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B-FLYER  作者: SHIRUSHI08


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5/7

第5幕 飲み会前、胸騒ぎ

三人は駅前のビアホールへ、いつもの乗りもあったものの、やっぱり話題は”ナゾガ”

水咲が選んだビアホールは先日その”ナゾガ”が暴れまわった?すぐ近く。美羽の胃はキリキリと痛むのか


「――はい。本日は誠にありがとうございました。佐伯が担当させて頂きました。」

相手には見えるものではないけれど、ペコッとやってしまうのって日本人あるある?

それとも、全世界共通?

(あー、後者はなさそうだから、前者だよね……きっと。)

フロアの壁に掛かる標準時計に目を向ける。

(……あと、一本位かな。もうひと踏ん張り。)

しばしの憩いとほのかな希望の間を漂いながら、美羽は鼻と上唇の間にペンを挟んで

しばしの一人遊びに興じる。正式には人中じんちゅうとか言うらしいけど分かりにくいしね。

一人遊びに興じながらも少しはまじめに考えている。

(なにをって、ほら、私の重大事……能力のこと。)

今のままだと、目の前で何かあっても対応が無理なのよね。

何がって……一番の問題は服よ。

変身のたびに消えるの、ほんま勘弁してほしい。

これまで何着だめにしたか……思い出したくもないわ。

それでも検証して分かったのは、脱いで体から離しておけば消えへんってこと。

それでもスーツはちゃんと出るから。

服を犠牲にすると今なら約3秒、

服を惜しめば、3秒+脱ぐ時間、が裸の時間。

最初の頃は10秒くらいだったから、短くはなってる。


前回のきっかけは、些細なことからの追跡だったけど、

あいつら余罪がいろいろな悪いやつらだったんで、

服も無駄にならず逮捕につながって、結果オーライ。

でも、その前のなんて、お気に入りの一着失って、結果ガキに説教垂れただけ……

(おかげで毎日の服装が、おしゃれとは程遠い所を漂ってるわ……)


今事件があって、私にお金と社会的立場と羞恥心を一緒に捨てる覚悟があれば、

変身はできるよ。

(でも絶対……無理!)

もう少し私を守る、光ったり、花とか星とかが舞ったりするオプション欲しかったな。

(あ!ごめんコール来た。)

「はい。お待たせしました。コールセンターの佐伯が担当いたします。本日は……」

……まあ、悩んでても仕方ないか。

仕事は仕事、飲み会は飲み会。

気持ち切り替えよ。


(ビアホール)

会社からほど近い駅前のビルの二階に広がるビアホール。

もしかしたら“ナゾガ”が見られるかもと淡い期待を寄せて予約した初めてのお店

残念ながら私たちの予約席は窓から遠い。

「んじゃ、かんぱーい」

「「かんぱーい」」

三人のグラスをぶつける音が鳴り、豪快にのど越しの音が聞こえるような飲みっぷりで、

あっという間に三杯の中ジョッキは三人によって干された。

「プファァー」三人三様の吐息を漏らす。

間髪を言入れずに水咲が店員を呼んでお代わりの注文。もちろん三人分。

で、今私のカバンにふたりが注目しているわけ。

「なんで、あんたのカバンはそんなに大きいの?」佳奈がそう口火を切ると、水咲が続く

「そうそう。あんた前は荷物は少なくとか言って、小さなの使ってなかった?」

(……う、おっしゃる通りでございます……)

「……お、お代わりまだ来ないかなぁ……」

敢えてしらを切ってみるが、

「そう言やぁ、服も心なしか……」佳奈は容赦がない。

袖やらどこでも余裕のありそうなところを見つけては、引っ張って確認しながら

「ひょっとしてユニ〇ロ?」とか聞いてくる。

「……いや、これはG〇ので……」

(急激に減った服の補充にと広告の品を買い漁った結果だ。)

「で、カバンには何が入ってるのよ。そんなにパンパンになるまで」

(服の方がよかった……なんで戻るんよ……)

どっちに転んでも美羽に好ましい展開ではないのだが、それでも少しはましなのにと

(何か話題を変えられるもの……)周囲を見回してもいいネタがない。

(ん?いいネタ……カバンよりましか。)

「佳奈?それより、遠藤さんには見せてもらえたん」

「そうそう、話も聞いた。やっぱり近かったわ。ほとんど駅前やって、でね――」

佳奈がひょいひょいって皆を集める。

「車のボンネット、エンジンごとくり抜かれたみたいに道路に落ちとったって」

(知ってる……)

「えー、なら“ナゾガ”怪力女説急浮上?」

「その前に、化け物説があるかも……ハハハ。」

(ぐすん……本人泣いてるでぇ。でも、とりあえず名前も何とかしたいなぁ)

「えー、なに、なに、なに?“ナゾガ”の話で盛り上がってる。」

見ると、私たちより少し上ぐらいかな?

なれなれしくも、早速テーブルに自分たちのグラス載せてきていつの間にか相席のつもり?

ふたりもまださほど酔ってはいないみたいだけど、

俺も生で見たよ。発言に佳奈が食いついちゃったようで、あーあなし崩しだよ。

あちらは男性4人で会社帰りだっていうけど、どう見たって遊び人風。

私はあまり関わり合いたくないタイプ。

なので私に話しかけてくるのもいるが、

私が無愛想なので、今はほとんど相手にされていない。

(服装も少しは関係あるのかな?ふたりはそこそこおしゃれな恰好してるし。)


佳奈と水咲のふたりは、男たちに囲まれながらも今のところは楽しそうに話してるね。

話しを振ってきただけあって、本当に現場にいたかどうかは分からないけど

それなりに話は知ってるみたい。

(あぁ、暇だなぁ……)

何気なく周りのテーブルに視線を向けると、

何となく私達を避けているような雰囲気を感じる。

(いや、私達っていうより、この男たちだね。要注意かな。)


一人の男が席を立って店の奥の方へ。

(トイレかもしれないけど……)

気になった私は、「お手洗い」と席を立って追跡開始。

いた、いた、トイレより更に奥のちょっとした静かなスペース。

(電話か……)

目をあわせないようにそっとトイレの扉を押して体を滑り込ませると、

壁際で耳を澄ませる。

(あれ?今なんか不穏な言葉が……いいの上げられそうって、

 一時間後くらいに正面に車って……警戒MAX案件やん。」

素知らぬ顔してテーブルに戻ると、佳奈と水咲に「そろそろ帰ろう」と声を掛けるも

男たちがなんやらかんやらはぐらかして……駄目か?

なんか後味悪そうやけど、とりあえず私だけでも帰らせてもらうかな。

(別行動に入りまーす。って感じで)

「佳奈、水咲。じゃあ、私先帰るんで、あなたらも遅くならんうちに帰りいや」

私の声掛けに「あーい」とか「ほーい」とかいい加減な返事のふたり。

(かなり酔ってるか、このふたり。……じゃあ、またあとで。)

「それじゃあ、お兄さんたちごちそうさまでした。」

適当に声掛けしといてややこしくなる前に離席する。

階段を降りて通りに出たところで、後ろから追いかけてきた若い男性が私の肩を掴んだ。

「ねえ、君。」

「はい。何でしょう?」

「君らと飲んでた男たち、知り合い?」

「いいえ、今日初めてですけど」

その返事を聞いて男性は周囲をサッと見回すと、私の耳元に顔を寄せると、

「奴らこの辺でよくない噂を聞く連中で――」

「でしょうね。」

「わかってて置いてきたの……友達なんだよね。」

「はい友達ですよ。でも今の私じゃどうしようもないんで……」

「いいのか……それで?」

(いい訳がない。)

「……、私急ぎますんで、ごめんなさい。何ならお兄さんが……」

(できないからわざわざ外まで来て教えてくれたんだよね。)

肩に掛かっていた男性の腕を振りほどくと、私は雑踏の中へと溶け込んだ。



残念ながら、次回最終回です。佳奈と、水咲を置いて店を出た美羽。美羽を追ってきた男性の忠告にも美羽は「急ぐから」と去って行った。でもね、ほら、美羽ですから。

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