エピローグ
いよいよこの物語も最後です。長らくお付き合いありがとうございました。では長々と書くよりも最終章をどうぞ
後の片づけはあの男、清掃員に任せて、佳奈と水咲を保護する場所を確保する。
ワンボックスは倒したときに窓が割れてシート使えないのであきらめる。
(でもたぶんエンジンはかかるからエアコンは使えただろうけど……)
二台の黒塗りを見る。
(エンジンくり抜いちゃったからなぁ。シートは使えるけどエアコンがなぁ……)
外にいつまでも置いとけないのでセルシオに決めて二人を後部座席に座らせる。
(しっかし、酒臭い……。でも、これで一安心)
ふたりが穏やかに寝息を立てていることを確認すると最後の後始末に掛かる。
110と携帯でダイヤルをタッチする。
コール一回ですぐにつながった。
「事件ですか?事故ですか?」
スピーカーから流れる声は落ち着き払っており、私の興奮もいくぶんか収まる。
「えーと。事件です。」
「何がありましたか?」
「拉致誘拐の犯人を捕まえました。
あーひょっとすると人身売買犯もいるかもしれません。」
私は淡々と伝えた。
「……」
(……あれ?)
「もしもーし。聞こえてますか?」
「あ、聞こえております。……失礼しました。どうも聞き間違えがあったようですので、
恐れ入りますが、ゆっくりともう一度お願いできますか。」
「はい。拉致誘拐と人身売買の犯人を捕まえました。」
なるべく感情を押し殺して正確に伝えることに専念する。
「……お嬢さん。いたずら電話は――」
「え、……じゃあ、いい。」
ピッ。電話を切って考える。
(なんで信じんかなぁ?でも、そうなると ……あ、そうだ)
119。再び携帯を取り出すと、今度は消防に電話を掛けた。
こちらもワンコールでつながる。(さすが、早いね。)
「こちら119番です。消防ですか?救急ですか?」
「救急です。2名います。急性アルコール中毒とあと怪我があるかもしれません。」
「わかりました。そちらの住所とお名前、目印等ありますか?」
(住所かぁ……どこだっけ、ここ?)
私は携帯のマイクを手でふさぎながら、片づけをしている男に声を掛ける。
「おい、清掃員!ここはどこだ?」自分でも馬鹿な質問と思ったよ。ここはどこって
「○○ふ頭、第〇番倉庫です。」(オーサンキュ)
「ここは○○ふ頭、第〇番倉庫です。」
「わかりました。すぐに救急車を向かわせます。患者の状況を――」
「あのー、ひょっとしたら事件かもしれないんで、警察にも言ってもらえます?」
「は、。わかりました。すぐに連絡を入れます。」
名前やら色々聞かれたけど、結局匿名……かたくなに拒んだよ。
……でも救急は来てくれる。
10分後
救急車はやってきて中の様子に驚いてたよ。それでも佳奈と水咲以外は診るなって、
半ば脅して……そうしないと、やばい状況の怪我人いると思うよ。
こっちの13人のうち何人かは多分重症、今来た救急隊員が救急車のお代わり
要請してたから。
命に重いも軽いもないときれいごとではわかってるけど、
こんな状況下で、私は絶対こっちの13人(あー清掃員もで14か。)は
佳奈や水咲と同じ天秤にさえのさせない。仮にふたりが何ともない
ただの飲み過ぎだとしても、こいつらの重症者より優先されるべきだ。
佳奈と水咲を先に収容させるわがままは通した。あとはこいつらの運次第だね。
「……あつめました」
清掃員が殊勝な態度で言ってくるけど、私は許さない。
「あ!そうだ。一発多く殴るやつ」
私は立ち上がると並べられた犯罪者の顔を一人ずつ確認していく。
逃げそうな奴がいたらまず足をへし折る必要があるからね。
(こいつだ。そして、あいつ)
顔を引っぱたいてやった。一発、二発往復だ。
お前たちのせいで地獄を見てる女性がいるかもしれない。
それを思うと……一発ずつ追加した。
倉庫の外、遠くにサイレンの音が聞こえてくる。ようやく警察が来たようだが、まだ一台
近くの交番か何かか?
「ほら、清掃員手を後ろに回せ。」
私は清掃員を後ろ手に縛ると、蹴り倒した。怪我をするほどの強さはないが、
こいつも犯罪者の立派な仲間だ。優遇など無い。
開けておいた扉からパトカーが一台入ってくる。
私はそれを認めると梁に跳びあがった。警察とは言え厄介なことには変わりない。
理由がどうであれ、彼らは法に従って動かざるを得ないのであって、今の私には
それが不都合なだけ、
すっかり陽の落ちた夜の倉庫出漆黒の闇に近いものがある。
パトカーの前照灯に照らされて浮かぶ犯罪者とその遺留物。
二人組の警官は一人が無線に取り付き、一人が懐中電灯であちこちと照らしながら、
状況を確認して回っている。
「おまわりさん。聞いて下さい。」
予想に反して、私の声は倉庫内に反響した。
反響した声は警官が私の居場所を特定しにくい状況にした。
「誰か!?」警官の誰何する声が響くが、私は気にせず続けた。
「そこに横たわっているのは、○○区の○○という飲食店から女性2名を拉致監禁し、
あとで合流した者たちと何やら企んでおりました。
しっかりと経緯や背後関係などもしっかりと捜査してください。」
「君は?」警官は周囲を見回すが私が見つかるわけがない。
「B-FLYER……アルファベット2番目のBに飛ぶFLYのER……飛ぶ者です。」
「それはグループか何かか?」
「いいえ、私は一人です。」
「一人と言うことは、協力者はいないのか?君が一人でB-FLIERということか?」
「その通りです。協力者も居ません。私がB-FLYER」
「姿を見て話すことはできないのか?」
「……では、シルエットだけ。上を見てください。」
「……上?」警官は上へと照明を向ける。
「もう少し、右。梁に沿って……」
警官の持つサーチライトが、B-FLYERの後姿を照らし出す。
「もしや、君は巷で有名な“ナゾガ”かね。」
「ハァー、ちがいます!B-FLYERです。お間違えの無いように」B-FLYERは続ける。
「とにかく、約束してください。二度とこんなことが起きないようしっかりと捜査を」
「本部から間もなく指揮車が到着です。」無線を担当していた一方の警官が報告する。
「聞いた通りだ。まもなく上が出張ってくる。降りてきて話せないか」
「厄介なのはイヤなんで。」
そう言い残すとB-FLYERは天井付近の穴からするりと抜けて庫外へと出て行った。
「おい!きみー」
B-FLYERは全力でビアホールへと向かっていた。
(まだ居ると良いんだけど……)
美羽に声を掛けてきた男性。あの時ひどいことを言ったと、ずっと気になっていた。
あの時からすでに2時間は経っている。
見慣れた風景の中を、まさに飛ぶように舞い戻ったB-FLYERは件のビルの屋上に到着した。
あの男性がまだいるなら、出てくるまで待とう。そう考えていた。
屋上から身を乗り出して通りを隈なく探しながら……あのワンボックスが走っていった
小さな交差点の隅にある小さなベンチに腰かけて車が走り去った方角をじっと見つめながら。
B-FLYERは跳ねた屋上から彼の座るベンチの後ろへと、
音もなく着地したB-FLYERはマスクを外すと彼の後ろに忍ぶと口を開く。
「振り向かないで。今日はごめんなさい。……そして勇気をありがとう。
ふたりは、無事です……。」
言い終えると、しばしの間をあけたのち再びマスクを着けると小さく息を吐いた。
「では、ごきげんよう」
その言葉とともにB-FLYERは大きく跳躍した。
彼がその気配を察して振り向いたときにはB-FLYERの影はなかった。
完
最後までお読みいただきありがとうございました。
前よりも良い作品をと思い日夜取り組んでおりますがまだまだ若輩者で、文章も粗忽です。
そんな中でのこの作品是非皆様の感想を頂ければと切に願っております。
重ねて泳に頂きありがとうございました。
また、別の作品も連載中でございますので是非そちらにも目を通していただければと考えております。




