第11話:ケントの異常なステータス発覚!
まばゆい光が収まり、視界がゆっくりと戻ってくる。
ギルド内を包んでいた喧騒は消え、そこには異様なまでの静寂が落ちていた。
ケントが恐る恐る目を開けると、目の前の空間に半透明の板――「ステータスプレート」が浮かび上がっている。
「……これが、僕のステータス?」
そこには、凪から教わった九つのパラメーター、そして驚くべき「加護」の文字が刻まれていた。
それを見た受付嬢の手から、ペンが音を立てて床に落ちる。
「な……なんですか、この数値……。ステータス平均が、これ……っ!? ご、5,200……!? レベル16で、四桁、いえ、五千オーバー……!?」
⦅パラメーター⦆
レベル16
体力:5,600/5,600
物理的攻撃力:5,200
物理的防御力:5,100
魔力的攻撃力:5,000
魔力的防御力:5,000
魔力量:5,400
運:5,100
速度:5,200
ステータス平均:5,200
⦅スキル⦆
・一刀流剣術Lv.8 ・二刀流剣術Lv.5
・弓術Lv.4 ・槍術Lv.4 ・体術Lv.7
・気配察知Lv.6 ・気配遮断Lv.5
・錬金術Lv.8
・基本魔法Lv.5 ・特殊魔法Lv.7
・基本魔法耐性Lv.6 ・特殊魔法耐性Lv.4
・基本魔術Lv.6 ・特殊魔術Lv.5
・基本魔術耐性Lv.5 ・ 特殊魔術耐性Lv.4
⦅加護⦆
・女神ステラの寵愛の加護
・女神セレスの寵愛の加護
・女神ティナの寵愛の加護
⦅称号⦆
・分魂せし者
・悠久の魔帝の弟子
・断罪の剣聖の弟子
・黄金の錬金術師の弟子
・暗闇の夜の弟子
受付嬢の悲鳴に近い声に、周囲にいたベテラン冒険者たちが一斉にプレートをのぞき込んだ。直後、ギルド内は先ほどとは違う、戦慄を含んだどよめきに支配される。
「おい、見ろよ……なんだあの加護の数。ステラ、セレス、ティナ……女神三柱に同時に『寵愛』されてるヤツなんて、どの時代のどの国でも聞いたことねえぞ……!」
「称号も見ろ! 魔帝、剣聖、錬金術師に暗闇の夜!? 全部『弟子』って、こいつ何者だよ……!」
突き刺さるような視線と、場違いなほどの驚愕。しかし、当のケントはプレートに表示された数値を眺めながら、申し訳なさそうに首を傾げた。
「あの……すみません。自分としては、これが高いのかどうかもよく分からなくて。やっぱり、低いですかね?」
「ひ、低……!? 冗談はやめてください! これなら、今すぐにでも騎士団の団長や、国一番の宮廷魔導師の筆頭候補になれますよ!」
顔を真っ赤にして叫ぶ受付嬢に、ケントは困ったように頬を掻く。
「それに! ステータス平均は『レベル×100前後』であるのが普通なんですよ!? あなた、レベル16なのに平均5,200って……計算合わないじゃないですか! 100倍どころじゃないですよ!?」
身を乗り出して詰め寄る彼女の勢いに、ケントは思わず一歩後ずさった。
「えっ、レベル×100が普通なんですか? ……でも、俺そこまで厳しい修行とかしてないので、やっぱり低いと思いますよ?」
「そんなわけないでしょうがぁ!!」
受付嬢の絶叫が、本日二度目、ギルドの天井を震わせた。
受付嬢が読み上げた異常な数値に、周囲の冒険者たちがケントに対してだんだんと疑いの目を向け始めた。
「おい、冗談だろ……? 5,200なんて数値、英雄クラスでも届かねえぞ」
「レベル16だぞ? プレートがイカれてるか、あのガキが何か細工をしたんじゃねえのか」
「おい新入り! さっさと種明かしをしやがれ!」
疑いと嫉妬の入り混じった声がケントに浴びせられ、ギルド内が殺気立った空気に包まれていく。ケントがその勢いに気圧され、困惑して顔を伏せようとした、その時――。
――ドォォン!!
鼓膜を震わせるような破砕音が響き渡り、中身の詰まった酒樽が粉々に弾け飛んだ。
一瞬で静まり返るギルド。そこには、大斧を振り抜いたばかりの大男が立っていた。
「……ガタガタうるせえぞ、テメェら。プレートが壊れてるだの細工だの、口で言ってるだけじゃラチがあかねえだろうが」
大男――ゴリアスは、肩を回しながらケントの前に歩み寄る。ケントに浴びせられていた疑いの声を、その威圧感だけで強引に黙らせてしまったのだ。
「真偽を確かめる方法は一つしかねえ。……おい新入り。その数値が本物か、それともただの法螺か。俺が直接確かめてやる。地下へ来い」
「えっ?…どういう…」
戸惑うケントに、受付嬢が慌てて割って入る。
「ちょっとゴリアスさん! ギルド内での勝手な決闘は……」
「分かってるよ。だから『地下』っつってんだろ。あそこなら魔導結界がある。試験官代わりになってやるっつってんだよ」
有無を言わせぬボルグの迫力に、受付嬢もそれ以上は止められず、顔を引きつらせながら頷いた。
「……分かったわ。ただし、死人は出さないこと! いいわね!」
ケントは、突如冒険者ギルドの地下で戦うことになった。
「姉さん! これってどういうこと!?」
焦るケントの態度とは対照的に、シオンたちは驚くほど落ち着いていた。
「落ち着いて、ケント。とにかく今は、地下での戦いでしっかり結果を出さないと」
「う、わかった……」
「あ! でも、少しだけ条件をつけさせてもらうね」
「えっ!? 条件って、何をつけるの?」
「魔法と魔術は合計で2種類までしか使っちゃダメ。それから、相手の攻撃を一度は受けること。事前に作った錬金術の道具は一個まで。いい?」
シオンが提示したのは、ただ勝つためだけの条件ではなく、「最低限の力で効率よく勝つための制限」だったのだ。
ケントは受付の人に案内されるまま、ギルドの貸し出し用武器庫へと向かった。
そこにあるのは、手入れこそされているものの、駆け出しの冒険者が使い潰すための安価な初心者用装備ばかりだ。
並み居る大剣や長剣を素通りし、ケントはある一点で足を止めた。
彼が手に取ったのは、装飾一つない、どこにでもある鉄の剣だった。
「あの……すみません。これを貸してください」
ケントが差し出したのは、刀身から柄まで合わせてちょうど60cmの剣だった。
受付嬢は、そのあまりに地味で短い獲物を見て、思わず言葉を失う。
「……えっ、それですか? それ、訓練用のなかでも一番安価なショートソードですよ? 他にもっと、その……あなたの数値に見合うような、立派な長剣や魔導武器もありますけど……」
「いえ、これがいいです。」
こうしてケントは貸出用の剣を持って地下訓練場に向かった。
ご覧いただきありがとうございます!ケントくん、ステータス平均5,200なのに本気で「自分は低い」と思い込んでいます。前の家族のせいで自己肯定感が低くなりすぎた弊害ですね……。次回、いよいよゴリアスさんとの決闘です。ケントが「精一杯」頑張った結果、どうなってしまうのか……お楽しみに!




