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B-FLYER  作者: SHIRUSHI08


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3/7

第3幕 ロッカールームのナゾガ

お母ちゃんにばれんかったくらいだから、同僚さんには大丈夫とは思うんだけど、

やっぱりトークテーマにされるとドキドキするもんね。

自覚してるんよ。ちょっと天然色入ってるかなって。でも多かれ少なかれ誰にでもあるもんだと、

私は信じてる。

ロッカールームに滑り込む。

顔はもちろん見知ってはいるけれど、いつもはあいさつ程度のライトな二人が居るだけ。

(ラッキー!)

「おはよーございます。」

ごくごく当たり前にふつーに挨拶の声を掛ける。


私の声にガバッと音がしたような勢いで振り返った二人。

思わずこちらの表情が強張る。

「……えっ、ええっとぉ……どうかしました?」


(いや、だってこれは聞かないと……でしょ?なんか驚かした感じになっちゃってるし)


私の話に二人はしばらく顔を見合わせていたが互いに頷くと、

ツカッ、ツカッとかなりの圧を伴って迫ってくるではないか。

(え、ちょ、なん、なんで来るのぉ!?)

思わず後退ったが、すぐに背中がロッカーにあたりそれ以上下がれなくなった。

(ごめんなさい!ごめんなさい!何も持ってません――ん?)

思わず目を瞑って拝み倒す格好を取っていた私は、ふたりの「ちがうわよ」の声で

恐る恐る目を開ける。

「佐伯さんだったわよね?」

ふたりの声からは特に威圧も感じないし、なんか普通に聞いてきてる感じ……

ホッと胸を撫でおろしながらも、別の不安がふつふつと湧き上がる。これって……


(ひょっとして……また、やっちゃったぁ!?)


「……あぁ、ごめんなさい。わたしてっきり二人に……」

慌てて私は手をパタパタと振って誤魔化すがしっかり発言しちゃってたわけで……

「……別に、私達何もしないわよ。」

と少しばかり不機嫌モード。

(いや、元はと言えば、そっちが……あー、なんで私が謝るはめに……)

「あぁ、本当にごめんなさい。私、佐伯です。……はい。」

腰が引けて情けないけれど、普段からどうも強く出てくる人には弱腰なのよね。

モードが変われば……だけど、普段からそう言う訳にはいかないし。(ハァー)

「まあ、いいわ……それよりこれ見た?」

ふたりはコロッと表情を変えると、興奮を抑えきれないといった顔で、

スマホの画面を私に見せてくる。


「なんですか……?」

眼鏡を指で少し持ち上げつつ、ふたりが見せて来るスマホの画面をのぞき込むと

そこには朝のニュースでやっていたのと同じ画像が……と思ったが微妙に画角が違う。

「これ昨晩、そこの交差点の向こうで私が撮ったのよ。」

鼻息荒く話す相手は、確か、え~と、遠藤ごにょごにょさん。


なおが昨日偶然見たんだって、今SNSで話題の”謎ガール“略して“ナゾガ”」

(なにそれ、”ナゾガ“?……wwwだよ。ってか、そうそう遠藤尚だった。)

「……はぁ、それで私に何の用なんです?」

(ってか、もうやめてよその話……あぁ、恥ずー)

「え?どうしてって、すごくない?”ナゾガ“生撮りだよ」

そうして二人で向き合ってから「ねぇ~っ」ってやってるのが何か、くどい。

「……でも残念だったのがぁ、私の隣にいたおっさんから映像買いつけててさ。

あれっていくらくらいで買い取ってもらったんだろうね。って話よ」

って話よ。って真顔で言いきられても、私はどうすることもできないし、

そもそも映像の相場なんか知らんし……だよ。


「あのー、もう支度にかかってもいいでしょうか?着替えたりしたいし……」

私のそんな反応を見て二人も拍子抜けしたのか、

「そうよね。私らももうすぐだし。」と言って、自分らのロッカー前に戻って行ったし、

今度は落ち着いて自分のロッカーを開けられる・・・じゃなくて荷物の確認・整理。

予備の服装1着……よし!

ジャージ1着……よし!

バスタオル2枚……よし!

100均のナップサック……2個

で、今日追加で持ってきたのが、

予備の普段着1着……よし!

バスタオル(追加)1枚……よし!

どうしてそんなに服が多いかって?まあ、それはおいおいでも何となく察しついてるでしょ?

そう言うことなんです。何かと着替えが必要なの……わたし。

それじゃあ、そろそろ時間なんで……今日はゆっくり仕事ができますように(祈り)だわ。



オペレーションセンターに入って時計を見るとちょうど5分前。

奥の席のコール担当にフロア担当が何やら声を掛けてるのが目に入るが、

そこは特に気にもせず一応差し障りのない程度に会釈をしながら、席へとつく。

パネルを操作して、申し送りやら何やらにひととおり目を通すと、

にこりと顔に営業スマイルを張り付けて、真顔に戻り再び営業スマイルを張り付ける。

これは私の始業前のルーティン。『笑う門には何とやら』を無理やり実践するわけで、

あとは口を簡単に動かして(「あ、え、い、う、え、お、あ、お」と言うやつです。はい。)

活舌をよくして、ここで時計が大体始業30秒前くらいで、今日も何とか‥‥‥だね。


で、始業になるともれなく各席に繋がってるって状態だから、

平日のこの日中の時間にここへ電話してこられる方がこんなにいらっしゃるということは、

皆さんよっぽど‥‥‥いいえ失礼しました。

「はい。お待たせしました。コールセンターの佐伯が担当いたします。本日はs……」

これ以上は業務上の制約もあるし、個人情報も扱うのでここでは言えませんので、

悪しからずご了承くださいませ。って感じですかね。


大抵のお客様は、しっかりと話を聞いて対応させていただけますと、

少なからず納得していただけるのですが、中には個性的な要求をされる

カス邪魔―じゃなくてカスタマーもいらっしゃいますが、

そう言った方には専門の部署に、引き継いでもらえるのが当センターのいい所ですね。

たまーに回線が一杯になって引き継ぎたくても回せない。

なんてこともありますが、そこは私のイライラメーターの上昇次第で、ちょい休み

に入らせてもらってお茶の一杯でもあおって……じゃないですね。頂いて、

仕切り直しです。こういった職場ですからそれなりにストレスもありますし、

休日には落ち着くスポットが欠かせないというのが私です。

そのスポットが今回の……あ、これ内緒でした。



ニュースで報道されるとか、SNSでバズるのは仕方ないけど、”ナゾガ”ってなんよ!

謎ガール、略して”ナゾガ”略としては間違ってないよ。略としてはね。

でも、他にあるでしょう?

こう、もうちょっとスパイスの利いたというか、格好いいねと思えるような……ね?

ちょっとしっかり考えて、自分で名乗らないとずっと”ナゾガ”にされちゃいそうで……

そうねぇ……美羽なんで、美=ビで羽=wingからB-wingって…これ某スペースオペラの戦闘機だわ

きゃっかー!じゃあ、少し捻ってB-FLYER。ちょっと略してビーフって懸念がないでもないけど……

仕方ないか(はぁー)

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