第79話:新学期、三年生への進級
冬休みが終わり、新学期が始まった。
ルーカスたちは、三年生に進級した。
「殿下、三年生になりましたね」
セラが、嬉しそうに言った。
「はい。あと二年で、卒業です」
「早いですね」
「そうですね。入学したのが、昨日のことのようです」
「私も、そう思います」
二人は、微笑み合った。
* * *
三年生になると、授業の内容も変わった。
より専門的な内容が、増えていった。
「三年生からは、専門課程に入ります」
担任の先生が、説明した。
「それぞれの進路に合わせて、履修科目を選んでください」
「はい」
ルーカスは、政治学と外交学を中心に選んだ。
将来、王族として役立つ知識だった。
セラは、騎士学と戦術学を選んだ。
騎士として、ルーカスを守るための知識だった。
* * *
「殿下、履修科目、決まりましたか」
「はい。政治学と外交学です」
「さすが、殿下ですね」
「セラは」
「私は、騎士学と戦術学です」
「護衛として、役立ちますね」
「はい。殿下を守るために、必要な知識です」
セラが、真剣な表情で言った。
「ありがとう、セラ。僕のために」
「いいえ。私の意志で、選んだことです」
「でも、ありがとう」
「……はい」
セラが、照れたように微笑んだ。
* * *
新学期が始まって、数週間が経った。
学院生活は、順調だった。
しかし、不穏な噂が聞こえてきた。
「殿下、お聞きになりましたか」
レオナルドが、声をかけてきた。
「何のことですか」
「教会が、新しい動きを見せているそうです」
「新しい動き……」
「詳しくは分かりませんが、殿下に関係があるかもしれません」
レオナルドの顔は、真剣だった。
「情報を集めてみます」
「お願いします」
ルーカスは、少し不安になった。
* * *
その夜、アルベルトから手紙が届いた。
『ルーカスへ
教会の動きについて、報告する。
大司教は、殿下との会談後、暗殺を止めている。
しかし、教会内部の若い神官たちが、独自に動き始めているようだ。
彼らは、大司教の方針に不満を持っている。
「禁忌は排除すべきだ」という声が、根強い。
現時点では、具体的な計画は確認されていない。
しかし、警戒は必要だ。
何かあったら、すぐに連絡してほしい。
アルベルトより』
ルーカスは、手紙を読んで考え込んだ。
教会内部の若い神官たち。
彼らが、独自に動き始めている。
「大司教は抑えているけれど、下の者たちが……」
小さく呟いた。
* * *
「殿下、どうなさいましたか」
セラが、ルーカスの表情を見て声をかけた。
「兄上から、手紙です」
「何かあったのですか」
「教会内部の若い神官たちが、独自に動き始めているそうです」
「独自に……」
「大司教の方針に不満を持っている者たちが、いるようです」
セラの顔が、険しくなった。
「気をつけなければなりませんね」
「はい。でも、今は具体的な計画は確認されていないそうです」
「油断は禁物です」
「分かっています」
二人は、顔を見合わせた。
「殿下、私がお守りします」
「ありがとう、セラ。でも、セラも気をつけてください」
「はい」
「お互いを、守り合いましょう」
「はい」
二人は、頷き合った。
* * *
数日後、学院に新しい教師が赴任してきた。
宗教学の担当だった。
「初めまして。今日から、宗教学を担当します」
若い男性だった。
清潔感のある顔立ちだが、どこか鋭い目をしていた。
「名前は、グレゴリウス・マルクスです。よろしくお願いします」
生徒たちが、拍手をした。
しかし、ルーカスは少し違和感を覚えた。
「あの先生……」
何か、引っかかるものがあった。
* * *
授業が終わった後、セラが声をかけてきた。
「殿下、新しい先生、どう思いますか」
「少し、違和感があります」
「私も、です」
「何か、引っかかるものがあります」
「教会から派遣された先生ですよね」
「はい」
「もしかすると、殿下を監視するために……」
「かもしれません」
二人は、新しい教師について、警戒することにした。
* * *
その後、グレゴリウス先生は、普通に授業を行っていた。
特に、ルーカスを狙っている様子はなかった。
しかし、時々、ルーカスに視線を送っているのを感じた。
「あの先生、僕を見ている……」
小さく呟いた。
監視されている。
そんな感覚があった。
「気のせいかもしれませんが……」
油断は、できなかった。
* * *
「殿下、グレゴリウス先生について、調べました」
レオナルドが、報告してきた。
「何か分かりましたか」
「はい。彼は、教会の中でも若手の有望株だそうです」
「有望株……」
「そして、『禁忌排除』を強く主張している派閥に属しています」
「やはり……」
「殿下を監視するために、派遣された可能性があります」
レオナルドの報告に、ルーカスは頷いた。
「警戒を強めます」
「お願いします」
「レオナルド、ありがとう」
「いいえ。殿下のためなら」
レオナルドが、微笑んだ。
* * *
新学期が始まり、新しい敵が現れた。
グレゴリウス先生。
彼が何を企んでいるのか、まだ分からない。
しかし、警戒は必要だった。
「殿下、何があっても、私がお守りします」
「ありがとう、セラ」
「一人で抱え込まないでください」
「分かっています」
「私たちは、一緒です」
「はい」
二人は、手を握り合った。
三年生の新学期。
新しい挑戦が、始まっていた。
敵は、まだ諦めていない。
しかし、ルーカスには味方がいる。
その味方たちと一緒に、困難を乗り越える。
人間として生きるために。
ルーカスは、改めてそう決意した。




