第495話 容疑者VS.錬金術師配信(2)
――という訳で。
「あなたは罪人ではない事ははっきりしましたので、私の方からデルタちゃんに伝えておきましょう」
「あっ、ありあとごじゃいまちゅ!!」
「噛みすぎ。噛みすぎ」
噛みすぎて、もはや何を言っているのか、さっぱり分からない段階になっているじゃないか。もう少しだけ、リラックス。リラックスして欲しい。
「(でもまぁ、『うじうじした自分を捨てて、新しい自分になりたい』という理由で、悪魔と契約するとはね……)」
別に悪いというつもりはない。実際私は、前の世界の記憶を継承している人間、一言で言ってしまえば『転生者』という人間だ。前の世界の私がどういう性格で、どういう感じで死んだのかと言うのは、靄がかかったように思い出す事は出来ない。だがしかし、この世界のような悠々自適な生活を送れていたかと言うと、そうではないだろうなと感じる。私は転生前よりも、転生後の今の自分の方が遥かに幸せだろうと思っている。
そんな、新しい自分になって幸せになった代表みたいな私が、『そんな事で悪魔と契約するのか……』だなんて言うべきではないのでしょう。
ただ勿体ないと思うのは、彼女の能力が高い事だ。
許してもらう条件の1つとして、ジュエリーには夜光石の加工技術を私に教えて貰う事にしていた。方法についてはまだ教わっていないのだが、彼女の能力が高いと思う理由は、夜光石がつい最近この世界に出来た事だ。
彼女が快感のブラッドと契約したのは、今から数百年前。その頃には夜光石はなかった、だからこそ面白い鉱物があったのでちょっと加工して見たと、彼女はそう私に説明している。
私が夜光石を加工できないのは、モース硬度が28もあるから。そう、この鉱石はぶっちぎりで硬い。あまりにも硬すぎるのだ。
彼女が生きていた過去の時代にも、恐らくこの硬度の半分の硬さの鉱石もなかったはず。
そう、その時代の人々にとっても、この硬さは想定外。それなのに彼女は初見で、この硬度の鉱物を加工する事が出来た。その事を、素直に賞賛したい。
「(そんな凄い事をしたというのに、彼女は『え? それを話すだけで、許されるだなんてラッキー』程度にしか思ってないのが、少しムカつきますが)」
こちとら、ルターちゃんと一生懸命頑張って、金属性魔法を習得しようとしている最中、「こんな簡単な事、すぐにレクチャーしますよ」的な態度は、少し腹が立つような。
「えっと……この加工には、魔法鍛冶を使っておりまして」
「ほうほう。魔法鍛冶」
しかしながら、少し腹が立つとしても、それを受け入れるのが大人と言う者。もとより、私が目指すスローライフに、怒りや嫉妬などの負の感情は持つべきではないからね。
余裕、余裕♪ 心のゆとりこそ、スローライフに大切なもの、ってね♪
「魔法鍛冶というのは、自然界の炎ではなく、魔法で生み出した炎を使うんです。普通に炎属性の炎を作るだけではなく、水属性、雷属性、光属性――」
ジュエリーはそう言いながら、赤い炎の塊の横に、青い炎、黄色い炎、白い炎、黒い炎など、それぞれ別属性の炎を作り出していた。
炎色反応――炎の中に特定の金属を入れる事で、炎の色を変えるというあの反応に近いけれども、実際はそうじゃない。
これらは別属性のモノを、炎と言う形状に変えたモノだ。
「(一見するとそれだけの事だが、これはかなり難しいぞ)」
魔法と言うのは、イメージが重要だ。
当然、前世の知識がある私にとっては、炎とは真っ赤に燃え、酸素を使ってモノを燃やす存在。そういうモノだと、認識している。そのイメージ力の強さが、魔法の強さに影響してくるのだ。
しかしこれは、違う。
本来は炎ではない魔法属性を、魔法属性はそのままに、炎という形にて押し固めている。
「(あの青い炎、私の知識的には炎が高温になると赤から青色へと変化する。そういう知識があるのだが、あれは違う。水そのものが炎となったようなモノだ)」
私の目の前で、炎に関する常識が崩れる中、ジュエリーはそんな事を気にせずに作業を続ける。
「――ですので、この夜光石はまず闇属性の炎である程度エネルギーを与えて飽和状態にした後、水属性の炎にて曲げることにより、最終的に雷属性の炎にて形を整える。そういう訳です」
「なるほど。実に参考になりました」
参考にはなった。こうすれば、夜光石を加工できるという、そういう知見を得る事が出来た。
しかしながら、それとは別に、そんな炎をどうやって作ればいいのだろう。そういう疑問が私の頭の中で、ふわふわと浮かんでくるのであった。
(※)魔法鍛冶
武器化人間【愛なき結婚】こと、ジュエリーが使う技術。彼女曰く、錬金術に近しい存在
普通の鍛冶のように炉などを使用せず、魔法で生み出した特別な炎を使って鍛冶を行ったりする。水属性の炎を使って濡らしながら燃やしたり、あるいは雷属性の炎を使って痺れさせながら燃やしたりと、様々な属性を炎の形状変化する事によって、ありとあらゆる金属や鉱物を変形したりする技法
確認した錬金術師ススリア曰く、「あれは真似できない。少なくとも常識を全て取っ払う必要がある」と匙を投げていた
魔法鍛冶は、
炎に「水属性」、「雷属性」など
別の魔法属性を付与して、鍛冶をする!!
常識が、前世の知識があるススリアにとっては
なかなか難しいのです
前世の知識がある事が、足枷となる
前世の知識がある事がデメリットとして働く、大変珍しい事ではありますが、
それが魔法鍛冶です!(^^)!




