第82話:力を示す機会、国境の危機
ルーカスが卒業後のことを考えていた頃、国に危機が訪れた。
国境で、魔物の大群が発生したのだ。
「殿下、緊急の知らせです」
レオナルドが、慌てた様子で駆け寄ってきた。
「何があったのですか」
「国境の砦が、魔物の大群に襲われているそうです」
「魔物の大群……」
「規模は、前例のないほど大きいとのことです」
ルーカスは、顔を曇らせた。
* * *
その日の夜、王宮から緊急の手紙が届いた。
『ルーカスへ
国境の状況は、深刻だ。
魔物の大群が、砦を攻撃している。
騎士団を派遣したが、数が足りない。
このままでは、砦が落ちる可能性がある。
父上は、お前に協力を求めている。
お前の力が、必要だ。
アルベルトより』
ルーカスは、手紙を読んで考え込んだ。
自分の力が、必要とされている。
これは、力を示す機会かもしれない。
* * *
「殿下、どうなさいますか」
セラが、声をかけてきた。
「行きます」
「殿下……」
「僕の力が必要なら、行かなければなりません」
「危険です」
「分かっています。でも、これは……」
「チャンスでもある、ですか」
「……はい」
セラは、しばらく黙っていた。
そして、顔を上げた。
「私も、一緒に行きます」
「セラ……」
「殿下を、一人で行かせるわけにはいきません」
「でも、危険です」
「危険だからこそ、殿下の傍にいます」
セラの目は、決意に満ちていた。
「……ありがとう、セラ」
「共に、行きましょう」
二人は、頷き合った。
* * *
翌日、ルーカスとセラは学院を出発した。
国境の砦に向かうためだった。
クラウスとエリアスも、同行を申し出た。
「ルーカス、俺も行くぞ」
「クラウス……」
「お前だけ危険な目に遭わせるわけにはいかない」
「ありがとう」
「俺も行く」
エリアスが、言った。
「エリアス殿……」
「お前に借りを返したい。それに、魔物退治なら、俺の剣も役に立つはずだ」
「……ありがとう」
ルーカスは、仲間たちの申し出に感謝した。
* * *
数日後、国境の砦に到着した。
状況は、予想以上に深刻だった。
砦の周囲には、無数の魔物が蠢いていた。
数は、数千体以上。
騎士団だけでは、とても対処できない規模だった。
「これは……」
セラが、絶句した。
「予想以上だな」
クラウスが、眉をひそめた。
「しかし、やるしかありません」
ルーカスは、砦に入った。
* * *
砦の司令官が、出迎えてくれた。
「殿下、よくお越しくださいました」
「状況を教えてください」
「はい。魔物の大群は、三日前から攻撃を続けています」
「三日……」
「騎士団は、必死に防いでいますが、限界が近いです」
「援軍は」
「王都から、追加の騎士団が向かっています。しかし、到着まで二日かかります」
「二日……」
ルーカスは、考え込んだ。
二日間、砦を守り続けなければならない。
それは、容易なことではなかった。
* * *
「殿下、私に考えがあります」
セラが、声をかけてきた。
「何ですか」
「魔物の大群を、分断できませんか」
「分断……」
「数が多いなら、分けて対処すればいい」
「なるほど……」
セラの提案は、理にかなっていた。
「しかし、どうやって分断しますか」
「殿下の力を使えば……」
「……」
ルーカスは、自分の力を考えた。
感知能力と、超人的な身体能力。
それを使えば、魔物の群れを引きつけることができるかもしれない。
「やってみます」
「殿下……」
「僕が魔物を引きつけて、分断します。その隙に、騎士団が各個撃破する」
「危険です」
「分かっています。でも、これしか方法がありません」
ルーカスの目は、真剣だった。
* * *
作戦が、実行に移された。
ルーカスは、砦の外に出た。
「殿下、気をつけて」
セラが、心配そうに見送った。
「大丈夫です。必ず、戻ります」
「約束してください」
「約束します」
ルーカスは、微笑んで頷いた。
そして、魔物の群れに向かって走り出した。
* * *
魔物たちが、ルーカスに気づいた。
一斉に、こちらに向かってくる。
「来い……!」
ルーカスは、力を解放した。
人間離れした速度で、魔物の群れの中を駆け抜ける。
魔物たちが、ルーカスを追いかけてくる。
その動きを利用して、群れを分断していく。
「よし……うまくいっている」
魔物の群れが、いくつかの小集団に分かれ始めた。
騎士団が、それぞれの集団に攻撃を仕掛ける。
作戦は、成功し始めていた。
* * *
しかし、予想外のことが起きた。
魔物の中に、特別に大きな個体がいた。
群れのリーダーのような存在だった。
「あれは……」
その魔物が、ルーカスに向かってきた。
他の魔物とは、比べ物にならない速さだった。
「くっ……!」
ルーカスは、攻撃を避けた。
しかし、かすった。
腕に、傷ができた。
「大丈夫……まだ戦える」
傷は、すぐに治り始めた。
「自己修復機能」が、働いている。
しかし、今は戦闘に集中しなければならない。
「……行くぞ」
ルーカスは、大型の魔物に向かっていった。
決着を、つけるために。




