第66話:セラとの再会、夏休み明け
夏休みが終わった。
ルーカスは、学院に戻ることになった。
「ルーカス、気をつけてな」
ヴィクトルが、見送りに来ていた。
「はい、兄上」
「教会の動きには、常に注意しろ。何かあったら、すぐに連絡しろ」
「分かりました」
「セラフィーナによろしく伝えておけ」
「はい」
ルーカスは、馬車に乗り込んだ。
王宮が、少しずつ遠ざかっていく。
久しぶりの学院。
そして、久しぶりのセラ。
胸が、高鳴っていた。
* * *
学院に到着した。
門をくぐると、懐かしい景色が広がっていた。
「殿下!」
声が聞こえて、振り返った。
セラが、走ってきていた。
「セラ!」
二人は、門の前で再会した。
「お帰りなさい、殿下」
「ただいま、セラ」
二人は、お互いを見つめた。
久しぶりの再会だった。
数週間しか離れていなかったのに、とても長く感じられた。
「会いたかったです」
「僕も、会いたかった」
二人は、自然と手を繋いだ。
周囲の視線など、気にならなかった。
* * *
寮に荷物を置いた後、二人は庭園を散歩した。
「殿下、王宮ではどうでしたか」
「色々なことがありました」
「手紙で、少し聞いていましたが……」
「はい。教会派と、直接対面しました」
「教会派と……」
セラの顔が、少し青くなった。
「大丈夫でしたか」
「はい。断固として断りました」
「断った……?」
「教会の道具になれと言われたので、断りました」
「殿下……」
セラの目に、心配の色があった。
しかし、同時に、誇りの色もあった。
「殿下らしいです」
「そうですか」
「はい。殿下は、自分を曲げない。それが、殿下の素晴らしいところです」
「セラ……」
「私は、殿下を誇りに思います」
セラの言葉に、ルーカスの胸が温かくなった。
* * *
「セラは、夏休みはどうでしたか」
「ヴェルディ領で、のんびりしていました」
「のんびり……」
「はい。領地の人たちと、剣の稽古をしたり、畑仕事を手伝ったり」
「畑仕事……」
「はい。ヴェルディ領は、農業が盛んですから」
セラが、微笑んだ。
「殿下のことを、毎日想っていました」
「僕も、セラのことを毎日想っていました」
「……」
二人は、顔を見合わせた。
頬が、少し赤くなった。
「セラ」
「はい」
「父上が、いつか僕たちの婚約を認めると言ってくれました」
「え……」
セラの目が、大きくなった。
「婚約を……認める……」
「はい。僕が望むなら、正式に許可すると」
「殿下……」
「まだ先の話ですが、嬉しかったです」
「私も……嬉しいです」
セラの目に、涙が浮かんだ。
「殿下と、正式に婚約できる日が来るなんて……」
「来ますよ。必ず」
「はい……」
二人は、手を握り合った。
* * *
夕食は、食堂で取った。
他の生徒たちも、夏休みから戻ってきていた。
「殿下、お帰りなさい」
「レオナルド」
「夏休みは、どうでしたか」
「色々あったよ。セラ、話してもいいですか」
「はい」
ルーカスは、レオナルドに王宮での出来事を話した。
教会派との対面のことも、簡潔に伝えた。
「教会派が、暗殺を検討している……」
「はい」
「大変なことになっていますね」
「でも、味方もいます。兄たちや、モンテス公爵が」
「モンテス公爵……貴族派の」
「はい。彼は、僕を支持してくれています」
「なるほど」
レオナルドが、考え込んだ。
「殿下、学院内でも、味方を増やすべきですね」
「学院内でも……」
「はい。殿下を支持する生徒は、多いです。彼らを組織化すれば、大きな力になります」
「組織化……」
「もちろん、派閥争いのようなことは避けるべきです。しかし、殿下を守るための仲間は、必要です」
「……そうですね」
ルーカスは、頷いた。
レオナルドの言う通りだ。
味方は、多い方がいい。
* * *
その夜、ルーカスは自分の部屋にいた。
セラが、訪ねてきていた。
「殿下、王宮での話、もっと詳しく聞かせてください」
「はい」
ルーカスは、夏休みの出来事を、詳しく話した。
アルベルトとの対話、ヴィクトルとの訓練、父王の言葉。
そして、教会派との対面。
「殿下、本当に大変でしたね」
「でも、良いこともありました」
「良いこと……」
「家族が、僕を認めてくれました。守ると言ってくれました」
「それは……良かったですね」
「はい。とても嬉しかったです」
ルーカスが、微笑んだ。
「セラも、僕の家族のような存在です」
「殿下……」
「いつか、本当の家族になりたいです」
「……私も、です」
セラの顔が、真っ赤になった。
「殿下、その……」
「何ですか」
「私、殿下の……お嫁さんになりたいです」
「……」
ルーカスの心臓が、大きく跳ねた。
「僕も、セラにお嫁さんになってほしいです」
「殿下……」
「いつか、必ず」
「はい。いつか、必ず」
二人は、お互いの手を強く握った。
未来への約束だった。
* * *
翌日から、新学期が始まった。
二年生としての、新しい生活だ。
授業は、より難しくなっていた。
しかし、ルーカスは前向きだった。
セラと一緒に、頑張ろうと思っていた。
「殿下、今日の授業、難しかったですね」
「はい。でも、セラと一緒なら、大丈夫です」
「殿下……」
「一緒に勉強しましょう」
「はい」
二人は、図書館で勉強を始めた。
周囲の視線は、相変わらずあった。
しかし、敵意ではなかった。
むしろ、微笑ましい視線が多かった。
「殿下とヴェルディ殿、お似合いですね」
「うらやましいですね」
そんな声が、聞こえてきた。
ルーカスとセラは、顔を見合わせて、微笑んだ。
新学期が始まった。
新しい日々が、始まった。
困難は、まだ続くだろう。
しかし、二人で乗り越えていく。
その決意を胸に、ルーカスは前を向いた。




