21.それにしてもこの老人ノリノリである
スコッパーが筆舌を絶する苦労の末に掘り出した作品でも、
「何、このゴミ」
と、一蹴されることはそう珍しくありません。むしろ普通です。
モウルが、おじいさんの作品を他の発掘成果と一緒に世間に公開した時も、概ねそんな反応でした。
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、ワシは気にせんよ。むしろスコップされたことで、多少じゃが、読者数が増えたことの方がうれしかったからのう」
おじいさんは今日もプラス思考です。
「よかった。スコップした側としては、少し責任を感じてたから」
その件で、おじいさんの住居へおわびを言いにやって来たモウルは、胸をなでおろしました。
「なあに、五十年もワナビをやっておれば、多少のことではヘコまんよ」
「感覚がマヒしてるんだね」
「もう少し言い方ってものがあるじゃろう。まあ、それでも構わん。ワナビに必要なのは、どんなことがあってもくじけぬ強い精神力であることは、間違いないからのう」
おじいさんは力強く断言しました。
「さすがだね。ところで、この前応募した一般小説の新人賞はどうなった?」
「今日一次審査の結果が発表される予定じゃ。どれ、確認してみるか」
おじいさんは携帯を取り出して、出版社のサイトにアクセスしました。
「お、もう発表されておる。どれどれ」
携帯の画面を食い入るように見つめるおじいさん。
やがて、その顔からは血の気が引いて、みるみる内に青ざめていきます。
ゆっくり椅子から立ち上がって、よろよろと寝室の方へ歩いていき、ベッドに横たわって頭から毛布をかぶり、
「また落ちた。もう嫌じゃ。これ以上生きていたくない」
と、情けない弱音を吐きました。
「おい、こら。強い精神力はどこへ行った」
モウルがツッコミを入れても、おじいさんはすねたまま返事をしません。
仕方がないので、モウルはその日はそこで帰りました。
「どうしてあんな豆腐メンタルで、五十年もワナビをやっていられるんだろう?」
そんなモウルの疑問は、翌日に解消されます。
モウルが再び住居を訪れると、そこには元気に新作を執筆するおじいさんの姿があったからです。
「感覚がマヒしている分、立ち直りも早いんだな」
モウルはそんなおじいさんを見ながら、失礼なことを考えていました。




