第58話:学院内での立場向上(支持者増加)
ルーカスとセラの関係が公になってから、数週間が経った。
最初は色々と言われていたが、次第に落ち着いてきた。
むしろ、二人を応援する声も増えてきた。
「殿下、おはようございます」
「おはよう」
「今日も、ヴェルディ殿と一緒ですね」
「はい。毎日一緒です」
周囲の生徒たちは、微笑ましそうに見ていた。
最初の敵意は、ほとんど消えていた。
* * *
ある日の昼休み、何人かの生徒がルーカスに声をかけてきた。
「殿下、少しお話があります」
「何でしょうか」
「私たち、殿下のことを応援しています」
「応援……」
「はい。殿下は、身分に関係なく、人を大切にされていますよね」
「そうですか……」
「ヴェルディ殿を選ばれたことも、素晴らしいと思います」
生徒たちの目は、真剣だった。
「実は、私たちの中にも、身分の低い家の者がいます」
「……」
「殿下のように、身分で人を判断しない方がいることが、嬉しいのです」
「そうですか……」
「これからも、殿下を応援しています」
「ありがとうございます」
ルーカスは、少し戸惑いながらも、感謝を伝えた。
* * *
セラにも、変化があった。
「ヴェルディさん、今日の訓練、すごかったですね」
「ありがとうございます」
「殿下の恋人にふさわしい実力ですね」
「そんな……」
騎士科の女子生徒たちが、セラに声をかけてきた。
以前は、少し距離を置いていた生徒たちだった。
「ヴェルディさん、今度、一緒に訓練しませんか」
「私でいいのですか」
「もちろんです。ヴェルディさんから、学びたいことがたくさんあります」
「……ありがとうございます」
セラの顔に、笑顔が浮かんだ。
* * *
夕方、ルーカスとセラは、庭園のベンチで話していた。
「最近、周囲の態度が変わりましたね」
「はい。私も、感じています」
「応援してくれる人が、増えたようです」
「殿下のおかげです」
「僕のおかげ……?」
「はい。殿下が、堂々と私との関係を公言してくださったから」
「それは、当然のことをしただけです」
「でも、普通の王族は、そうしません」
「そうですか……」
ルーカスは、首を傾げた。
「殿下、殿下は本当に変わっていますね」
「変わっている……」
「良い意味で、です。普通の人が気にすることを、気にしません」
「気にする必要がないからです」
「それが、殿下の魅力です」
セラが、微笑んだ。
ルーカスも、微笑んだ。
* * *
数日後、レオナルドが声をかけてきた。
「殿下、聞きましたか」
「何をですか」
「殿下の支持者が、かなり増えているそうです」
「支持者……」
「はい。学院内で、殿下を支持する生徒たちが、集まっているとか」
「集まっている……」
「殿下の人柄を慕う者が、多いようです」
レオナルドの言葉に、ルーカスは少し驚いた。
「僕は、特に何もしていませんが」
「それが、殿下の魅力です。気取らず、普通に接してくれる。それが、生徒たちに好かれている理由です」
「そうですか……」
「殿下、これは良いことです」
「なぜですか」
「教会が殿下を狙っているなら、味方は多い方がいい」
「……」
「支持者が増えれば、教会も手を出しにくくなります」
レオナルドの言葉には、戦略的な意味があった。
ルーカスは、それを理解した。
「なるほど。そういう見方もありますね」
「はい。殿下は、もっと積極的に味方を増やすべきです」
「どうすれば」
「今まで通りでいいと思います。殿下の自然体が、一番の武器です」
「分かりました」
ルーカスは、頷いた。
* * *
その夜、マーガレット先生がルーカスを呼んだ。
「殿下、少しお話があります」
「何でしょうか」
「学院内での殿下の評判が、上がっています」
「聞きました」
「それは、とても良いことです」
「はい」
「しかし、気をつけてください」
「気をつける……」
「評判が上がれば、目立ちます。目立てば、教会の目も厳しくなります」
「……」
「エリアス監察官は、殿下の弱点を探しています。評判が上がることを、快く思わないでしょう」
「なるほど……」
マーガレット先生の言葉は、的確だった。
「殿下、支持者が増えることは良いことです。しかし、それを見せびらかさないでください」
「見せびらかす……」
「はい。静かに、着実に味方を増やすこと。それが、殿下を守る最善の方法です」
「分かりました」
ルーカスは、真剣に頷いた。
* * *
数日後、クラウスからの手紙が届いた。
『ルーカス殿下
お元気ですか。
エルザリア王国は、テロ事件の後、落ち着きを取り戻しつつあります。
殿下のご活躍は、こちらでも話題になっています。
王女殿下も、殿下のことをよく気にされています。
いつか、また会えることを楽しみにしています。
友人として、殿下を応援しています。
クラウス・フォン・シュタイナー』
ルーカスは、手紙を読んで微笑んだ。
クラウスとの友情は、国境を越えても続いている。
それが、嬉しかった。
「殿下、お手紙ですか」
セラが、声をかけた。
「はい。クラウス殿からです」
「エルザリア王国の……」
「はい。元気にしているようです」
「良かったですね」
「はい。友人がいることは、心強いです」
ルーカスが、微笑んだ。
セラも、微笑んだ。
* * *
週末、ルーカスはレオナルドと訓練をしていた。
「殿下、腕が上がりましたね」
「そうですか」
「はい。以前より、動きが自然です」
「力を抑えることに、慣れてきたのかもしれません」
「なるほど」
レオナルドが、剣を構え直した。
「もう一本、行きますか」
「はい」
二人は、再び打ち合った。
訓練の後、休憩しながら話をした。
「殿下、学院内での評判、本当に上がっていますね」
「そうみたいですね」
「俺の周りでも、殿下を褒める声が多いです」
「ありがたいことです」
「殿下は、本当に変わりませんね」
「変わらない……」
「はい。評判が上がっても、偉ぶらない。それが、殿下の良いところです」
「偉ぶる必要がないからです」
「それが、殿下らしいですね」
レオナルドが、笑った。
* * *
その夜、ルーカスは考えていた。
学院内での立場が、向上している。
支持者が、増えている。
それは、良いことだ。
しかし、マーガレット先生の言う通り、目立つことは危険でもある。
エリアスは、自分を狙っている。
評判が上がれば、彼の動きも変わるかもしれない。
「気をつけないと……」
小さく呟いた。
でも、味方が増えることは、心強い。
セラがいる。
レオナルドがいる。
マーガレット先生がいる。
学院長がいる。
そして、多くの生徒たちが、自分を支持してくれている。
「一人じゃない……」
その言葉が、胸に染みた。
人間として生きる夢。
それを叶えるために、多くの人が力を貸してくれている。
その期待に、応えたい。
「頑張ろう……」
ルーカスは、決意を新たにした。
明日も、新しい一日が始まる。
一歩ずつ、前に進んでいこう。
セラと一緒に。
味方たちと一緒に。
その想いを胸に、眠りについた。




