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B-FLYER  作者: SHIRUSHI08


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1/7

第1幕 ひと月前の変身

初めまして

これからちょっと変な話しますけど、実は私”変身”できるんです。

何で、どうして、って思うでしょ?

でもそれ、私もわかってないんです。でも事実は事実として受け入れるしかないんで……

私現実を受け入れられる女なんです。けど……もう一つの現実は何とかならんかなぁって

まあ、聞いてもらえばわかります。――たぶん

額に汗が伝わる。

1秒……2秒……3秒

(来た!)

ギュウ―――――ン  

ピシュッ――

シュパッ――


(フーーッ)

安堵から息を吐く。

が、それも束の間

前、後ろ、……右、左、パパッと素早く周囲を見回すと人の気配を探る――

(……見られんですんでよかった‥‥‥)


変身能力――

私がこの力に気付いたのは、ひと月前……そう、まだひと月とも、もうひと月とも言える。

きっかけは、ある場所に行ったから……残念だけど、その場所は明かせない。

悪用されたらやばいしね。もっともこの力私以外に宿るかどうかもわかんないけど……

でも、私の名誉のためにもこれだけは言っておきたい。

決して怪しい場所でも、特別な場所でも……あー、でもある意味特別な場所ではあるのか?

こうしてこのような力を手にしたのだから。


私の名前は、B-FLYER これってもちろん変身ネーム。本名じゃないわよ。

まあ由来はね(内緒にね。)

ネーミングセンスの問題もあるけど、

別にスーパー○ー○とかキャッツ○○でも、あぁ何ならスパイダー○○でもいいんだけど……

だって服装スタイルから言うとそっち方面。

間違っても魔法少女系とか、スーパー戦隊なんかとは服装イメージが違うから。

もちろん素材は違うけど、体型ばっちりまるわかりなレオタードをイメージしてもらった方が

理解が早いのかも……と思うから。

独り言が過ぎたけど、先に問題を片付けてくるね。


腰を中腰まで落とすと、後ろに引いた足に力を込めて踏み出す。

グンッ!と加速を得て、一気に空中に飛び出す。

急速に近づくビルの壁。

ここは角度を浅めに手をついて、ゆっくりと肘で力を逃がしてスッと押す。

こうしてやらないと、勢いで壁を壊しちゃうんで……入射角。とか言ったかな?

それが重要。

もし真っ直ぐ突っ込んじゃうと、壁が壊れちゃうのよね。

私は傷一つないんだけど……

とか、言ってるうちに見つけたわよ。あの黒塗りの車めー。


上手に壁や地面を使いながら追跡して、上空から あ奴の前方に転がるように降りる。

あくまでも、降りたんだよ。転がっちゃいるけど、そうしないと道路を削っちゃうから。


すっくと立ちあがって、右手を広げて前に突き出す。

「とまれー!」

盛大なブレーキ音を響かせて黒塗りの車が止まると、助手席と運転席から

見るからにそれ系のごついのが二人。

「…ワレ!轢き〇されたいんかぁ!!」

肩を揺らしながら「あぁーん」と威嚇しながら迫ってくる。

(いやーん。怖いじゃないのぉー――とでも思うとか?)

私は精いっぱい口角を上げると、

「危なかったのでぇ、注意しに来ましたぁ」

とかわいく答えてあげる。


「なんや、その口の利き方は、なめとるんやったら――」

「なめとるんやったら、どうするんですかぁ?」

徹底的に挑発する。これだけ派手にやらかせば遠巻きだけど、

野次馬が人垣を作るのもあっという間。

大抵の人がスマホを構えて……多分動画だろうな。

(かわいく撮ってよ。)

「おら、姉ちゃん。そんな裸同然の恰好で恥ずかしいやろ。

 かわいがったるから、ちょっと来いやぁ!」

助手席側の男が右手を掴む。

運転席側の男は、にやにや笑いながらまるで、品定めをするように私を上から下まで

舐めまわすように見て来る。

「ほら、来いや。」男が腕を引くも私はピクリとも動かない。

二度三度と引くが、全く動かない私に業を煮やしたのか、

「なんやねん、おまえ!」

男の困惑した声が響く。


もう一方の男はその状況がつかめず、先の男に

「何しとんか、サッサといてまえ。」と声を荒げるが何の解決にもならない。

そのころになると遠くにパトカーのサイレンが聞こえ、

こちらに向かっているのが聞こえてくる。


車内の男たちの耳にも届いたのか、後部座席から姿を見せることもなく声が聞こえた。

「そいつはほっといて、サッサと出せ!」

今まで威勢の良かった男二人は、「へイッ」と返事をすると私から離れて車へと向かおうと

踵を返す。


「いやいや、私の話は終わってませんが……」

と、私の腕を握っていた男の腕を握り返す。あくまでもソフトにね。

そうしないと握りつぶしてしまうから……こんな細腕。

私は誰一人逃がしたくないので男を伴って……あぁ、まだこいつ気付いてないんね。

車に近づくと運転手が乗り込むのを待って、車のフロント下部に左手を添えた。

助手席に乗り込むはずだった男は急に私が止まったものだから引っ張られるように

体勢を崩すと私の足元に倒れて来たので、

「ごめんねー」と顎先を軽くはたく。


これがうまく脳震盪を起こすんだよ。よだれ垂らして、だらしなく寝ちゃったしね。

私がしゃがんだからだろうか、車が走り出そうとしたようで、

私の身体が押されるような感覚があった。

「あっぶない。 轢かれちゃうじゃない」

けど私、痛くも痒くもないんだよこれしきじゃ。

仕方がないのでフロントを少し持ち上げる。前輪が浮いたけど……


あれ?まだ動ける……


あ!そうか。普段軽しか乗ってないから、それに私の軽ってFF車だったから……つい。

こういう高級車ってFRだったかぁ――恥ずい。

少し顔が紅潮するのが分かる。

(手を離したら逃げちゃうよなぁ……どうしよう?)

運転席を前から覗き見ると運転手と目が合う。

静かに首を振ってみる。(無駄だよ)って分かるかな。

おまけにスマイル一つ。にっこり笑みを浮かべてあげると引き攣った顔が……

(そんな化け物見るみたいな顔して、失礼ね!)


ゆっくりと私の唇を読ませてあげる。

『車のエンジンを切って』

運転手は応じるところか更にアクセルを踏み込む。

(もう、危ないでしょ。)足元の男を脚ですこーしずらしてあげると、

もう一度だけ話しかける。

『止めて♡』

車内からは「早く出せ!」とか「何やってる!」とかの怒声ばっかりしか聞こえない。


(これは止めないわね)


どうやら先頭のパトカーが一つ先の角に達しそうなので長居は無用。

かと言ってねぇ……(……仕方ないわね。えいっ!)

空いた右手の拳でボンネットを叩く。

激しく唸っていたエンジン音がぴたりと止まると、あとには大きな穴がぽっかり。

(ごめんなさいね。止めてくれないから……)

持ち上げていた車体を静かに降ろすと、素早く車の陰に身を隠す。

丁度一つ先の角からパトカーが見えてきた。

「では、あとはお願いしまーす。」

そうつぶやくと、車の陰から勢い良く弾けるように上空に飛びあがった。


数台のスマホがその動きにかろうじてついてきていたようだが、

おそらくそこはきれいには映ってはいまい。



もう一つの現実ってわかってもらえました?

あー、分からない……はっきり言いにくいしね。

今回調子に乗ってやり過ぎたので当然この余波はやってきます。

特大の波としてね。ニュースになっちゃいました。(苦笑)

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