第502話 ギジエからの宝島通信配信
『やぁ、久しぶりだね。ススリア』
「久しぶり……じゃないですよね? ギジエさん」
通信してきた相手、ギジエ・ウミヅリ王子にそう応える。
ギジエ・ウミヅリ王子は以前、養殖担当のイプシロンちゃんを製造るのにあたってお声がけした相手である。ウミヅリ王国の地理と魚への知識量の深さから『お魚ハート・いっちゃん』で活動していた彼と交流を取って、養殖担当のイプシロンちゃんの下地作りに多大なる貢献をいただいた。
もっとも、彼は彼なりの打算があり、王国の継承権問題解決のために、私はかなり迷惑をかけられたと言っても良い。リイル王女を王様にするために、私はアデリィちゃんを始めとした人達に鉄砲魚拳を伝授したのは良い思い出である。そのリイル王女の対抗馬であり、鉄砲魚拳のモデルとなっているサビキさんがうちの近くの道場に居たりするんだけれども、その話は今ではどうでも良いでしょう。
そんな縁もあるギジエ王子は、けっこうな頻度で通信する間柄である。つい5日前も、この間ウミヅリ国の女王様として就任したリイル王女への就任祝いを、連名で出して欲しいと言われて、通信したばかりである。久しぶり、と言えるくらい、そんなに長い間話してはいない関係と言えるでしょう。
「(うちはけっこうな頻度で、交流して来る人が多いんだよなぁ~。ギジエ王子しかり、シュンカトウ共和国のドラスト商会しかり、あとカンロ神様しかり)」
カンロ神様に至っては、つい3日ほど前に、お酒の出来を見るためと、強制的に試飲会を開催させられて、非常に参った。あの神様、暇なのかな?
――閑話休題。神様が暇かどうかはともかく、今はこのギジエ王子がなんで声掛けしてきたのかを、聞いておこう。
「それで、ギジエ王子? いきなり通信って、何かあったんでしょうか?」
『あぁ。実は困った事件があって、そちらにも解決の糸口を見つけるのを手伝って欲しいのだ』
「……そういうのは、そちらの憲兵さんの仕事なのでは?」
あるいは、騎士さんの仕事でしょう。
大方、女王様にして妹であるリイル王女様が、なんらかの事件に困っていると知ったギジエ王子が、兄らしいところを見せつけるため、解決するのを手伝って欲しいといったところでしょうか?
私ではなくて、自国の騎士さんや憲兵さんに話しかければ良いのに。王様ではないにしろ、ギジエ王子は現女王様の兄君――私なんかよりもずっと、親身になって話を聞いてくれる人は多いでしょうに。
『あぁ。本来であれば、憲兵――うちの騎士団精鋭達が解決すべき問題だ。そして、うちの妹は優秀な女王様だから、既にその者達を派遣して、事態解決に打ち出しました』
「それなら、その人達が解決するまで待てば良い話なのでは?」
『あぁ。精鋭達を、妹は送り込んだ。そして、失敗した』
失敗……?
『いま、うちの王国が抱えている問題――それが、宝島問題です』
「宝島?」
ギジエ王子によれば、ウミヅリ王国の南に、無人島があるらしい。名前はなくて、ただ単にそこにあるだけのごくごく普通の島であった。
しかし、つい数日前から、その島に辿り着いた者が、急激に力をつけて帰ってくるようになった。
力をつけて、強者となって帰って来る。
行くだけで強くなる夢の島。だからこそ、宝島だと言われている。
「強くなっているのならば、別に問題ないのでは?」
『そう。強くなるだけならそれで良いんです。ただ、明らかに行った人と帰った人の数が合わない』
「向こうから、帰って来ない事?」
例えば、無人島に行こうとしたら、海竜に巻き込まれてしまって死んでしまった。そういう事なら、分からない話でもないんだけれども?
『――いや、増えてるんだ』
……はい?
『力を得られるという噂を信じて、宝島に向かった民間人が128人。
その宝島の調査に向かった精鋭の騎士達が、56人。
そして、力を得て帰って来た人間が――293人』
それ……どう考えても、数が合わなくない?
しかも、単純に2倍という訳でもないし……。
『帰って来る人間が、明らかに少ない。それならば、無人島に行く人間を『危険』だからと言う理由で、留めれば良い。
しかしながら、帰って来る人数が全員無事なら、そういう訳にはいかない。たとえ、人数が明らかに合わなくて、怪しいとしても、だ。
そして、どの人間が増えたのか、それすら分からないのだ』
と言う訳で、あまりにも怪しげな無人島。
精鋭達も無事、新たな力を持ち帰って強くなっているし、しかしながらその精鋭達の中に増えた偽者が居る可能性がある。
だからこそ、ウミヅリ王国の住人には頼れない。これ以上、偽者が出来る可能性を減らしたいから。
信頼できる、他国の人間。
その条件に当てはまる人間と言うのが、どうやら私という話なのである。
『どうか、この無人島事件。無事、解決するために力を貸してくれないか?』
そして、サビキ王子とリイル王女がこの無人島で、さらに気になる事があるといった。
なんと、その無人島で――【激突】と書かれた仮面が落ちているのを見たんだとか。
え? また五本槍案件ですか?
次の、魔王ユギーの五本槍は
ウミヅリ王国の無人島に現れた!!
完全に、五本槍担当の人間として認識されてますね
錬金術師のススリアさんは(;^ω^)




