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はちゃめちゃな異世界帰還〜実の姉が迎えに来たので本来の世界へ戻ります〜 【旧:Reminiszenz】  作者: 龍運
第3章:国外逃亡編

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第57話:追っ手到来

 ケントは巨大な地下空間を見下ろしながら、小さく呟いた。

「……下まで行くよ」

(風系統初級飛行魔法・ウィンドクッション)

 柔らかな風が全員の身体を包み込見始めた。

「うわっ!」

「体が軽くなりましたわ……!」

「飛んでる!?」

「すごーい!」

 四匹の子供たちも驚く中、一行はゆっくりと巨大空間の底へ降りていき、

「お母さん!」

「助けに来たよ!」

「すごく強い人たちを連れてきたの!」

「もう大丈夫だから!」

 四匹は涙を浮かべながら巨大な神獣へ駆け寄ったが、親の獣は目を閉じたまま地に伏して静かに言った。

『……来てしまったか』

 その声は穏やかで優しく、それでいてどこか諦めを含んでいた。

『だが、これは単純な病ではないからもう、確実に助からぬ』

「そんな!」

「嫌だ!」

「助かるよ!」

「きっと!」

 泣き叫ぶ子供たちだが、獣は静かに言った。

『寿命もあるが……原因はそれだけではない。もともとは、人の仕業だ』

「!」

 その言葉を聞いた瞬間、ケントたち4人は目を見開いたのだった。

『ニ百年近く前……ある二人が死んだ。その途端、それまで我を恐れながらも手出しをしなかった人間たちが、我をこの鎖で繋ぎ止めた』

 獣の巨大な翼が微かに動いた。

『そして定期的に血を抜き……何かを我の体へ注入していた。その時から少しずつ……少しずつ体が蝕まれていったのだ』

 そのことを聞いた四匹の子供たちの瞳に怒りが宿りはじめた。

「そんな奴ら!」

「許せない!」

「ひどい!」

「人間なんて!」

 だが、巨獣は優しく微笑んでいて、

『ならぬ』

「!」

『それをした者たちがいたからといって、人全体が悪いわけではない。お主らは、無条件に人を憎むようになってはならぬ。恨みは新たな恨みを生むだけだ。優しい者もや良き者もおる。だから……人という種そのものを嫌うことだけはしてはならぬ』

 四匹は涙を流しながら俯くのだった。

「でも……!」

「悔しいよ!」

「お母さんをこんな目に……!」

「許せない……!」

『それでも、だ』

 巨獣は弱々しくも優しい声で続けた。

『憎しみだけを抱いて生きるのは、あまりにも寂しい。どうか、お主らは幸せになっておくれ……』

 その慈愛に満ちた声を聞きながら、ケントたち四人は言葉を失っていた。

 ケントは傷だらけの神獣を見上げながら、震える声で問いかけた。

「……ある二人って、誰なんだ?」

 すると、それまで閉じていた神獣の瞳がゆっくりと開かれた。

『……む?』

 巨獣の穏やかな瞳が、まっすぐケントを見つめた。

『お主……』

 そして、どこか懐かしむように目を細めて、

『お主は……あの二人の子か?』

「え?」

 と言ったが、ケントは突然の言葉に目を丸くしたのだった。

『そうか……。なら……お主に任せられるな』

「待って!あの二人って誰なんだ!?俺の両親を知ってるのか!?答えてくれ!」

 だが、神獣は優しく微笑んだかと思うと

『……すまぬな、子どもたちを……頼む』「待ってくれ!まだ答えを聞いてない!」

 巨獣の瞳はゆっくりと閉じられていき、

『……ありがとう』

 その言葉を最後に巨大な獣は静かに息を引き取った。

「……っ!」

 それを見たケントは思わず叫んだ。

「ふざけるな!人の質問に答えずに、勝手に任せるだけ任せて!」

 ケントの叫びが広い地下空間に響き渡った一方、四匹の子どもたちは涙を流しながらも、その場から離れようとしていた。

「……行こう」

「うん……」

「迷惑かけちゃうし……」

「もう、いなくなろう……」

 その時だった。

「どこ行くの」

 ケントの声に、四匹の足が止まった。

「え……?」

「ぼくたちは……」

「きっとあなたたちの迷惑になるから……」「あなたたちにいっぱい迷惑をかけるはずだから……今から離れます」

 四匹は涙を堪えながらそう言ったが、ケントは静かに首を横に振った。

「確かに、君たちの親のお願いもある。でも、それ関係なしに俺は君たちだけにするつもりはない。だから迷惑がかかるとか考えるないでいいから」

「え……?」

 四匹は信じられないものを見るようにケントを見上げた。

「一人になる必要なんてない。これからどうするかは、一緒に考えればいいんだから、勝手にいなくならないの」

 その瞬間。

「うわぁぁぁん!」

「ごめんなさいぃ!」

「お母さん……!」

「怖かったよぉ!」

 四匹は両目いっぱいに涙を浮かべながら、一斉にケントの胸へ飛び込んだ。

「わっ!」

 小さな体を必死に抱きつかせて泣く四匹にケントは少し驚いたような顔をした後、困ったように笑ってその頭を優しく撫でる。

「……泣きすぎ」

 その光景を見ていたフローラは目元を潤ませ、リリィも鼻をすすっていた。

「うぅ……よかったぁ……」

 隼人は小さく笑う。

「まったく、お前はそういうところだよな」 しかしその時、

「……せっかくの材料が死んでしまったではないか」

 不意に響いた不気味な声に、全員が振り返るといつの間にか、一人の男がそこに立っていた。

 男は死んだ神獣を見上げながら、不快な笑みを浮かべていた。

「百年近く使えたというのに。まったく、最後まで役に立たないものだ」

「あなた……!」

 男が発した言葉にリリィが怒りに満ちた目で男を睨みつけた。

「あんた誰なの!?あの子たちの悲しむ顔が見えないの!?」

 しかし、次の瞬間にはリリィは突然力を失い、その場に崩れ落ちた。

「……え?」

「リリィさん!?」

 フローラの顔から血の気が引いていき、隼人が慌てて駆け寄った。

 ケントも咄嗟に回復魔法を発動しようとしたが、男は愉快そうに笑った。

「無駄だ!それは回復阻害の効果を持つ、私のオリジナル魔術だ。私に楯突くからこうなるのだよ」

 そう言って男は気味の悪い笑みを浮かべて、視線をケントへ向けた。

「さて、そちらにいる指名手配されている雪月ケントの身柄を頂こうか」

 しかし、その言葉はケントの耳には届いておらず、頭の中にあるのは、リリィが、一瞬で命を奪われたという事実だけだった。

 ケントの肩が小さく震えて、震える声で呟いた。

「……隼人君、フローラさん。これを使って、宿に戻って」

 そう言って、一つの魔道具を差し出した。 ケントの顔を見た隼人は、一瞬で察した。「……分かった」

「ケント……!」

 隼人は四匹を抱え、フローラの手を掴む。「行くぞ!」

 魔道具が光を放ち、一行の姿が消えた。

 それを見た男は、また気味の悪い笑みを浮かべた。

「ほう?自己犠牲で仲間を助けたのですか?お優しいですねぇ、実に美しい」

 だが、ケントは何も答えず俯いたまま、ただ静かに立っていたのだった。

「ショックで声も出ませんか?まあ、仕方ありませんねぇ。では大人しく――」

 男が言葉を続けようとした、その時だった。

 ゾッ

 そんな言いようのない悪寒が男の背筋に走った。

「……何?」

 視線を戻した瞬間、そこにいたはずのケントの姿が消えていた。

 そして次の瞬間には男の眼前、あと一歩で触れられる距離にまで、ケントが迫っていた。

「なっ――!?」

 男は反射的に横へ飛び退いた。

 次の瞬間。

 ドゴォォォン!!

 ケントの拳が、男のいた場所の壁に叩き込まれた。

 その威力は凄まじく、白い石壁は大きく陥没し、蜘蛛の巣状の亀裂が広がった。

「……っ!?」

 避けたはずだったのに、拳が生み出した衝撃と風圧だけで男の頬の皮膚が切り裂かれていた。

「ば、馬鹿な……!」

 しかし、ケントは一切止まらず、左手に握った刀を逆手に持ち替えて、右へ回り込んだ男へ向けて、そのまま刀による攻撃を放った。

「ひっ……!」

 刀身が男の首へ届こうとしたその瞬間、 ガキィィィン!!

 金属同士がぶつかる轟音が響き、ケントの刀は何かに阻まれていた。

「……!」

 いつの間に現れたのか、そこには一人の男が立っていた。

 全身を重厚な騎士鎧で包み、巨大な大剣でケントの一撃を受け止めていた。

 ケントの斬撃によって床が砕け、周囲に衝撃波が走っても、その男は一歩も引かなかった。

 先程まで怯えていた男は安堵したように笑っていた。

「はは……助かりましたよ」

「まったく、危ないではありませんか」

 そして、騎士は静かに大剣を構える。

「アステリア王国の国王親衛騎士隊団長の名において雪月ケント、貴様を拘束する」

 ケントは何も言わなかったが、静かに二人から距離を取り、

(・火系統上級攻撃魔法・龍炎咬

 ・雷系統上級攻撃魔法・雷鳥翔、

 ・水系統上級攻撃魔法・水蛇絞、

 ・風系統上級攻撃魔法・風狼瞬、

 ・土系統上級攻撃魔法・地亀砲)

 そしてケントの周りに巨大な炎が龍の形となり唸りを上げ、雷鳴と共に雷の怪鳥が生まれた。さらに、巨大な水蛇がその身をうねらせて、無数の風の狼が牙を剥き、岩石で形成された巨大な亀が咆哮を上げた。

 そして、それらがケントの周囲に次々と現ていった。

 十、二十、三十と属性ごとの上級魔法が何十体も生み出され、地下空間を埋め尽くした。

「な、何ですかこれは……!一人でこれほどの魔法を……!?」

 しかし、騎士団長は微動だにしなかった。「愚かな」

「行け」

 ケントの声と共に、数十もの上級魔法が一斉に襲いかかった。

 地下空間全体が揺れるほどの大爆発が起きて煙が立ち込めた。

「騎士団長!」

 やがて煙が晴れていった。

 そこには傷一つない騎士団長が巨大な大剣を肩に担ぎ、平然と立っていたのだった。

 それを見た男は安堵の笑みを浮かべた。

「ははは!見ましたか!あなたの攻撃では無駄ですよ!騎士団長の全身を覆う鎧は、魔力によるあらゆる干渉を無効化する特殊な鎧なんですよ!

 どれほど強大な魔法であろうと、どれほど膨大な魔力であろうと魔力によって構成されたものならば、一切通ません!」

 すると騎士団長は大剣を構え始めた。

「雪月ケントその程度か」

 ケントは一言も喋らず、左手に握っていた刀を静かに鞘へ納めて、腰を深く落とした。

「……まだやるのか」

 騎士団長は大剣を構えたまま、冷たく言い放った。

「雪月ケント、無駄な足掻きはやめろ。貴様の魔法は――」

 そこまで言いかけた、その瞬間だった。

「……っ!?」

 騎士団長の全身に、今まで感じたことのない悪寒が走り、冷や汗をかいた。

(なんだ……?この感覚は……まずい!!)

 騎士団長は思考より先に身体が動いて、大剣を構えることすら捨て、男を担いで全力で上へ飛んだ。

「団長!?」

 男が叫んだその瞬間、ケントの閉じられていた瞳がゆっくりと開かれた。

「――斬華一閃・次元・火雷斬り」

 キィィィィン……

 刀が抜かれて、静かな抜刀音が鳴った。

次の瞬間、男のいた場所を中心に空間そのものが歪み、赤き炎と蒼白い雷光を纏った斬撃が一直線に走り抜けた。

 そして、その軌跡上にあった壁も、さらにその先までもが、ほぼ同時に音を立てて裂けた。

 ゴォォォォォォォッ!!

 凄まじい衝撃が地下空間を揺らし、全力で飛び退いていた騎士団長は、冷や汗を流しながら振り返った。

「……馬鹿な」

 もし、あと一瞬遅れていたり、受け止めようとしていたら自分は今ごろ、この世に存在していなかった。

 騎士団長は初めて理解した。

 目の前にいる少年の剣技は断罪の剣聖に等しい存在だということに。

どうでしたか?よからばブックマークや評価をしていただけると執筆の励みになります。

また、気になる点やわからないところの疑問点やこうして欲しいやこうした方がいいなどがあれば感想などで伝えて欲しいです。

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