第81話:最終章開幕、卒業までの道
三年生の後半が始まった。
卒業まで、あと一年半。
ルーカスは、学院での日々を大切に過ごしていた。
セラと一緒に、勉強し、訓練し、笑い合う。
かけがえのない時間だった。
「殿下、卒業後のこと、考えていますか」
セラが、ある日、聞いてきた。
「少しは。セラは」
「私は、殿下の傍にいます。それだけは、決まっています」
「ありがとう」
「殿下は、どうなさるのですか」
「……まだ、はっきりとは決めていません」
ルーカスは、正直に答えた。
* * *
卒業後の進路。
それは、ルーカスにとって重要な問題だった。
王族として、どのような道を歩むのか。
教会との関係は、どうなるのか。
まだ、答えは見つかっていなかった。
「兄上たちに、相談してみようかな……」
小さく呟いた。
* * *
週末、ルーカスは王宮を訪れた。
アルベルトに、相談するためだった。
「兄上、お時間をいただけますか」
「ああ、もちろんだ。何の用だ」
「卒業後のことについて、相談したいのです」
「卒業後か……」
アルベルトが、考え込んだ。
「お前は、どうしたいのだ」
「……まだ、はっきりとは」
「迷っているのか」
「はい」
「何に迷っている」
「自分の役割が、分からないのです」
ルーカスは、正直に言った。
* * *
「僕は、王族です。しかし、『禁忌』でもあります」
「……」
「王族としての義務を果たすべきか、静かに暮らすべきか。分かりません」
「なるほど」
アルベルトが、頷いた。
「ルーカス、お前に一つ聞きたい」
「何でしょうか」
「お前は、何がしたいのだ」
「何がしたい……」
「義務や役割ではなく、お前自身の望みだ」
アルベルトの目は、真剣だった。
ルーカスは、少し考えた。
自分の望み。
それは、何だろう。
「……僕は、人間として認められたい」
「人間として……」
「『禁忌』ではなく、普通の人間として。みんなと同じように」
「……」
「そして、セラと一緒に、幸せに暮らしたい」
ルーカスの言葉は、素直だった。
* * *
アルベルトは、微笑んだ。
「良い答えだ」
「兄上……」
「お前の望みは、正当なものだ。恥じることはない」
「でも、それを叶えるには……」
「教会の問題を、解決しなければならない」
「はい」
「簡単ではないだろう。しかし、不可能ではない」
アルベルトが、ルーカスの肩を叩いた。
「俺たちが、協力する。お前の望みを、叶えるために」
「兄上……」
「お前は、一人ではない。忘れるな」
「……ありがとうございます」
ルーカスの目に、涙が浮かんだ。
* * *
「具体的に、どうすればいいでしょうか」
「まず、教会との関係を、整理する必要がある」
「整理……」
「大司教との会談は、良い始まりだった。しかし、まだ不十分だ」
「教会内部の過激派が、問題ですね」
「ああ。彼らを、どう抑えるかが鍵だ」
アルベルトが、考え込んだ。
「一つ、提案がある」
「何でしょうか」
「お前の『力』を、公に示すことだ」
「力を……」
「『禁忌』としてではなく、国に貢献する力として」
「……」
「お前の能力が、国の役に立つことを証明する。そうすれば、世論も変わるかもしれない」
アルベルトの提案に、ルーカスは考え込んだ。
* * *
力を公に示す。
それは、リスクがあった。
教会派が、さらに反発するかもしれない。
しかし、このままでは何も変わらない。
行動を起こす必要があった。
「兄上、考えてみます」
「ああ。急ぐ必要はない。じっくり考えろ」
「はい」
「そして、セラフィーナ嬢とも、相談しろ」
「もちろんです」
「彼女は、お前の一番の理解者だ」
「はい」
ルーカスは、頷いた。
* * *
学院に戻り、セラに相談した。
「殿下、力を公に示す……ですか」
「はい。兄上の提案です」
「リスクがありますね」
「分かっています」
「でも、何もしなければ、何も変わりません」
「そうですね」
セラが、考え込んだ。
「殿下、私は、殿下の決断を支持します」
「セラ……」
「殿下が決めたことなら、私は従います」
「ありがとう」
「ただし、一つだけ」
「何ですか」
「無茶は、しないでください」
セラの目は、真剣だった。
「殿下が傷つくのは、私は嫌です」
「……分かりました」
「約束してください」
「約束します」
二人は、手を握り合った。
* * *
最終章が、始まった。
ルーカスは、自分の未来を切り開くために、動き始めようとしていた。
教会との問題。
人間として認められること。
セラとの幸せな未来。
それらを全て叶えるために、戦う決意を固めた。
「僕は、諦めない……」
夜空を見上げながら、そう呟いた。
星々が、静かに輝いていた。
それは、希望の光のようだった。
最終章「選択と決断」。
ルーカスの戦いが、本格的に始まる。




