第494話 容疑者VS.錬金術師配信(1)
「錬金術師ススリア様。容疑者ジュエリーの護送、ただいま完了いたしました」
「ご苦労様。後はこちらに任せておいて」
しっかり届けてくれた憲兵……もとい、シュンカトウ騎士団の道場の兵士にお声がけをしておく。連れて来てくれた兵士さんは「また何かありましたら、ぜひよろしくお願いしますね」とそう言って帰って行った。残されたのは、その兵士さんが連れて来たデルタちゃんを傀儡と変えた容疑者、ジュエリーであった。
「うぅ……あっ、あのぉ……お手柔らかにお願いします、ね?」
彼女は心底怯えた様子にて、私にそう提案していた。
「わっ、私が何かの事件の容疑者、とそう聞きましたが、それは本当……なのでしょうか?」
彼女が、デルタちゃんを襲った犯人……正直、今でも信じられない。まさかこの、人畜無害そうな蛇獣人の女性が、うちのデルタちゃんを倒し、あまつさえ傀儡にまでしたてあげた狡猾な犯人だなんて。
一応、魔道具【アルファ・ゴーレムサポートシステム】のデルタちゃんの記録から、デルタちゃんに何があったのかはきちんと把握している。きちんと映像で確認して、彼女――ジュエリーが犯人である事は明白だ。
そう分かっているのに、どうしても彼女の様子を見ていると、そこまで邪悪には見えないんだよなぁ……。
「(映像から、彼女が犯人である事は疑いようのない事実。だけれども、こちらに非がなかったといえば、それは微妙な所ではあるからね)」
映像には、きちんと音声が残されていた。
そう、デルタちゃんが「待て」と言っている音声は残されていたのだけれども、「夜光石の加工を教えて欲しい」というような内容に繋がる音声は残されてはいなかった。映像から見るに、彼女は何かに怯えている様子であった。
その怯えていた原因が、逃げる彼女の心理状にのみ存在する何かなのか、あるいは武器を持って追いかけて来る物騒な女性かどうかは、映像からは分からなかった。
だからこそ、ジュエリーときちんと話し合いたいと思ったのだ。なんでデルタちゃんを攻撃したのか、そしてどうやって夜光石を加工したのか。
「まずは、お互い自己紹介と行こうじゃないか。私の名前はススリア、この街で錬金術師をしている」
「えっと……知ってるとは存じますが、ジュエリーです。一応、魔法鍛冶師をやってます」
その辺の事は聞いている。
私達が傀儡デルタちゃんと夜光石ゴーレムと戦っている時に、この女はこの街イスウッドにやって来て、移民の登録をした。そして住民としての住居を貰い、そして魔法鍛冶師として頑張って行きたいと語っていた事も、領主のノワルーナ様との伝手がある私はきちんと把握している。
「(まぁ、魔法鍛冶師がなんなのかは分からないけど)」
ともかく、彼女と話し合って、どうしてデルタちゃんを倒そうとしたのか。その事をはっきりと聞いておかないと。
「1つ、尋ねたい事がある」
「はっ、はひっ! なんなると、どうじょ!」
……噛んだな。緊張しているのかな?
「君は、犯罪者か何かなのか? もし私のデルタちゃんが追手と勘違いしたのなら、襲ったのは不問と帰すのだけど」
「――っ?!」
ビクビクっと、ジュエリーは肩を震わせていた。
多分、素人でも分かるくらい、分かりやすい自白であった。
「ちなみにだけど、勘で君を犯人だと揺さぶっていると思わないで欲しい。こちらは明確な証拠、君ことジュエリーがデルタちゃんを襲っている映像があります」
パチンっと私が指を鳴らすと、私とジュエリーの間に立体映像が映り始める。そこに映し出されているのは、魔道具【アルファ・ゴーレムサポートシステム】によって抜き出した映像。ジュエリーがデルタちゃんを襲っている、れっきとした証拠映像である。
――もう、罪からは逃げられないと、私はそうジュエリーに告げていた。
「えっと、その……犯罪者という訳ではなくて、ですねぇ……」
「大丈夫。夜光石の加工、それと犯罪者でない事を教えてくれたのならば、私は罪に問う事はないですよ」
私は、あらかじめ用意しておいた契約書を見せる。
契約書の中には『犯罪者でないと証明できるのならば、夜光石の加工技術を教える代わりに、あらゆる罪を不問とする』と書かれていた。ジュエリーはその契約書を穴が開く程見つめて、なんの異常もない事を確認して、
「その映像を見ているという事は、既にご存じなのでしょうね……。実は私、魔王ユギーの五本槍である、快感のブラッドと契約した武器化人間でして――」
そう言って、自分が武器化人間であるという事情を、話し始めた。
快感のブラッドと契約して力を得て、だけれども自由を与えられずにずっと封印されていた事。そして、つい先日封印が解けたから、また封印されないように逃げ惑っていた。その最中に、デルタちゃんが襲い掛かって来たために、追手だと判断して反抗した。その結果が、デルタちゃんに襲い掛かるという事になったのであった。
……まぁ、とりあえず。どちらも悪い、みたいな所で落としどころとしておくべき、かな?
勘違いしたジュエリーも悪いけど、
そもそも武器を持って追いかけていたデルタちゃんの対応も
どうかとは思います
これは、そういうお話でした(;^ω^)




