!」
セラが、駆け寄ってきた。
「殿下、大丈夫ですか!」
「大丈夫……少し疲れただけ……」
「殿下……」
セラが、ルーカスを抱きしめた。
「心配しました……」
「すみません……」
「でも、殿下がいなければ、砦は落ちていました」
「そうですか……」
「殿下は、英雄です」
セラの言葉に、ルーカスは微笑んだ。
* * *
砦の兵士たちが、ルーカスの周りに集まってきた。
「殿下、ありがとうございます!」
「殿下のおかげで、助かりました!」
「殿下は、我々の恩人です!」
兵士たちが、口々に感謝の言葉を述べた。
「いいえ……僕は、やるべきことをしただけです」
「殿下……」
「皆さんも、頑張りました。一緒に戦えて、光栄でした」
ルーカスの言葉に、兵士たちは感動した。
「殿下は、本当に素晴らしい方だ……」
「『禁忌』なんて、とんでもない……」
「殿下は、英雄だ……」
そんな声が、あちこちから聞こえてきた。
* * *
クラウスとエリアスも、駆け寄ってきた。
「ルーカス、すごかったな」
「お前の力、初めて見た。驚いたぞ」
「ありがとう」
「これで、教会派も黙るだろう」
「そうだといいですが……」
ルーカスは、少し不安そうだった。
「何を心配している」
「僕の力を見て、さらに恐れるかもしれません」
「……」
「『禁忌』として、排除すべきだと」
「そんなことにはならない」
エリアスが、きっぱりと言った。
「お前は、国を救った。それが、事実だ」
「エリアス殿……」
「事実を無視して、排除しようとする者がいるなら、俺が止める」
「……ありがとう」
ルーカスは、仲間たちの支持に感謝した。
* * *
二日後、王都からの援軍が到着した。
しかし、もう戦いは終わっていた。
ルーカスたちの活躍で、砦は守られた。
魔物の大群は、撃退された。
「殿下、お見事でした」
援軍の指揮官が、ルーカスに敬礼した。
「いいえ。皆さんのおかげです」
「殿下の功績は、王都にも報告します」
「……よろしくお願いします」
ルーカスは、複雑な気持ちだった。
功績が報告される。
それは、自分の力が公になることを意味していた。
教会派が、どう反応するか。
それが、心配だった。
* * *
しかし、今は考えても仕方がない。
やるべきことは、やった。
あとは、結果を待つだけだった。
「セラ、帰りましょう」
「はい、殿下」
二人は、手を繋いで歩き出した。
砦の兵士たちが、見送ってくれた。
感謝と尊敬の眼差しだった。
ルーカスは、少しだけ希望を感じた。
自分の力が、認められたかもしれない。
「禁忌」ではなく、英雄として。
それは、大きな一歩だった。




