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B-FLYER  作者: SHIRUSHI08


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2/7

第2幕 ニュースの中の私

しかし、まさかこうなるとはねぇ。さすがネット社会。拡散も速いわ。

でも母ちゃんにも分からんもんなんね。メイクの力ってすっごいわ。作るに化けるだからねぇ

スクランブルエッグも上手にいい感じに仕上がって、トーストもこんがりサクサク

入れて手のコーヒーの香りが鼻腔をくすぐる。

朝のひととき、携帯のメールをチェックしつつ、テレビのスイッチを入れる。

テレビの起動音がポンと一つ鳴ると女子アナの声が響いてきた。

『続いてのニュースです。視聴者映像ですが、まずはこちらをご覧ください。』

思わず口にしたコーヒーを吹き出しそうになるが、かろうじてこらえる。

画面には既視感のある映像が流れる。

『時間にして2~3分のわずかな時間ですが、都内で起こった話ですよね。』

女子アナが出演者の一人に話を振る。

『ここ数日、話題になっているようですよ。SNSではすでに持ちきりとか……』

(え、SNSで……)

『あー、これですこれです。』

出演者の一人が映像を提示してカメラがそれを映し出す。

(これって、三日前の……)

これはまだ制御不十分で、壁にひびを作っちゃったやつ。

『これ、彼女が作っちゃったビルのヒビらしいんですけど、観光名所になってるようで』

『ビルについた傷が観光名所ですか?』

女子アナが聞き返すと

『よく見てくださいよ。ここですここ。きれいに手形になってるんですよ。』

どこですか?と画面に映った映像を覗き込んだ女子アナは大きな声で、

いかにもテレビという反応を見せたあと

『ほんとうですね。くっきりです。この現場は○○区△△の××ビルですね。』

(……白々しい。打ち合わせばっちりの展開でしょうが……)

『警視庁はこの人物を建造物損壊の疑いで捜査していたようですが、』

(えー、私捜査対象?)

『人間離れした運動能力を有しているようで、

目撃情報は多いものの足取りを掴むには至っていないとのことです。』

(……私、捕まっちゃう……の?)

『ただ、昨日も、この映像の時も建造物の構造的な破壊に至っていないという点と、

もう一点は、結果的には犯罪者の逮捕につながっているという点もあって、

慎重に対応しているとのことです。』

(いやいや、こんなやばいんならもう変身しないし……そもそもお金が……)

『それと改めて見てもらいたいのですが、こちらです。』

画面が切り替わり視聴者提供の映像が大きくズームアップされる。

(私の顔……ばっちり映って……)

その時、携帯が勢い良く鳴った。

「えっ……えー」

慌ててテーブルに落とした携帯を拾ってみると、

(あっ、お母ちゃん……なんだろう?)

ボタンをスライドさせて電話に出る。

「美羽、おはよう。朝のテレビ見た?」

相変わらずけたたましい母だが、離れて暮らしているため

時折りこうしてかかってくるのも悪くないと思っている。

「うん、見てるけど……なんのやつ?」

「うちで見るのは決まっとろう。いつものさぁ、それより何やすんごい人が居るんやの。」

「すごい人?」

美羽はすごいひとってなんだぁ?とさっき見ていた映像すら忘れて考え込む。

「今やっとろう?壁に手形付けよう人よ。犯罪者捕まえとるって。女子じゃろも?」

母の言葉に一気に美羽の体温が上がったような感じがした。

(あんなアップで映って、自分の娘って気づいとらんの?)

「……え、そうやね。……」

「あんたは見たことないんかね?見たら教えてぇよ」

(……いや、ほんまに解っとらんね……これ)

美羽は改めてテレビに大写しにされた自分の映像を見つめた。

(……悔しいけど、実物の何割か増し……ってかこんなメイク自動でなってたの?)

「……う…そ。」

「うそってなんね。こら美羽。聞いとるや?」

「あ、ごめんごめん、今私もテレビ見てた。すごいやん、この人」

そう言って少し美羽は言葉をつづけた。

「うちもこんなんできる人になりたいわぁ……」

「あほなこと言いな!あんたみたいなどんくさいのには無理や。」

(お母ちゃん……正論かもしれんが、言い方……)

「ひどいなぁ、実の娘やん。そうなったらええなぁと家内の?」

「ない。……あぁごめんなぁ忙しい時やったか?もう仕事出るんか?」

「うん、そうやな。もう準備してそろそろやね。」

「悪かった。ほんなら切るわな。気ぃつけてなぁ。バイバイ」

「あ、ばいばい~。」

(あ、噛んでしもた。……しかしショック、実の娘に……)

でもわかったことがある。

普段の自分とは、隔絶の差があるということが分かった。(……悲しいけど)

トーストにエッグを乗せると一口齧る。

次いでコーヒーを一口。

(よし、気分転換はできたし、今日も頑張って出勤、出勤!)


食べ終わったあとのお皿やコップを流しに放り込むように片付けると

手提げかばんを持って、眼鏡をかけて……

玄関に鍵を掛けると、階段へと踵を返す。

顔にあたる日差しに思わず目が細まる。

(あ!バスタオル)

普通には持ち歩かないものが必需品になろうとは

(こっちの方が安上がり……なんだけど、もう少し何か探さないと)

一回り大きな物に変えた手提げかばんが少し膨らんでいた。


という訳で食事もそこそこ家を出ましたが、ニュースになった以上何もなくとはいかないでしょうね。

とりあえず仕事には行きますが……はい。

同僚さんにはかないません。

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