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冒険者達の謎

 その後も色々とユースから言われたが、それらを要約すると「ユウはヤバいよ」という事である。


 ユースは終始ウィルに対して忠告めいた言い回しをしていたのだが、実の所はウィルではなくユウに対して遠回しに「君が人の、それも呪い子の面倒なんて見れるわけがないでしょ?」と叱っているのだろう、という解釈をレッドが教えてくれた。


 そしてその肝心のユウであるが、少しユースの小言を気にしている素振りは見せたものの、ついぞ自分の意向を曲げる事は無かった。


 結局、大分日が高くなってから「お腹すいたからそろそろ食事の準備をしない?」というユウの発言で、ユースは「……そうだね」と疲れ切った様子で頷き、話は終わった。


「さっきも言ったように君には食料を分けてあげられないから、自分で何とかしてくれ」

「分かってる」

「そんなに気に病むくらいなら少しくらい分けても良いんじゃない?」


 状況的にはウィルの方が厳しいはずなのにユースの方が険しい表情をしているとユウが指摘すると、ユースは首を横に振った。


「駄目だ。既にオヤジさんの反対を押し切っているんだ。これ以上僕が君達に加担するのは良くない」


 自分はこのパーティのリーダーだから、できるだけ物事をパーティにとっての損得で判断して、メンバーに対して公平を維持しないといけないとユースは言った。


「ウィル君が目に見えて有用であると示さない限り、彼にパーティの物資を使うわけにはいかない」

「真面目だなあ……もう少し自分に素直になって良いと思うけど?」

「自己中心性の塊みたいな君にだけは言われたくないよ」


 もう少しだけで良いから折れる事を覚えてくれと言われ、ユウは「はーい」とどう考えても覚えるつもり気が無さそうな調子の良さで返事をした。


 こんな茶番にいつまでも付き合っていられない、と感じたウィルは食料を確保しようと歩き出そうとして、


「――ぐぇっ!?」

「ちょっと、ちょっと。勝手に行かないでくれよ」


 ユウに後ろ髪を引っ掴まれて首がガクンとなりながら止められる。


「何するんだ!?」

「いやだから、勝手に行かないでって」


 どうやらウィルの食料調達についてくる気らしい。


「ほら、呪い子って普段どんなものを食べているか気になるし、もし魔獣とかと出くわした時にどうするつもりなのかなって」

「……それはつまり、お前が言う所の研究って奴の為か?」


 そう聞くと「他にも理由があるけどね」と頷いた。


「困った時に助けるよって約束したからね。狩りをするにしてもその傷じゃ大変でしょ?」


 と、包帯でグルグル巻きにされたウィルの肩に視線を向ける。


「いざという時に近くにいなきゃ助けてあげられるか分からないし、それにこのままどこかに姿を晦ませられても困るし」


 要するに、ウィルが逃亡しないように見張りたいのだろう。

 実際、隙があれば、とウィルはまだそのつもりが無くもないので、その判断は間違っていない。


「……勝手にしてくれ」

「うん。あ、ユースさん。ウィル君の食料調達できたらここに戻ってくるからそれまでここで待っててね」

「……全員単独行動とか何のためにパーティ組んだのか分かんなくなるんだけど? まあ、オヤジさんも待たなきゃいけないし、君にダメって言ってもどうせ無駄だからね……」


 さっさと行って早く戻って来てくれと、渋々ながらも留守番を承諾したユースを尻目に、ウィルとユウもまた森の中へ分け入った。




『なあウィル気付いているか?』


 とりあえずいつも通り獣の気配を探りながら移動していると、レッドが声を掛けてきた。


(何が?)

『あのユウって子。ヤバいぞ』


 やけに真剣そうなレッドの警告に、今更何をとウィルは呆れた。


(そんなこととっくに気付いているよ……あのユースって人にも散々教えられただろ?)

『違う。その事じゃない。昨日もだったけど、さっき髪掴まれた時もお前あの子の不意打ちを全く防げてないんだぞ』


 レッドの指摘に、ウィルは足を止めてしまう。


「どうしたんだい?」

「……いや、何でもない」

「? そう?」


 すぐに歩みを再開すると、ユウは少し怪訝そうにしたものの、特に気にせずまたウィルの後ろを追ってくる。


(どういうことなの?)


 言われて気付いたが、オークやゴブリンの時みたいな嫌な感じの予兆はなく、ユウに実害(と、言っても命に関わるものでは無かったが)を与えられるまで全く気づけなかった。


(命の危機レベルじゃないと感じられないとか?)

『いや、たしかに危険度によって多少は鬼の子が感じる危機感に強弱の差はあるが、お前が避けたい事だと思うことは大体察知できるはずだ』


 特にさっきみたいに直接触れられるような場合は、ウィルならすぐに気付けたはずだという。


『考えられる事としては、ウィルがあの子から害意を全く感じる事ができていないんじゃないかと思う』

(害意?)

『ああ。そうとしか考えられない』


 害意とはそのままの意味で、生物が他の個体に向ける危害を与えようとする意思だという。


(そんなもの本当に感じられるの?)

『感じられる。いや、正直、害意ってなんだと聞かれるとオイラもよく分かっていないんだが、他者からの害意としか言い様が無いものを察知して危険を回避した鬼の子は何人も覚えがある』


 理屈は不明だが、経験から言えばソレはたしかに存在しているし、鬼の子なら知覚は可能だという。


『害意を全く持たずにあんな言動をしているのか、それとも意識的に害意を悟らせない術を使っているのか……それも分からん』


 天然でアレならやはり頭が痛くなるし、意図して行っているなら只者ではないので警戒は必須だろう。


(どっちにしろ面倒だな……あのオヤジさんとかいうのも厄介そうだし)


 完全に不意打ちには成功していたはずだったのに、どういう訳か対応されて逆に殺されかけた。


 そんなとんでもない奴が自分を目の敵にしているのにもかかわらず、このままでは暫く行動を共にしなければいけなくなりそうで、たまったものではない。


 しかし、このオヤジさんに関してレッドは意外な事を言った。


『あのおっさんなぁ……たしかに厄介っぽいけど、完全に敵と断定するにはちょっと早計な気がする』

(はあ? あんなに俺を殺せ殺せ言ってる奴が敵じゃないはず無いだろ?)


 先程、レッドはウィルなら危険を察知できるはずだと言ったばかりだ。何故かユウには全く通用していないものの、オヤジさんからはビリビリと嫌な気配がずっと出ていた。


 それこそ、命の危機を感じる程に。


『それはそうだが……なんというか、ウィルを殺そうって言動をするたびに、ちょっと辛そうにしている気がするんよね。あのおっさん』

(そんな表情してたか……?)


 ウィルはまだその辺は経験不足だなとレッドは苦笑しつつ、あとおっさんが呪い子を疎ましく思っているのは事実だと思うが、それも何かワケがあるんじゃないかとも言った。


(ワケ? って例えば?)

『さてな。どうも昔に何かあったっぽいが……分からん』

(……さっきから分からないしか言ってないか?)

『そりゃそうだろ? 何せあの冒険者達とは会ったばかりだからな。ただ、逆に言えば会ったばかりなのに妙に気に掛かる事が多い、ワケありっぽい奴ばっかり集まったパーティなのは確かだ』


 ワケありっぽい奴ばっかり、というレッドの言い方にウィルは引っかかりを覚える。


(あのユースって人もなんか気になる事があるのか? 俺からすると一番マシに見えるけど……?)


 まだ若いが、言動を見る限り好き勝手するユウを諫めたり、暴走しそうなオヤジさんを止めたり、ウィルに対しても一線を引いてはいるがそれほど酷い言動を取っておらず、あの三人の中では唯一ウィルが好感を持てそうな青年だ。


 彼にも何か気になる事があるのかと訊ねると、レッドは『あの子は一番分かりやすいだろ』と答えた。


『わざわざ男のフリして冒険者なんてヤクザ稼業するくらいだ。アレでワケありじゃないはずがないだろ』

この中に女がいる!(なんだってー!?)


いや、まあ、知ってた。って感想の方がほとんどでしょうね。

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