第4幕 昼休みの噂は止まらない
お昼休みに仲良し三人組でマックいきます。水咲の後ろに座ったJKめ~。
このふたりには詮索される前に逃げたいのに、なんで、”ナゾガ”の話題に触れるかな?
おかげで私居心地悪いし、どうも更なる窮地に足を踏み入れそうな気配。回避できるかな?
出来ねぇだろうなぁ……’
午前の業務を終えて、肩を回しながら席を立つ。
みんな一斉にという訳にはいかないけれど今日は比較的仲の良い水咲と
佳奈が同じ時間ということで、三人で示し合わせて近くのMacに行く。
4人掛けのテーブルに陣取ってオーダー品の到着を待ちながら、いろいろと話す。
私の真向かいの水咲が背中合わせのJKさんらの話を小耳にはさんだようで、
後ろに反り気味に耳をそばだてていた彼女は一転テーブルの中ほどまで身を乗り出して、
『ちょっと耳貸して』とでも言いたげに、ひょいひょいと手招きしてくる。
「今、うしろもしゃべってた。例の“ナゾガ”、昨日この辺りに出たんだって。」
水咲がヒソヒソと話しているのに、佳奈が「えー」と驚き大きめの声で応える。
(……また”ナゾガ“)
困惑というより、『またか』の気持ちが強く前に出る。
「朝のニュースでやってたの見たけど、この近くなんだ。」
佳奈が先ほどと比べても落ち着いた声で返したことに少し驚いて、
思わずまじまじと佳奈の顔を見つめてしまう。
私の視線に気づいた佳奈は、ちょっと身を引いて
「ん?どうしたん‥‥‥」と見返してくる。
(佳奈ってミーハー?)そんなことを思いながらも
「なーんでも。ただ、朝ロッカールームで遠藤さんに動画見せられて……」
「それってニュース映像の?」
「オリジナルだって、昨日現場にいたって言ってた。」
「うっわ。すご……遠藤さんってあの遠藤尚」
「あの……か、その……かは知らんけど、遠藤尚さん。」
「あとで見せてって、聞いてみようかな。」
「いいんやないの?なんか、見せたかったみたいやし。多分喜んで見せてくれるわ。」
「ほんとうに。なら昼早めに戻って捕まえないとだね。」
「で、そもそもその“ナゾガ”って何もんやろね……」
話題を振りながら取り残され気味だった水咲が入ってくる。
「なんでも、ここ二、三日で一気にバズったみたいで」
佳奈がニュースで仕入れたのか知っていることを教え始めた。
「けど、まだほとんど見た人が少なくて、フェイク映像とか言う説もあるみたい。」佳奈
「でも、遠藤さん見たって言ってたんでしょう?」
水咲と佳奈が一斉に私へと注目する。
「言ってたね。」
私は淡々と聞かれたことだけに返してゆく。
「じゃあ、フェイク説はないな。」
佳奈と水咲は頷きあって確認する。
「とすれば宇宙人説……スーパーマン的な‥‥‥でも女性ってことやから
スーパーガールか。」
「空飛ぶって話も出てるしね。」
「飛ばんって、あ……」
美羽は思わず口を紡ぐ。
「えー、飛んでないの?あれ。」
「飛んでないなら、あれどういう状態なの。美羽?」
佳奈は、今朝のニュース映像を思い出しながら疑問を覚え美羽に尋ねる。
「えっとね。……普通に考えて飛べるわけないでしょ。」
(心臓バクバク……やめてその話題‥‥‥)
心の内を気付かれまいと、美羽は声を上ずらせながらも何とか理由を紡ぐ。
「でも映像じゃ、飛んでるようにしか見えんよ。
時々ビルの壁を使っとるみたいやけど、曲がれんだけやないのかな?」
「……そ、そうかもね。うん、飛んどる。……飛んどる、よね。」
美羽はこれ見よがしに大きく頷くと、佳奈の自分への視線が外れたことを知って
胸をなでおろす。
「今日夜暇やろ?」
水咲は私らの顔を覗き込みながら同意を求めてくる。
「空いてるよ。」
『佳奈が面白そう。』と楽しげに答える。
「……うん。残念やけど予定はない。」
(いやな予感しかせんのやけど……)乗り気のしない私の返事に
「その消極的な返事気にはなるけど、強制参加に決定します。」
「いいよ。で、どこ?どうせこれやろ。」
佳奈はビールジョッキをあおる仕草で水咲を見た。
「もちろん。じゃあ、いつものビアホールで……時間どうする?」
「5時には上がるから、6時くらいにしとく?」
「いいよね。美羽?」
「ハハ……よろこんで……」
佳奈と水咲にがっしりと肩を掴まれた美羽はぎこちなく笑いながら答えるしかなかった。
「じゃ、私予約入れとくわ。」
水咲はスマホに視線を落としながら、さっそく操作を始める。
「ネタ、いいの仕入れとくね。」
佳奈は“遠藤さん、遠藤さん”と小声で繰り返しながらニンマリしている。
これ以上はないというほどのふたりの笑顔を前に、美羽の肩はまた一段落ちた。
ということで、夜はお楽しみのビアホールに決定。私のハートはアリジゴクな底なし沼にはまったように……で、憂鬱。
とにかくこれ以上私のハートを沈めないでぇー
我が願いを叶えてください。お願いします。(祈り)




