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はちゃめちゃな異世界帰還〜実の姉が迎えに来たので本来の世界へ戻ります〜 【旧:Reminiszenz】  作者: 龍運
第二章:学園編

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第38話:実践演習II

 森に入ってから一週間後。

 三人は、俊敏に動き回るメタルスライムの討伐を行っていた。

 この一週間を経て、各自の課題の進捗にも変化が表れ始めてた。

 隼人とフローラの課題の残りはそれぞれ、隼人がゴーストの灰が八個分、メタルスライムの核が一つとなっており、フローラはメタルスライムの核が二個であった。

 しばらくして、フローラと隼人の課題であるメタルスライムの討伐がすべて無事に終わったのだった。そして、三人はこれからの動きについて話し合おうとした。

「ひとまず、私たちのメタルスライムはこれで片付きましたわね。……さて、問題はここからですわ」

「おう。残るは俺のゴーストと、ケントのオーガだな。ここからどう動くか、ちゃんと作戦を練り直そうぜ」

 そう言ってこれからの相談を始めようとした二人に対し、ケントは真っ直ぐな視線を向けて遮った。

「それなんだけど……まずは、隼人君のゴーストを討伐しに行こう」

「え? でもケント、まだこんなに日が明るいんだぜ? ゴーストを追うよりも、まずは手がかりすら掴めてないオーガについて、何か心当たりとか話はないのかよ?」

 隼人が眉をひそめ、フローラもまたケントを見つめて言葉を重ねる。

「そうですわ。ゴーストは夜の魔物ですから、明るいうちは探しようがありません。それよりも、あなたのオーガの情報を優先して探すべきですわ」

 二人はケントの課題を少しでも早く進めるべきだと考えていたが、ケントの意志は固かった。

「ううん、それよりも先に二人の課題を完全に終わらせて、不安要素を無くしたほうがいいよ。それにね、ゴーストが出現する場所なら、この一週間の探索の間に僕がちゃんと調べておいたんだ。めちゃくちゃ暗くて静かな、あそこの奥のエリアだよ」

 ケントが一週間の間にそこまで調べていたことに二人は驚きつつも、納得せざるを得なかった。

「……分かったよ。ケントがそこまで言うなら、お言葉に甘えさせてもらうぜ」

「ええ、その代わり、私たちの課題が終わったら、全力でオーガの捜索に付き合いますからね」

 二人がそう言って微笑むと、ケントも

「うん、ありがとう」

と頷いた。

 夜の戦いに向けて、結局その後三人は一度拠点へと戻り、夜になるその時まで、静かに身体を休めて休憩することにしたのであった。

 ――そして、夜の静寂が訪れる頃。

 三人は拠点を発ち、ケントが目星をつけていたゴーストが蔓延るエリアへと向かった。

 目的地に到着した三人は、息を呑んで茂みの陰に身を潜めた。

 目の前に広がる薄暗い空間には、ゆらゆらと青白く不気味に浮かび上がるゴーストたちの姿があった。その数は、当初の想定を遥かに超えていた。

「おいおい……ちょっと多すぎねぇか? ざっと見ただけでも二十体はいるぞ……」

 隼人が顔を引きつらせて小声で呟く。

「ええ……これほど蔓延っているとは思いませんでしたわ。これでは無策で突っ込めば、一斉に囲まれて精神を削り取られてしまいますわね」

 フローラも冷静さを保ちつつも、その数に険しい表情を浮かべた。

 予想以上の敵の多さを前に、三人はその場で再び話し合うことにした。

 緊迫した空気が流れる中、ケントが二人の顔を見つめ、静かに、けれど確かな自信を込めて提案を持ちかけた。

「ねぇ、これならどうかな? 僕が前に出て、あのゴーストたちの注意を引く囮になるよ」

「はぁ!? お前、何言ってんだよケント! あんな数の中に突っ込むなんて危険すぎるだろ!」

 隼人が驚いて止めようとするが、ケントは首を振って話を続けた。

「大丈夫だよ。僕が動き回って敵の視線を集めている間に、フローラさんが得意の魔法で僕の援護と敵の足止めをしてほしいんだ。そうして隙ができたゴーストを、隼人君が確実に仕留めていく。……この一週間で決めたフォーメーションを応用すれば、安全に、しかも確実に八本分の灰を集められると思う」

 ケントの作戦を聞き、フローラは力強く頷いた。

「……分かりましたわ。ケントの身のこなしならゴーストの攻撃を翻弄できますし、私なら魔法で援護をすることができますね。隼人、あなたが決めてください」

「……あぁ、分かったよ! ケント、フローラ、二人ともありがとうな! 囮をやってくれるケントのためにも、俺が責任を持って一枚残らず叩き斬ってやるぜ!」

 隼人はニカッと不敵に笑った。

 こうして三人の奇襲作戦が幕を開けようとしていた。

 ケントは大きく跳躍してゆらゆらと蠢くゴーストたちのど真ん中へと文字通り飛び込んだ。

「――そこだっ!」

 着地と同時に俊敏な身のこなしで位置を調整し、ゴーストが隼人やフローラに対して完璧に背を向ける形を作り出した。

 その瞬間を待っていたフローラが、杖を掲げ、呪文を紡ぎ始めた。

「――輝ける聖なる光よ、不浄を退ける刃とならん。聖系統中級付与魔法・セイントオーラ!」

 詠唱の完了とともに、フローラの杖から放たれた目ばゆい純白の光線が、隼人の刀へと吸い込まれていった。

「っしゃあ! フローラ、最高のサポートをありがとな!」

 付与魔法を受け取った隼人は、ニカッと不敵に笑うと地を蹴った。光り輝く刀を構え、無防備な背中を晒しているゴーストの群れへと一気に斬りかかる。

 一閃、二閃。聖なる光を帯びた刃が触れた瞬間、不気味な煙を上げながらゴーストたちが一瞬にして光の塵へとなり、床に灰を落としていく。

 何体かのゴーストを討伐したその時、異変を察知した残りの群れが、ようやく背後の隼人たちの存在に気がつき、一斉にそちらへ向き直ろうとした。

「――させるか! ターゲットは僕だ!」

 すぐさま反応したケントが、両手を広げて魔力を爆発させる。

(聖系統中級防御魔法・聖なる威光!)

 ケントを中心に、聖なる光の障壁が展開された。その強烈な光の波動に、群れは激しく怯み、再びすべての注意をケントの方へと強制的に引き戻された。

「今だ、隼人君! 残りも一気にいっちゃって!」

「おう! 任せとけ!」

 隼人はさらに刀を強く握り直し、残るゴーストたちを完全に殲滅するべく、再び光の刃を奔らせるのだった。

 隙のない連携の中で、隼人の刀が最後の一体を鮮やかに一閃した。

 最後のゴーストが煙のように消え去ると、地面にはゴーストの灰が残っていた。

「よっしゃあ! これで八個分、全部揃ったぜ!」

 隼人は地面から灰を慎重に回収し、達成感に満ちた笑顔で刀を鞘に収めた。

「ケント、フローラ、本当にありがとな!」

「ふふ、お見事でしたわ、隼人。これでわたくしたち二人の課題は、全て完全にクリアですわね」

 フローラも杖を収め、ホッと息を吐いた。 二人の課題が無事に終わったのを見届け、ケントも「よかった、お疲れ様!」と優しく微笑む。

 これで残された課題は、ケントの「オーガ五体分」のみとなった。隼人は表情を引き締め、今度こそケントに向き直って本題を切り出そうとした。

「よし……!俺たち 二人の不安要素が消えた今なら、俺たちも全力でお前の課題に集中できる。ケント、さっき言ってたオーガの話なんだけどよ――」

「あはは、隼人君、気持ちは嬉しいんだけどさ」

 ケントは夜空を見上げ、少し眠そうに目を細めながら二人の話を遮った。

「もうすっかり夜も更けて遅い時間だし、頭も体も疲れてるでしょ? オーガの具体的な話は、明日、頭がはっきりしている時に今度また話そうよ」

 ケントの言葉に、フローラも周囲の深い闇を見渡して納得したように頷いた。

「……そうですわね。夜の森でこれ以上の長居は危険ですわ。隼人君、ケント君の言う通り、一度拠点へ戻りましょう」

「あー……確かに。戦った後だから、急に眠気が襲ってきたぜ」

 隼人も大きくあくびをして苦笑いし、三人は警戒を怠らないようにしながら、静かに自分たちの野宿場所へと戻っていった。

 焚き火の残火が優しく照らす拠点へと帰り着いた三人は、それぞれの寝床につき、深い眠りへと落ちていくのだった。

 次の日の朝、眩しい朝日が木々の隙間から差し込む頃。

 目を覚ました三人は、簡単に朝食を済ませて焚き火の始末を終えた。

 昨夜の約束通り、隼人は今度こそケントの課題であるオーガについて切り出そうと、身を乗り出した。

「よし、朝飯も食ったし、頭もバッチリ冴えてるぜ! ケント、昨日言ってたオーガの――」

「あ、それなんだけどね、二人とも」

 ケントは二人の言葉を遮るようにして、真面目な表情でこう告げた。

「オーガを探す前に、まずは三十日が経った時のために、この森の『出口』を先に探しておこうと思うんだ」

「……はぁっ!?」

 ケントの予想外の提案に、隼人は思わず大声を上げて立ち上がった。

「おいケント! なんでそうやって、そんなに自分の課題を避けるんだよ!?」

 横にいたフローラも、どこか納得のいかない鋭い視線をケントに向ける。

 そんな二人の強い追及に対し、ケントは首を振って自分の考えを伝えた。

「避けているわけじゃないんだよ。ただ、優先順位を考えて言ったことなんだ。僕たちの課題が全部クリアできたとしても、一ヶ月が経ったときに出口が分からなくて迷子になったら意味がないでしょ? だから、まずは安全に帰るためのルートを確保しておいた方がいいと思ったんだよ」

 ケントの言い分は確かに筋が通っており、一見すると正しかった。

 しかし、未だに自分の課題を一つも進めようとしないケントの態度に、隼人とフローラは強い不満を抱かざるを得なかった。

「……チッ、分かったよ。そこまで言うなら従うけどよ……」

 隼人は頭をガシガシと掻きむしり、露骨に面白くなさそうな声を漏らす。

「納得はしかねますけれど……ケントがそこまでおっしゃるなら、今は出口の探索を優先いたします。……ですが、見つかった後は絶対にオーガのお話をしていただきますからね」 フローラも両腕を組み、非常に不服そうな表情を隠そうともせずにいた。

「あはは、うん。分かってるよ。ありがとう二人とも」

 二人の心配の視線を感じながら、ケントは申し訳なさそうに微笑んだ。

 こうして、隼人とフローラが終始不服そうなオーラを隠さないまま、三人は森の出口を探すために再び歩き出したのであった。

 周囲の木々が赤く染まり、夕暮れの綺麗な光が差し込み始めた頃――三人はついに、この広大な森の『出口』となる、森の境界線を見つけ出したのだった。

「ふぅ……。本当に出口を見つけちまったな」

 隼人が不満げに口を尖らせながら、見つかった出口を睨みつける。

「ええ。これで帰路の確保というケントの『優先順位』は、完全に満たされましたわね」

 フローラも言葉の中に強い圧を滲ませた。

「あはは、二人ともありがとう。これで一安心だね」

 ケントは二人の視線に苦笑いしながら、すっかり暗くなりかけた空を見上げた。

「もうすっかり遅い時間になっちゃったし、今夜はこの近くで寝ることにしよう。オーガの話は、明日ここを出発する時にちゃんと話すからさ」

 さすがに日が落ちてからの移動は危険だった。二人はまだ納得がいかない表情ではあったものの、ケントの提案に従い、出口のすぐ近くを今夜の野宿場所と決めて眠ることにしたのだった。

 ――しかし、その日の夜。

 パチパチと静かに爆ぜる焚き火の横で、隼人とフローラは深い眠りに落ちていた。

 ケントは静かに身を起こすと、自身の武器を手に取り、足音を完全に消したまま、二人のいるその場から一人で静かに離れていったのだった。

 翌朝フローラと隼人は、お互いに目を覚まして周囲を見渡した。

「うーん……よく寝たぜ。よしケント、朝飯にしようぜ! ……って、あれ?」

 隼人がキョロキョロと辺りを見回すが、ケントの姿がどこにも見当たらない。

「ケント……? どこへ行かれましたの?」

 フローラも声をかけるが、返事はなく、ケントの姿はどこにもなかった。それどころか、ケントがいつも持っていた自身の武器までもが、その場から綺麗に消え失せていた。

 その瞬間、二人は一気に顔を青ざめさせて慌て出した。

「おい、冗談だろ……っ!? なんでケントがいねぇんだよ! どこ行ったんだあいつ!」

 隼人が焦りで声を裏返らせる。

「そんな……っ! 昨夜は確かに一緒にここで眠りにつきましたのに……一体どうして……っ!?」

 フローラも冷静さを完全に失い、狼狽して周囲を必死に見回していた。

「クソッ、ここでじっとしてても始まらねぇ! フローラ、ケントを探すぞ!」

「ええ、すぐに探し始めましょう! ケントが一人で危険な目に遭っていたら大変です……っ!」

 二人は大急ぎでいなくなったケントを探し始めたのだった。

どうでしたか?もしこの話が面白いと感じたらブックマークや評価をしてくれると嬉しいです。

また、気になる点やわからない点があれば感想などで伝えて欲しいです。

後、前回の話の後書きでも言いましたがリアルの方で忙しいのでもしかしたら投稿ができない可能性がありますが、失踪はしません。

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