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B-FLYER  作者: SHIRUSHI08


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6/7

第6幕 ビアホールの夜 秘密のまま

回としてはクライマックス。一気に書きました。展開にしっかりついてきてください。

美羽を追って出てきた男性は、自分の手を振りほどいて去って行った女性を責める気はない。

彼女は言った。

『――何ならお兄さんが……』

(……そうなんだよな、俺が、あの娘を店に戻したからって、何も解決するどころか‥‥‥)

「結局俺は、彼女を責めただけ……」

(でも俺にもそんな勇気はない。……)

彼はやるせない気持ちでお店を見上げる。

(……せめて、何かの時は第一通報者に……)

男性は肩を落とし、重い足取りで階段をゆっくりと店へと戻る。

嫌でも佳奈と水咲がちやほやされているあのテーブルに目が行ってしまう。

男性と二人には面識すらないが、先ほど美羽と言葉を交わしたことで、

まったく無関係とは言えない心情になってしまった。

そもそもそうだったから、わざわざ美羽を追ったのだが……


彼は自分のテーブルに戻ったもののそれ以上の酒が口にできず、いたたまれない気持ちと

勇気のない自分に辟易していた。

『そいつらに関わると碌なことはない!』

心の中はそう叫んで止まない。しかしその言葉は口を出ることはなかった。


「おい、水咲そろそろ店変えようか。 へへ」

「ほら、佳奈お前もいくぞ フッ」

もうすっかり彼氏気分か何かのつもりか、男たちは人目も憚ることなく、

無理やりともいえる程の量の酒を二人に飲ませており、傍から見ても危ないと感じる。


店の前に黒のワンボックスが静かに止まる。

目立たないようにしているつもりなのだろうがこの時間帯には明らかに異様。

窓には黒いシールが一面に貼られ、中の様子を窺うことなどできそうもない。

その車から一人の男が降りて店への階段を足取りも軽く駆けあがっていく。

まるでこれから楽しいことでもあるように……


店の扉が少しだけ開かれた。階段フロアは暗く、店の中から出は顔を覗かせた

男の表情など見えるものではない。

ただあの男性には、その男性の顔が下卑たしくにやけているだろうと感じた。

窓から通りを見ても車のナンバーは遮光が施されているのか読み切れず、男性は唇をかむ。

(……通報しても、送るだけと“しら”が切れる。決定的犯罪に至っていない。……)

法律なんてそんなもんか!

男性は握った拳にこれでもかと力を籠めるしかできなかった。


扉が開いたのが合図だったのか、奴らは女性二人の腰を抱くように、介抱しているとも言えなくはないが、態度と顔つきは明らかにそれと異なっていた。彼女らのバッグは下っ端らしき男が無造作にひったくるように回収して行ったから。


(あぁ、俺には結局何もできなかった……)

階段を下りてゆく声が聞こえる。

「おーい。ほこりくんどほー(どこいくんだよー)。」呂律のまわっていない彼女らの叫びともとれる言葉が男性の耳に残った。


男性は、彼女らが車に乗せられていくのを二階の窓から力なく見守るしかなかった。

彼女らなりに車に乗せられるときに扉に手を掛けて抵抗している素振りは見えたが、

男の力に抗えるわけでもなく、その上泥酔していればあってなく車中の人となる。

通行人すら、酔っ払いの騒ぎを見るような冷たい目を向けて通り過ぎるだけ……

車の扉がバタンと音を立てて閉じられると時間をおかずに走りだす。

(もう、この町で彼女たちを見ることもないのだろう。)

見送る男性の目から涙がこぼれる。

その涙は、もう二度と見ることのない彼女たちへだろうか、

それとも不甲斐ない自身へだろうか

彼の視界がにじんだ時、空から何かが降ってきた。

先ほど迄あの車が止まっていたその場所へ片膝を折るように着地したその影が振り返って男性を見たように感じた。

男性は携帯を手に階段を駆け下り外に出ると電話を掛ける。

(無駄でもいい……)



「させるかぁー!」ビルの屋上から見守っていたB-FLYERこと美羽は車の追跡を開始する。

ビルの上を追ってもよかったのだが、店を出た時声を掛けてきた男性

彼に放った言葉に後悔をしていた。

(自分でもわが身がかわいい。今はこの力があるからできること……

 だから悪いのは男性でもなく、すべてはあいつら!)

だから、あえて着地して姿をさらした。あの男性が心配してみているかもしれないと思ったから……


今日の美羽は準備の時間が十分にあった。だから、前から気にしていたスタイルまるわかりを少しでも改善しようと腰に巻く布と、ある程度の顔識別を妨げるマスクを準備し、着用できた。

マスクと言っても仮面舞踏会に着用するようなと言えばわかりやすいか?

B-FLYERは全身黒のスーツに深紅の腰巻、赤を基調としたマスクを着用していた。

それには美羽なりの考え、(リーダーは赤)である。


(思った以上に遠くまで行くんね……)

ふたりを乗せた車はいつしか海沿いに出てきており、少し先には倉庫群が目に入る。

(鉄板って本当に鉄板なんだ。)

そんなことを考えながらもB-FLYERこと美羽は、ワンボックスから目を離さないよう、

建物や他の建造物を時には遮蔽に、時には追跡の足場として利用しながら追尾してきた。


車が少し大きな、でも古びた倉庫の角を曲がると、

倉庫の扉が車一台分ほど開かれているのが見えた。

(……不自然ね。)

B-FLYERの勘はそこが目的地だと訴える。案の定車はその中へと消えてゆく。

(で、私の定番だと雑魚が門番に出てくるのだけど……来ないわね。)

B-FLYERは隣の倉庫の屋根から俯瞰するように目的の倉庫を見渡し、入り口を探す。

(こだわらなければ、隙間だらけでどこからでも行けるんだけど……)

悪いやつらが勢ぞろいするとか、二人の様子が知れる様に見ておくためには、

身を隠すところが必要だ。

(屋根裏の梁……やはりあそこが最適解)

B-FLYER美羽は勢いよく飛び出すと音もなく梁に取り付き監視を続ける。


先ずは男たちに担がれるようにして、二人が車から降ろされる。

(しっかり気を失って……)

その辺の床に無造作に投げ捨てられるようにドサッと音を立てて降ろされる。

(よし、覚えたあいつら一発多めに叩く。)


男たちがバラバラにあちこちで下衆な話でもしてるんだろうが、

しばらく経つと明らかに立派な車が滑り込んでくる。しかも2台

運転手と助手席からすばやく降りた男が後部ドアを開いて—

ちょっとは大物ってところか?

これで総勢‥‥‥ひの、ふの、み……と、14人ですか?

前に居たのと今来たので向き合って、二群に分かれちゃってるから、

多分これで全部だね。

佳奈と水咲を連れてきた連中は、二人を奥において、すぐそばに見張りが2名ね

で、4名が交渉役かな?

4対8だと取引決裂の時絶対不利やん。じゃないとするとパシリ?

まあ、どっちでもいいや全部潰す。

(じゃあ、行きますか。)


(目標!保護対象2名確保の後倉庫外に搬出。)

梁の上に立ち上がると、佳奈、水咲までの距離を測る。

ふたりは同じ場所なのはありがたい。一度に行けるね……(今!)

両手を広げて音もなく飛び降りる。   着地

狙い通りに見張りとふたりの間に奇麗に入った。

(さすがに音が出るわな。)

男たちが振り返るもお構いなし。

「Hello!」と声を掛けると見張りのふたりの間に滑り込んで先に片づける

先ずは右側の男に蹴り……なんだけど顔面すれすれでいったん止める。

このまま蹴ると、首が飛んじゃいそうで距離ゼロで蹴り直し。

それでも数mは吹っ飛んで行く。(はー、きれいに飛んだねぇこりゃ)

次に左の男、振り返ると殴りかかってきてるんだけど遅い。

「もう一丁―っ!」同じくゼロ距離の蹴り。吹っ飛んだ先まで構ってられない。

とにかくまだ12人いる。

佳奈たちのところに戻り二人を小脇に抱えて周囲に視線を巡らす。

反応の遅れた男どもなど無問題。予定通りに倉庫から二人を出すために

出口へと向かうが途中に拉致グループの4人とその先に後着の8人

(私は二人を抱えたの見て笑ってるね……後悔しな!)

結果ふたりを抱えて男たちの間を突破する形に見えるが私は違う。

小脇に抱えてすっくと立ちあがるとそのまま連中に向かって走り出す。

4人の手前5メートル付近で両足踏切一気に連中の頭上を飛び越える。

後方から「逃げたぞぉー追え!」とか聞こえるけれど、逃げたんじゃない。

開いた扉を駆け抜けて倉庫の外でふたりを降ろすと、素早く倉庫内へと舞い戻る。

(寒いかも分からんけど我慢して……)


後ろ手で扉を閉めると一気に庫内が暗くなる。

私を追って走ってきた連中は図らずも一団のように固まる結果に。

(あ、でも奥の遠くに偉そうなおっさんふたり残ってた。)

ということは、さっき伸ばした二人以外に、目の前の集団には10人ってことね。

数秒もすると、目が暗さに慣れてくる。

「小娘一人にもたもたすんなー」連中のはるか後方から、威勢のいい声が届くが

(ちょっとぉ、おっちゃん見てなかったの?私の大ジャンプ。

それでも小娘認定?……しらんよ。)

ガン! 後ろ向きに扉を蹴りつけておく。

(扉がずれて簡単には開かないよぉ  ふっ)笑みを一つ浮かべておく。


連中との距離は10mってところかな(逃げ足は徹底的に叩いとくよ。)

視線を右に向ければ後着組の二台が15mくらい先か……

そのさらに奥に憎きワンボックス。

連中が車に向かっても止める自信はある。(けど厄介じゃない、だから先)

結論を出すと同時に一気に加速して車へと走る。

丁度連中の8時の方向(左後方)くらいに位置することになる。

一台目……(セルシオかな?高いんだろうなぁ)ボコッ

二台目……(見慣れないから外車だねきっと。)バコッ

駅前通りでやったようにボンネットごと、打ち抜き完了!

おかげで連中の動きも止まったよ。立ち尽くしちゃって、度肝を抜いた格好だね。

このまま更に奥のワンボックスに走る。

ワンボックスを右手でグッとちょい押し……で横倒しに、

のつもりが、少し跳ねて逆さまになっちゃった。(テヘ)

(足は潰した。 はい。次はごみ処理……)


で、今結果的に偉そうなおっさんふたりに近い形になってしまったんだが、

屯ってる連中がせっかく固まってるのでそっちから……

集団との距離は15メートルくらいだろうか、

その場で一旦足を揃えて両足踏切で高く宙に舞う。

体操競技に詳しくはないが前方伸身捻りくらいに呼ぶのかなあとは何回転だけど

そんな無駄にクルクル回る必要はない。集団の後方へ着地した時、

背中を向けてなければ成功。……よし。

そのまましゃがみ込むように左足を伸ばして反時計回りに回りながら、

刈れるだけの足を刈る。(ん……3人?)

左足が集団を抜けきったタイミングで左足を止めると

軸にしていた右足を蹴り上げるように体を捻りつつ地面に着いた両手で上体を跳ね上げる。

足を払われ、倒れ切れていなかった3人が右足の餌食となって沈む。

残り9人

足元に倒れた人数を確認のため動きを止めたが連中の反応が遅い。

前に7後ろに2.しかしこの2は例の偉そうなおっさん。しばらく捨て置く。

視線を前に戻すと連中が後退る。

一歩詰める。連中が更に一歩引く。

(か弱い女子一人になにビビってるの?散々女いじめて来たんやろうが!)

にこっと微笑むと、集団の一番手前の男に狙いをつけて、スライディングで飛び込むと

右足で両足を一気に狩り倒すと、そのまま捻りこむように相手の身体に左足を叩きこむ。

(地面と左足との間でちょっと嫌な音がしたけど、まあ、いいや。)

残り8人

そのまま回転して立ち上がった先、ふたりの男の腹部にゼロ距離パンチを打ち込む。

残り6人

そのまま踵を返して逃亡を図る三人を後ろからタックルを加えてつんのめさせると

倒れたのを引き起こして平手打ちで気絶させた。

残り3人

ようやく己の形勢不利を悟ったのか、偉そうなおっさんふたりも知れッと去ろうとする。

振り向くまでもなくおっさんに声を掛ける。

「あっと、そこの偉そうなおじさん。自分だけ逃げちゃだめよ。」

さっき倒して、足元に寝転がってるのを一つおじさんにぶん投げる……命中!

あら、一緒に逃げようとしてたのもまとまってて助かったわ。

残り1名

(あれ、どこだぁ……)

立ってる奴はもういない。注意してみれば先ほどの集団の中に座り込んで、

戦意喪失しているのが一人。

「そこの男、立ちな。」優しく声掛けしてやれば素直に応じて、でも目がうつろだねぇ。

(だから何だって言うんだ、てめえらの所業の結果だろうが!)

「おまえ!こっちにこい!」「は、はい!」

どやしつけるとおとなしく順ってすごすごと私の前にやってくる。

(人ってこんなに震えるんだ……初めて見た。)

私はニコリと笑みを浮かべると、周り中を指さして

「そこらに寝転がってるゴミ、ここにまとめときや。あんたごみの清掃員な。」

「は……い。わかりました。」

震えてるのは分かるけど動きが襲い。

「はよやれ!」軽く足で小突いてやると見ごとに引っ繰り返る。

「三分だ。はやくやれ!あ、その前にお前の携帯だしな」

もう男に考える力なんて残ってないのかもしれない。

ただロボットのように言われたことをやるだけ。

男の携帯が私の手に握られた。



アクションシーン半分なんだなぁでも思いの丈は詰め込みました。

そしていよいよ次回はエピローグとして登場。

この物語の佳境です。お楽しみください

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