第41話:エルザリア王国到着、異文化体験
第3部「遠征・外交実習編」
エルザリア王国の首都、エルザレムに到着した。
馬車が、大きな門をくぐる。
目の前に、壮麗な街並みが広がっていた。
「すごい……」
ルーカスは、窓から身を乗り出した。
白い石で作られた建物が、並んでいる。
道は広く、清潔だった。
人々の服装も、自国とは少し違っていた。
「これが、エルザリア王国……」
「美しい街ですね」
セラも、目を輝かせていた。
二人とも、初めて見る景色に感動していた。
「殿下、エルザリア王国は、芸術と学問の国として知られています」
引率の教官が、説明してくれた。
「芸術と学問……」
「はい。特に、魔法学の研究が盛んです。我が国よりも、魔法技術が進んでいると言われています」
「そうなのですか」
「はい。今回の実習では、彼らの文化や技術を学ぶことが目的の一つです」
「楽しみです」
ルーカスが、微笑んだ。
新しいことを学べる。
それが、とても嬉しかった。
* * *
宿泊先は、王都の中心にある貴賓館だった。
立派な建物で、内装も豪華だった。
一人一部屋が割り当てられた。
「殿下、こちらがお部屋です」
「ありがとうございます」
ルーカスは、部屋に入った。
広い部屋だった。
大きなベッド、机、椅子。
窓からは、街の景色が見えた。
「いい部屋ですね」
セラが、隣の部屋から顔を出した。
彼女の部屋も、同じくらい広いようだった。
「セラの部屋も、良さそうですね」
「はい。こんな豪華な部屋に泊まるのは、初めてです」
「僕も、初めてです」
「殿下は、王宮にいらっしゃるのでは」
「王宮の自分の部屋は、もっと質素です」
「そうなのですか」
「はい。第三王子ですから」
ルーカスが、少し苦笑した。
第三王子は、王位継承順位が低い。
そのため、扱いも控えめだった。
「でも、ここは良い部屋ですね。エルザリア王国に感謝です」
「そうですね」
二人は、微笑み合った。
* * *
夕方、歓迎の晩餐会が開かれた。
エルザリア王国の貴族たちが、出席していた。
ルーカスたち外交実習の参加者も、招かれていた。
「緊張しますね」
セラが、小声で言った。
ルーカスも、少し緊張していた。
知らない国で、知らない人々に囲まれている。
それは、慣れないことだった。
「大丈夫です。セラがいますから」
「殿下……」
「一緒に、頑張りましょう」
「はい」
二人は、会場に入った。
広い大広間には、多くの人々がいた。
華やかな服を着た貴族たち。
給仕が、飲み物や料理を運んでいる。
音楽が、静かに流れていた。
「これが、エルザリア王国の晩餐会……」
ルーカスは、周囲を見回した。
自国の晩餐会とは、雰囲気が違っていた。
もっと明るく、開放的な感じがした。
「殿下、ご気分はいかがですか」
声をかけられて、振り返った。
エルザリア王国の貴族の一人だった。
若い男性で、にこやかな笑顔を浮かべている。
「はい、とても良いです。素晴らしい晩餐会ですね」
「ありがとうございます。私は、クラウス・フォン・シュタイナーと申します」
「ルーカスです。お会いできて光栄です」
「こちらこそ。殿下のお噂は、聞いております」
「噂……」
「実技祭で優勝されたとか。素晴らしいですね」
「ありがとうございます」
ルーカスは、少し驚いた。
自国の実技祭の結果が、他国にも伝わっているとは。
「私も、剣術を嗜んでいます。もし機会があれば、手合わせをお願いできますか」
「手合わせ……」
「もちろん、友好的なものです。お互いの技術を学び合うために」
「……いいですね。ぜひ、お願いします」
ルーカスが、微笑んだ。
クラウスも、嬉しそうに微笑んだ。
「では、後日、改めて。今夜は、ゆっくりお過ごしください」
「ありがとうございます」
クラウスが、去っていった。
セラが、小声で言った。
「殿下、また手合わせの約束を……」
「友好的なものですから、大丈夫です」
「でも、力を見せることに……」
「気をつけます」
ルーカスが、頷いた。
セラの心配は、もっともだった。
しかし、断るのも失礼だ。
うまく力を抑えながら、対応するしかない。
* * *
晩餐会では、様々な料理が出された。
エルザリア王国の伝統料理だ。
見たことのないものばかりだった。
「これは、何ですか」
ルーカスは、目の前の料理を見つめた。
白い塊の上に、緑色のソースがかかっている。
「エルザリア名物の、白身魚のムースです」
給仕が、説明してくれた。
「ムース……」
「はい。魚をすり潰して、泡立てたものです」
「いただきます」
ルーカスは、一口食べた。
ふわふわの食感。
口の中で、溶けていく。
魚の旨味と、ソースの酸味が絶妙だった。
「美味しい……」
「良かったです」
給仕が、微笑んで去っていった。
セラも、同じ料理を食べていた。
「殿下、これ、本当に美味しいですね」
「はい。こんな料理は、初めてです」
「エルザリア王国の料理、すごいですね」
「はい」
二人は、夢中で料理を食べた。
どれも、美味しかった。
自国とは違う味付け、違う調理法。
新しい体験だった。
* * *
晩餐会の後、ルーカスとセラは、貴賓館のバルコニーに出た。
夜空には、星が輝いていた。
街の灯りが、遠くに見えた。
「今日は、楽しかったですね」
「はい」
「新しい国、新しい文化。全部、新鮮です」
「殿下、楽しそうですね」
「楽しいです。セラと一緒だから」
「……」
セラの顔が、少し赤くなった。
夜風が、二人の髪を揺らした。
「セラ」
「はい」
「この実習で、たくさんのことを学びたいです」
「はい」
「外交マナーも、異文化も、全部」
「殿下らしいですね」
「そうですか」
「はい。殿下は、いつも学ぼうとしています。それが、素敵だと思います」
「ありがとうございます」
ルーカスが、微笑んだ。
セラも、微笑んだ。
「明日から、本格的な実習が始まりますね」
「はい。頑張りましょう」
「はい。一緒に」
二人は、手を握り合った。
新しい冒険が、始まったばかりだった。
「セラ」
「はい」
「おやすみなさい」
「おやすみなさい、殿下」
「……ルーカス、でいいです」
「え……」
「二人のときは、名前で呼んでください」
「……分かりました。おやすみなさい、ルーカス」
「おやすみ、セラ」
二人は、それぞれの部屋に戻った。
明日への期待を胸に、眠りについた。
エルザリア王国での生活が、始まった。
新しい出会い、新しい経験。
それは、ルーカスにとって、かけがえのない時間になるはずだった。




