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はちゃめちゃな異世界帰還〜実の姉が迎えに来たので本来の世界へ戻ります〜 【旧:Reminiszenz】  作者: 龍運
第3章:国外逃亡編

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第46話:国外逃亡

「ようやく見つけた」

 その声には歓喜すら混じっていた。まるで長年探し続けていた宝を見つけたかのように。

 そこから二週間が過ぎて、保健室での調整も順調に進んでケントの身体は少しずつ安定し始めていた。

 その日もシオンによる診察が行われていて、シオンはケントの魔力の流れや血の状態を確認し終えて小さく頷いた。

「うん、今日も問題ないわ」

 その言葉にケントは安堵したような表情を浮かべた。

「本当?」

「ええ。このままならあと一週間程度で完全に安定すると思う」

 隣で聞いていた隼人とフローラも肩の力を抜いた。

「よかったな」

「本当に安心しましたわ」

 ケントは胸の中にあった不安が少し軽くなるのを感じていた。

 しかし、その瞬間だった。

「この学園に雪月ケントがいると聞いた!!」

 轟くような怒声が学園中に響き渡り、全員の表情が変わった。

「その者は国にとって危険因子と判断された! 大人しく身柄を引き渡せ!!」

 その言葉に学園全体が騒然となった。

「なっ……!?」

 隼人とフローラは窓へ駆け寄り、外を見ると正門の前には大量の騎士たちが集結していた。

 その旗印は王国軍であって、その先頭には高位騎士と思われる男が立っていた。

 しばらくすると学園長が正門へ現れて対応をした。

「お話は伺いますが、理由もなく生徒を渡すことはできませんな。そもそも、その生徒が何をしたのですかな?」

「何度も言わせるな」

 学園長は落ち着いた声で言ったが、騎士は鼻で笑って剣を抜いたのだった。

「渡さなければ反逆罪だぞ」

 その瞬間、学園長の目が僅かに細くなった。

「理由も示さずに反逆罪ですか」

「そうだ」

「それは少々乱暴ですな」

 騎士は苛立ったように剣を構える。

「従わないなら反逆者として処理するまでだ!!」

 その瞬間。

 騎士たちが一斉に前へ出たが、

「おっと、それ以上は通しませんよ」

「教師を舐めないでもらいたいです」

「生徒に手を出すなら相手になります」

  学園の教師たちが前へ出て武器を構えだして騎士たちと一触即発だった。

 その頃、保健室ではシオンたちの表情が険しくなり、シオンは一枚の地図を取り出した。

「ケント、今すぐここを離れて、この場所へ向かって」

「姉さんたちは?」

「私たちは行けない」

「なんで!?」

「学園の難易度を無理やり上げた時の契約で教師になること以外にも条件があって、教師になったら学園が危険に晒された場合、最優先で守らないといけないの」

「でも……!」

「それにね」

「これはケントが成長するためでもあるの」

「どう言うこと?」

「もし私たちが付いていったら、ずっと守っちゃうでしょ?それじゃ意味がないから私たちはここに残ることにするの」

 ケントは拳を握り締めて、息を吸ったかと思うと、

「嫌だ!」

 と言ったが、その声は震えているのがよくわかった。

「もし姉さんを放っておいて行ったら、戻って来時にはいなくなってるかもしれないじゃないか!」

 シオンたちの表情が僅かに揺れたが、決意は変わらなかった。

「ケント」

「姉さんがどうしてついて行かないって言うなら無理やりでも連れて行く!」

 しかし次の瞬間。

「ごめんね」

 凪がそう呟いた途端

「え――」

 ドスッ

 鳩尾への一撃がモロに入ってケントの意識は一瞬で途切れて、身体が崩れ落ちた。

「ケント!」

 フローラは慌ててケントを支えた。隼人も凪が取った行動に目を見開いていた。

 凪は眠る弟の頭をそっと撫でながら、

「本当にごめん」

 と言ってその声はどこまでも優しかった。

 そして、シオンは隼人とフローラを見ながら二人にお願いをしたのだった。

「お願い。ケントを連れて逃げて」

「任せろ」

 隼人とフローラは頷いて了承した

「必ず守りますわ」

「ありがとう」

 そう言って、ケントを抱えた隼人とフローラが見えなくなり、シオンたち四人は学園の正門に移動したのであった。

 一方で隼人とフローラは気絶したケントを支えながら学園を離れて、向かった先は町外れにある剛吉の店だった。

 扉を勢いよく開ける。

「剛吉さん!」

 店内にいた剛吉は三人の姿を見るなり顔色を変えた。

「おい……何があった」

「最悪の事態が起きた」


 剛吉の店へ逃げ込んだ隼人たちは、店の奥へと移動していて、剛吉は険しい表情で腕を組みながら話を聞いていた。

 隼人は学園で起きた出来事を最初から最後まで説明しだした。

 王国軍が学園へ押し寄せて、ケントの身柄を要求してきたこと。そしてシオンたちが学園へ残ったこと。

 それらを一通り聞き終えた剛吉は深く息を吐いた。

「なるほどなぁ……」

 そう呟くと、机の上へ置かれた地図へ視線を向けた。

「ちょっとその地図を見せてみろ」

 隼人がシオンから渡された地図を広げた後、剛吉はしばらく眺めて納得したように頷いた。

「やっぱりな」

「何かわかったんですの?」

 フローラが尋ねると、剛吉は地図の一点を指差した。

「ここの目的地はエルフの国だ」

「エルフの国……」

「おそらく、そこがケントの父親の故郷なんだろう」

 その言葉が響いた瞬間だった。

「っ!」

 ソファで横になっていたケントが勢いよく目を開いて起き上がり、荒い呼吸をしながら周囲を見回した。

「ここは……!!が、学園!!姉さんたちを連れて行かないと!!」

 ケントは飛び起き、そのまま出口へ向かおうとしたが、剛吉が前へ出た。

「落ち着け」

「どいてください!」

「今戻ったところでどうにもならねぇ」

「そんなこと関係ないです!!姉さんたちが戦ってるですよ!?」

「だからこそだ」

 剛吉はケントの肩を掴んだが、ケントはそれを振り払おうとした。

「僕も戦う!だからそこをどいてくださいください!!」

 今のケントには何も聞こえていなかった。

 その時だった。

 ドゴッ!!

 とした鈍い音が店内に響いて、ケントの身体が大きく揺れそのまま床へ倒れ込んだ。

 殴ったのは隼人だった。

「……っ」

 ケントは呆然と顔を上げたが、隼人は拳を握り締めたまま立っていた。

「いい加減にしろ」

「隼人……君?」

「お前、自分が何のために逃がされたと思ってるんだよ。シオンさんたちはお前を逃がすために身代わりになったんだぞ」

「でも……!」

「でもじゃねぇ!」

 隼人の怒声が響いた。

「今戻ったらどうなる!?またシオンさんたちがお前を守るんだろ!」

 すると隼人はケントの胸ぐらを掴んだ。

「それでお前は満足か!?」

「……っ」

「自分だけ気が済めばいいのか!?」

 ケントは唇を噛む。

「俺だって帰りたい」

「……」

「フローラだってそうだ」

 フローラも静かに頷いた。

「隼人の言うとおりです。ですが、今戻れば皆さんの覚悟を無駄にしてしまいます」

 隼人は胸ぐらを離した。

「俺たちはシオンさん達が教えてくれた目的地に行くしかないんだ」

「……」

 店内に沈黙が流れ、ケントは俯いたまま動かなかったが、肩が小さく震えていた。

 そして絞り出すような声で

「……分かった」

 と言った。その一言に、隼人たちはようやく安堵したのだった。

 しばらくした後、三人は剛吉の店の奥で今後について話し合っていた。

「で、一番の問題はここからどうするかだよね」

「ええ。この国を出なければ目的地へ向かうこともできません」

 フローラは腕を組んで、隼人は椅子の背にもたれながらため息を吐いていたのだった。

「問題はどうやって出るかだな」

 そんな三人を見ていた剛吉が、不意に立ち上がった。

「ちょっと待ってろ」

 そう言って店の奥へ消えていった数分後、剛吉は何かを抱えて戻ってきた。

「ほれ」

 机の上へ置かれたのは三枚の黒いマントだった。

「これは?」

 ケントが首を傾けると、剛吉はニヤリと笑った。

「認識阻害のマントだ」

「認識阻害?」

「それは着てる奴の顔をまともに認識できなくなる効果の魔道具だ」

 隼人が目を丸くする。

「そんな便利なもんあるのかよ」

「あるけど物によれば高ぇぞ、高い物なら一枚でも大金貨級だ」

「じゃあなんで持ってるんですの……」

 フローラが若干引きながら聞くと剛吉は視線を逸らした。

「昔いろいろあったんだよ」

「絶対ろくでもない話だろ」

「うるせぇ」

 隼人のツッコミに剛吉は即座に返したがそのおかげで重かった空気が少しだけ和らいだのだった。

「持っていけ」

「でも……」

「返さなくていい。ただ、無事に帰ってこい」

「……うん」

 ケントは小さく頷き、三人は認識阻害のマントを身につけ、店を後にした。

 そして城壁が見えてきた瞬間、三人は思わず足を止めた。

「嘘だろ……」

 巨大な城門の前には何十人もの騎士たちが配置されていて、門から出ようとする人間を一人ずつ止めていた。

「完全に警戒していますわね……」

「ここまで徹底してるなんて……」

「認識阻害だけじゃ厳しくねぇか?」

「ええ……」

 騎士たちの警戒は予想以上だったために三人は近くの物陰へ身を隠した。

 そして城門を見つめながら、どうやってこの包囲網を突破するのか考えていた。

 三人が物陰に身を隠しながら城門の様子を窺っていると、不意に背後から声が聞こえた。

「おい、そんなところで何やってんだ?」

「え?」

 ケントが振り返ると、そこに立っていたのは大柄な男だった。

「ゴリアスさん!?」

 ケントは思わず声を上げて、ゴリアスは目を丸くした。

「なんだケントじゃねぇか」

「どうしてここに?」

「仕事だよ仕事」

 そう言いながら親指で後ろを指差すと、そこには大きな荷馬車が停まっていて、荷台には木箱が大量に積まれている最中だった。

「国外への運搬クエストを受けてな、今から隣国まで荷物を届けるところだ」

 一方、隼人とフローラは突然声をかけられた男に警戒していた。

 「ケント、この人誰だ?」

「あ、ごめん」

 ケントは慌てて紹介した。

「この人はゴリアスさんで冒険者をやっている。こっちの二人は隼人君とフローラさんで僕の友達」

「ほう?ケントが友達って言うなら悪い奴らではないな」

 そう言ってゴリアスは笑った。

 そんな行動を見て隼人とフローラは顔を見合わせて、敵ではないと理解したのだった。「しかし妙だな」

「妙?」

「なんでお前ら、こんなところで隠れてるんだ?」

 ケントたちは一瞬黙ったが、ゴリアスを信用してケントはすぐに短く状況を説明した。 学園で起きたことと、王国軍が自分を探していること。そして、国外へ逃げなければならないこと。

「なるほどな」

 そう言いながらゴリアスは城門を見た。

 騎士たちは相変わらず一人一人を厳しく確認していた。

「確かにあれじゃ正面突破は無理だな」

 ゴリアスは少し考えて、何かを思いついたようにニヤリと笑った。

「だったら簡単だ。荷物に紛れろ」

 三人は同時に目を瞬かせた。

「荷物に?」

 ゴリアスは後ろの荷馬車を指差した。

「この馬車は依頼主の正式な運搬車だから騎士どもも中身まではそこまで細かく調べねぇ」

 その時、馬車の近くにいた商人風の男が近付いてきた。

「その子たちは?」

「ああ、ちょっと事情があるらしいんだが、馬車の荷物に隠れさせてもらえねぇか?」

 商人は少しだけ三人を見た後、ため息を吐いた。

「まあ、ゴリアス殿が信用しているなら構いませんよ」

「本当ですか!?」

 ケントが驚いて、その反応を見た商人は苦笑した。

「ただし静かにしてくださいね」

「ありがとうございます!」

 隼人とフローラも頭を下げて言った。

 商人は荷台の木箱を指差した。

「この隙間なら三人くらい入れるでしょう」

 荷物の奥には人が隠れられる程度の空間があった。

「よし、決まりだな」

 三人は急いで荷台へ乗り込み、木箱の間に身を潜めた。やがて荷馬車がゆっくりと動き始めた。

 ガタガタと揺れながら城門へ近付いていき、そして荷馬車は城門へ到着した瞬間、「止まれ!」

 騎士の声が響く。

 荷台の外から騎士とゴリアスたちの会話が聞こえてきた。三人は息を潜めながら、待つだけだった。

どうでしたか?もしこの作品が面白いと思ったらブックマークや評価をしてくれると嬉しいです。また、わからない点や気になるところがあれば刺し感想などで教えて欲しいです。

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