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はちゃめちゃな異世界帰還〜実の姉が迎えに来たので本来の世界へ戻ります〜 【旧:Reminiszenz】  作者: 龍運
第3章:国外逃亡編

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第48話:初めての他の国

「そのうち慣れると思う」

「頑張れよ」

「応援していますわ」

 こうして三人は焚き火を囲みながら、少しずつ新しい旅への準備を整えていくのだった。


 朝食を済ませた三人は荷物をまとめ、再び目的地へ向けて歩き始めていた。

「あと二国くらい、でしたわよね?」

 フローラは地図で場所を確認しながら尋ねた。

「ああ、多分それくらいだと思う。父さんの故郷がエルフの国なら、そこに何か手掛かりがあるかもしれないから」

「まぁ、まずは無事に辿り着くことだな」

 隼人は肩を回しながら言った。そこからしばらく歩いていたフローラだったが、ふと何かを思い出したようにケントへ視線を向けた。

「そういえば、一つ気になっていたのですが」

「ん?」

「ケントはどのレベルまでの魔法と魔術が使えるんですの?」

 その質問に答える前に、隣を歩いていた隼人が首を傾げた。

「ちょっと、すまん」

「?」

「正直、俺、魔法と魔術って分類があること自体ちゃんと理解してねぇんだけど」

「……は?」

 フローラの足が止まった。

「え?」

「え?ではありませんわ!魔法や魔術を使う者に限らず、知っていて当たり前の知識ですわ!」

「そうなのか?」

「そうです!」

 隼人は本気で分かっていない様子だったため、フローラは額に手を当ててため息を吐いた。

「本当にどうやって今まで生きてきたんですの……」

「感覚?」

「胸を張って言うことではありません!」

 フローラは一度咳払いをして、隼人に話し始めた。

「いいですか? 魔法と魔術には一般的な分類がありますの」

「分類?」

「ええ、初級、中級、上級、超級、獄級、禁級。この六つに分類されます」

「へぇ」

「初級は基本的な技術。中級は応用レベル。上級、超級ともなれば一流。そして獄級と禁級は、国家戦力級以上と言われることもありますわ」

「なるほどな、じゃあケントは?」

 ケントは少し考えてから答えた。

「単純な単体属性だけなら……」

「うん」

「詠唱ありで獄級、詠唱なしだと超級までかな」

「「……」」

「複数の属性を使った混合魔法なら、基本属性九種類までなら単体属性と同じくらい使える」

「九種類……」

「でも、基本属性十種類全部を使った混合魔法だと、反動を考えないなら詠唱ありで上級、詠唱なしなら中級くらいかな」

「待ってください」

 ケントの発言にフローラは思わず口を挟んでいた。

「基本属性十種類全てを混合?」

「うん」

「でもそれは学生では不可能なのでは……?」

「初級だけど一回使ったことあるよ」

「いつですの?」

「実践演習の時」

「あの時かよ!?」

「そのせいでその後のオーガ戦は右腕がほぼ使い物にならなくなったけど」

「もっと早く言え!」

「笑い事じゃありませんわ!」

 ケントは申し訳なさそうに頭を掻いた。「ごめん」

「ごめんで済む問題ではありません!」

「お前、本当に無茶するよな……」

そんな話をしていた時だった。

 今度はケントの方が気になっていたことを尋ねた。

「そういえば」

「なんですの?」

「寵愛の加護って、どんな効果があるんだ?」

「……え?」

 フローラはきょとんとした。

「知らないのか?」

「神様からもらえる貴重なものの中でさらに特別なものってのはわかるけどそれ以外全然わからなくて」

「そういえば、以前説明してくださいましたわね」

 フローラは納得したように頷いた。

「シオンさんたち曰く、ケントは別の世界にいたようですし、そこは仕方ありませんわ。では、まず加護そのものの効果ですが、加護とは、その分野において持ち主を強化するものです」

「例えばどんなのだ?」

「例えば火系統の加護なら、火属性による攻撃はおよそ十倍になります」

「十倍……」

「そして受ける火属性のダメージは、およそ十分の一になりますわ」

「なるほど」

 フローラの説明を聞いてケントと隼人の二人は反応以上に驚いていた。

「つまり加護持ちは、その分野において持っていない人より圧倒的に有利ということです」

「じゃあ寵愛の加護は?」

 ケントが尋ねると、フローラは少し真剣な表情になった。

「寵愛の加護は別格です」

「別格?」

「ええ、寵愛の加護は、通常の加護を持つ者よりもさらに十倍強力です」

「ってことは……」

 フローラはケントを見て頷いた。

「そして、加護を持っていない人と比べれば、およそ百倍の恩恵を受けることになりますわ」

「百倍……」

 隼人は引きつった笑みを浮かべていた。

「なぁ」

「なんだ?」

「ケントお前、本当に普通じゃねえんだな」

「別に俺も好きでこうなったわけじゃないって」

「それでも羨ましいですわ……」

 フローラは苦笑しながら言った。

「女神様からそこまで気に入られるなんて、普通はありえませんもの」

 そうして会話を交わしながら歩き続けた三人の前に、ついに大きな城壁が姿を現した。「見えてきたな」

 高くそびえ立つ石造りの城壁。その中央には大きな門が設けられており、人や馬車が絶えず行き交っていた。

「ここが最初の国ですわね」

 王国を脱出してから初めて訪れる他国。

 しかし、だからといって気を抜くことはできなかった。もし身元が知られれば、最悪の場合、この国にも情報が回っている可能性があった。

 ケントは城門の様子を観察したが、門番たちは通行人の確認を行っているものの、王国のような厳戒態勢というほどではなかった。だが、それでも不用意に素顔を晒すわけにはいかなかった。

「一応、着けておこう」

 そう言ってケントたちは荷物の中から認識阻害のマントを取り出した。

「そうですわね」

「念には念を、だな」

 三人は自然な足取りで門へと向かい、やがて順番が回ってきた。

「身分証の提示を」

 門番がケントたちに告げたが、三人は一瞬だけ視線を交わした。

 学生証を使えば余計な詮索を招く可能性があった。

「身分証がない場合は通行料を支払ってもらう」

「分かりました」

 三人はそれぞれ通行料を支払い、門番は受け取った硬貨を確認すると、特に怪しむ様子もなく頷いた。

「よし、通っていいぞ」

「ありがとうございます」

 こうして三人は城門をくぐった。

 門の先には、これまで見てきた王国とはまた違う景色が広がっていた。

 ケントたちは異国の空気を肌で感じていたのだった。

 街へ足を踏み入れた三人は、まず最初に宿を探すことにした。

「とりあえず宿だな。さすがに今日はベッドで寝たい」

「それには同感ですわ」

 三人は街の中心部にある比較的大きな宿へと足を運んだ。

 しかし――。

「部屋はどうしますか?」

 受付の人がそう尋ねた瞬間に問題が発生したのだった。

「三人部屋でお願いしますわ」

「いや、ちょっと待って」

 フローラの言葉にケントは慌てて制止した。

「え?」

「いや、普通に考えて男女で分かれた方がいいと思うんだけど」

「どういうことですか?」

「だから、一人用の部屋と二人用の部屋を借りて、フローラが一人部屋で俺と隼人が二人部屋が普通じゃないかな?」

 ケントのその言葉にフローラは心底不思議そうな顔をした。

「なぜですの?」

「いや、なぜって、フローラさんと僕や隼人君は男女だし」

「それがなんですか?今の私たちは逃亡中なんですよ?無駄遣いをしている場合ではありませんわ」

「でも……」

「三人部屋なら宿代も安く済みます」

「それはそうだけど……」

「そもそも、今さらですわ。これまで野宿もしましたので今更男女で分けるなんて。今はそんなところを気にしている場合ではないと思います」

「いや、でも気になるものは気になるというか……」

「ケントは意外とそういうところは気にするのですね」

「普通だと思うんだけど!?」

「私は合理性を優先しているだけですわ」

 互いに譲らなかったが、

「はぁ……」

 隼人が面倒臭そうにため息を吐いた。

「お前ら」

「「何?」」

「ゲームで決めね?」

 二人の視線が隼人へ向いた。

「ゲーム?」

「そう」

 すると隼人は懐から銅貨を一枚取り出した。

「簡単だ」

 そう言って、銅貨を指先で弾き、

カラン、

と金属音が鳴り、落ちてきた硬貨を手のひらでキャッチし、そのままもう片方の手の甲に伏せた。

「この銅貨が表と裏、どっちが下を向いているのかと、硬貨がケントとフローラのどっち側を向いているか、その二つを当てる」

 フローラが瞬きをした。

「つまり?」

「両方当てれば勝ちで、外れたら負け。そして俺が審判やるから文句はねぇだろ?」

 ケントは少し考えた後、苦笑した。

「まぁ……それなら公平かな」

「私も異論ありませんわ」

 フローラも頷いた。それを見た隼人は満足そうに笑った。

「よし、決まりだな。じゃあ一回目といこうぜ。まずはフローラから」

「では……表が下。そして、硬貨はケントの方を向いていますわ」

「ケントは?」

「えっと……表が下で、フローラの方を向いてる」

「よし」

 隼人はゆっくりと手を開いた。

 そこにあったのは――。

「表が下、向きはケント側」

「やりましたわ!」

「あー……」

  フローラは小さくガッツポーズをして、ケントは苦笑していた。

「表裏だけは当たってたんだけどな」

「惜しかったなだけど、約束だからな。三人部屋決定だ」

「……分かった」

 こうして三人は三人部屋を借りることになったのだった。

 部屋へ案内されると、思っていたよりも広い空間が広がっていた。

 三つのベッドに、簡素な机と椅子。長旅の疲れを癒すには十分すぎる部屋だった。「思ったより悪くありませんわね」

「まぁ、寝られりゃ何でもいい」

 隼人はそのままベッドへ飛び込んで倒れ込んだ。

 ケントも武器を下ろしながら息を吐いた。

「それで、これからどうする?」

「そうですわね……」

「慌てて国を出たからな」

 ケントは自分の空間魔法と空間魔術の中に収納していた荷物を確認していた。

「食料も水も、そろそろ底が見えてきてる」「そんなに少なかったから?」

「そこまではないけど、急だったから補充するタイミングもなかったから前から持っていたものしかないんだよ。だから、もう少しでなくなるんだ。むしろ国を出てから一週間ちょっとも食料と水が持ったのはいい方だよ」

 ケントは苦笑した。

「しょうがねぇな」

「じゃあ買い足します?」

「それが一番なんだけど……」

 ケントは言葉を濁していたが、フローラもすぐにその理由を理解する。

「お金、ですわね」

「うん」

「収入源がないもんな。となると……」

「冒険者登録、ですわね」

 フローラの提案に、隼人は頷いた。

「確かに。それなら依頼で金も稼げるな。じゃあ決まりだな」

 そう言った直後だった。

「あ、でも、自分はもう冒険者登録してるよ」

「「……え?今なんて言ったの?」」

 隼人とフローラの声が重なった。

「いや、だから冒険者登録を…」

「してるのか?」

「していますの?」

「うん」

 その言葉に二人は顔を見合わせていた。

「いつの間に……」

「学園に入学する四年ぐらい前かな」

「待て待て待て」

 隼人は勢いよく起き上がった。

「じゃあ、お前冒険者だったのか?」

「うん、そうだよ」

「ランクはいくつですの?」

「Eランク」

「「E?」」

「下から二番目じゃねぇか」

「ケントならもっと高いと思っていましたわ」

「いや、それには理由があるんだけど、依頼達成回数も、昇級に必要なステータスも満たしてたんだ」

「だったらなんで?」

「レベルが足りなかった」

「……は?」

「冒険者ギルドって、ランクを上げるために最低レベルも設定されてるんだよ」

「なるほど……ケントは学園に入る前からステータスだけは異常でしたものね」

「レベルだけが条件を満たしてなかったってことか」

「そういうこと」

 そう言いながらケントは肩を竦めた。

「だから依頼自体は結構こなしてたんだけど、ずっとEランクのままだった」

「いや、余計おかしいだろ」

 隼人は呆れたように言った。

「ケントの場合、その普通が通用しませんもの当たり前といえば当たり前です」

「だな」

 ケントは苦笑した。

「まぁ、とりあえず明日はギルドに行こう」「私たち二人の登録ですわね」

「ついでに依頼も見てみるか。せっかく冒険者になるんだ。ちょっと楽しみだな」

 こうして、三人の次の目的は決まった。

どうでしょうか。よければ評価などをしていただけると嬉しいです。また、感想などでわからない点や気になる点などを送ってかれると幸いです。

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