街のキセキは軌跡を掘れば見えてくる
専務が子供たちを信じる理由は、街路樹が光っているとメモにあったからだ。
明後日から街路樹をクリスマスツリーにしようと工事が始まる。それを知ってるのはアンドーチェーンの人間だけなはずだ。
たぶん、はるか先の未来から今に巻き戻る時に、少し先の未来も見えたんだろう。
「あの子たちは先に未来を見たんだよ。これは大手柄だよ。」
「看板のここに2026年とありますね。」
「その時は俺も小泉さんもかなり老人だな。生きてるかな?」
「俺たちも若いうちに未来を垣間見た。嬉しいじゃないか。」
大恐竜展を無理矢理、東京から引っ張って開催した甲斐があると笑った。
小泉は亘理、連坊、富沢を安心させようと話しかけた。
「ここは1989年。いつもの街だよ。」
3人は専務のハイヤーで無事に家へ着き、親からも先生からも、こっぴどく怒られた。
自転車は後から軽トラで届いた。
専務は亘理が車をおりる時、恐竜の骨を渡した。
「これは趣味で買った本物だよ。君にあげよう。」
「人を心配させたり危険な冒険はダメだけど。」
「冒険する気持ちは忘れるな。」
そして、
「あれがレプリカだとは死ぬまで誰にも言ってはいけない。」
専務は子供たちのメモ書き、タッチ証明書を大事にいつも書斎の引き出しに入れている。
いつか、同じ未来を探し当てる奴が現れることを期待しながら。
もしそいつが現れたら、そいつは小泉に任せようと。
亘理たち3人は次の日、地下道のことを話していた。
「あん時さ、助けて助けてって2人ともかっこ悪!」
「言ってねーよ。地下道で迷ったけど、簡単に外に出れたもん。」
「じゃ、あの声は何だったんだよ。」
それを知るのは文化祭の時だった。
街の歴史、地下道伝説とこの街の未来。
この街には、お城に通じる地下道があります。
江戸時代は、お殿様にもしもの時があったら街に逃げ込み隠れるため。幕末は幕府に反対した者の牢屋。戦争の時は防空壕とさまざまな役目をになってきました。防空壕に生き埋めになった市民もいます。長らく忘れ去られてきましたが、発掘調査によって東西にアリの巣のようにあることが分かりました。
この街の市長はこの地下道を工事して地下鉄を作り、君たちが大人になる頃には排気ガスが問題のバスを市街地だけ廃止するそうです。
その手始めに、地下道に埋められたままの方々をお墓に移して弔い、彼らも天国で喜んでもらえる街づくりを始めるそうです。
先生の1人が郷土の歴史家だから、模造紙に手書きで写真を貼って発表していた。
アンドーチェーンの専務はブラインド越しに街を眺めながら
「うちの地下道、地下鉄になったら。」と言うと
「ちょくちょく遊びに行けませんね。」と小泉。
「俺が入るとさ、いつも縄文時代なんだよな。」
「儲け話を探しに入っても未来は見えてこないってか。」
だから専務は子供が大好き。というわけだ。




