25
異世界が残虐で非道。Part3
魔族の国に向かうと決め、俺は走り出した。
が、俺には方角もわからない。
今まではアリアが道を指し示し、または強制的に転移させられていた。
この転移も今思えば何かの力が働き、俺に何かをさせようとしていたと考えられる。
いや、今は深く考える事はやめよう。
アリアが言っていたアルクエイドという現魔族の女王なら俺の事も何かわかるかもしれない。
ひとまずは中央大陸を目指す。
確か魔族の国は北側にあるとアリアは言っていた。
途中、魔物やら野党ならに襲われたが、雑な魔力をぶつける品のない攻撃で掻いくぐっていた。
もし俺がまた怪物になってしまい、周りに迷惑をかける可能性があるならばと、しばらく目が覚めてからは周囲を観察していた。
今の所、それらしい事はない。
本当にあのドワーフの惨劇は俺の仕業なのかと疑っている。
何かの間違いで俺のような何かが…。
それも不確かだ。
仮にそうだったとしても、あの惨劇があった中、俺はのんきでぐーすか寝ていた事になる。
しかもアリアの遺体と一緒にだ。
そんな事はあり得ない。
状況から見て、俺以外しかやはり可能性はないのだろうか。
考えたくもない。
ひとりきりの旅が初めてで、誰かと会話もないと心が滅入ってくる。
そんな中、山賊なんかとバトルをすると気持ちがスッとなる。
それが逆に俺の犯行だと裏付けるようで、吐き気がした。
どれくらいの夜を明かしたか、俺にはわからないが中央大陸へと到達をした。
俺が初めてこの異世界に来た時に見たあの草原。
ここで、もしかして元の世界に戻れる事が出来れば、この意味不明な魔力をおいていき、もとの人間としてまた日本で生きていけるのではないか。
そんな甘い、逃げの選択を想像してしまった。
当然、元の世界に戻る方法も知らず、俺は中央大陸で何日か無駄にする事になった。
俺の情けない所が全面に出る。
どうか、今までの事は全部夢で、あの埃っぽい地下の資料室で目が覚めないかと何度も思った。
朝がきて目が覚めるたびに、自分に嫌気がさす。
そしてついに俺は魔族の国を目指し、歩きはじめた。
その俺の決意を待って、あざ笑うかのように眩い光が俺を包んだ。
またしても情けなく、何かが変わると俺は期待してしまった。
本当にくずだ。
「ようやくひと段落ついたか」
あの男がこの地を去り、周囲一帯の亡骸を弔う事が出来た。
勇者としてあの男を止める事が出来なかった事がずっと後悔と懺悔として心に残っていた。
「…本当に、何がどうしたのだ」
不可解な事が多かった。
それでも守れなかったドワーフ族を一人、また一人と弔う事で罪悪感が薄くなっていき、
私の心も少し軽くなった時、あの娘の言葉を思い出した。
「「まさか、お父様。〇〇が暴走…そんなまだ早いはず」」
暴走、それにあの娘はあの男がどうにかなる可能性を知っていたような口ぶりだった。
これから自分の身の振り方を考えた時、私には戻る故郷も仲間もいない。
このままふらりと世界を見て回ってもよいかと思ったが、私の勇者としての力がそれを許さない。
恐らくヒューマンの中で一番強い私が、あの男を止める事が出来なければこの世界は滅びる。
エルフの事はよく知らないが、復興途中の魔族、私抜きのヒューマン族があの力に勝てるわけがない。
力自慢のドワーフでさえ瞬殺だった。
ならば私のするべき事はたったひとつ。
あの男を止める力を手にいれる。
そしてあの男に引導を渡してやり、あの娘の所へ送ってやる事だ。
あのバカみたいな魔力に対応する為にも、魔力の操作にたけているエルフの力を借りる事にした。
私は世話になったドワーフの里を後にし、ひと先ずは中央大陸を目指す事にした。
道すがら、いつあの男に遭遇するか冷や汗が出っぱなしだったが、
道中、打ち捨てられた魔獣、野党の類を見て、間違いなくあの男の痕跡だとわかった。
少なくても元来た道を引き返す事はないはずと踏み、私はあの男の痕跡を追う事となる。
しばらくして中央大陸方面で、私の呪いが解けた時の何倍の光が見えた。
「あの男の力か?」
震える体に鞭を打ちながら様子を見る為、急接近を試みる。
が、その先には誰もいなかった。
「魔力暴走か…?」
魔力暴走
魔力の絶対数が少ないとされるヒューマンでは、おとぎ話程度で聞いた事がない。
魔力を制御し貯蔵しきれない程の魔力があふれた時、それは起こる。
ちょうど私の呪いが解呪された時もまさにその現象だ。
「あの娘が言っていた暴走とは、魔力暴走の事だったのか…?」
もしあの娘が毎夜のごとき行っていた情事が、あの男の魔力を消費させる行為だったとすれば合点がいく。
確かに私の解呪の時もあの男の魔力かマナが大量に私の体に入ってきた感覚があった。
その魔力が私を縛っていた楔を引きちぎり、解き放たれたように思う。
「あの行為が、あいつの暴走を阻止していたのか」
しかし妙だ。
あの夜もあいつらは確かまぐわっていたはず。
では暴走前に消費されていたのではないのか。
結論は出ないが、恐らくは正解に近いと私は踏んだ。
それが事実なら今のあいつはかなり危険だ。
解消する相手がいない。
自ら慰めでもしてくれればある程度は大丈夫なのかもしれないが、それも不確かだ。
やはり、魔力についてエルフ族に教えを乞うほかあるまい。
私は全力でエルフの里を目指した。
眩い光に包まれ、例のごとく転移をしたと確信した。
そして、それは間違いなかった。
今度はどこに飛ばされたのかと周囲を見渡しても誰もいない。
こんな事は初めてだ。
何かの建造物の中、神殿のような作りである事は見て取れる。
が、あたりが暗くよく見えない。
ひとまずは自分がどこに飛ばされたのかを把握する為に探索する事にした。
『***よ、跪け』
頭の中で声がしたと思ったら、急に体が重くなり、その場に倒れた。
『***め、***だと知って、****とでも言いたいのか』
所々わかるが、脳がその言葉を理解できない。
『して***よ、なぜこの***にいるのだ。貴様は****に落としたはず』
何か言葉を発したかったが、体が動かない・
『? 何をしている***。まさか貴様****ではないのか』
何かの勘違いであったとわかってくれれば助かる。
俺はただの人間だ。
ただのではないか
『******、消えよ』
大きな魔力を感じた。
それと同時に俺の謎パワー拘束がなくなり、体が動く。
「消えよと言われても、お前が俺を飛ばしたのではないか」
『ゴミめが、誰に口をきいている、***であるぞ。我が消えよと言えば、どんな手段でも消えるのだ』
「そもそもお前の姿なんて見えないし、ここがどこかもわからない。出ていってやるから出口を教えろ」
『ここまで低俗な***だったとは、***も落ちたものよな。面白い、貴様が***の狙いで我のもとに来たのであれば、試してやろう』
「だから俺は…」
盛大な勘違いをかましている自称我の野郎に文句を言う前に、眩い光が放たれた。
また転移か…?
そこはあの草原に近いがまったく違う、魔力が溢れかえっている不気味な草原だった。
美しい赤色の空、真っ青な大地、見て取れる真っ白な風。
どれも現実離れをしすぎている異界である事は明白だった。
その中心に、誰かいる。
『貴様の認識レベルに合わせてやった、これで我が姿も見えよう』
なんとなく、しゃべり方的におっさんかと思っていた。
今までの声は、声というよりも音に近く、そもそも人類の言葉とはまったく違った為、完全に思い込みをしていた。
その自称我は、女だった。
『何を見ている、完璧な我の存在感で死んだか』
「いや、見た目に驚いただけだ、お前は誰だ」
『この見た目などお前の想像で勝手にそう見えているだけだ、我がどんな姿かなど見たもので変わる。我の名か、ゴミどもは我を神と呼ぶな』
想像はしていた、俺の運命をここまでめちゃめちゃに出来るのは神くらいだろうと。
それが邪神かどうかはわからないが。
「神だと、笑わせる」
『貴様ごときゴミくずがどう感じようと我には意味を成さない、では、始めようか』
自称神は、そういうと目にも止まらぬ速さで迫ってきた。
エルフの集落を目指して早数日。
まったく到着する気配がなかった。
道中、山賊を脅して聞いてみたが、誰もエルフの集落を知らない。
間違いなく存在しているはずなのに、知覚できない魔法が掛っているとみて間違いない。
魔法には魔法だと、私は自身の魔力を解放し、周囲の気配をさぐった。
すると透明な魔力の揺らぎを感じた。
壁のような感触がある。
私はその壁に手を当て、魔力を一点に集中、放った。
轟音を放ちながら透明な膜のような、恐らく結界は私の周辺だけ消し飛び、また修復しようとしている。
私はその中へ飛び込んだ。
「そこまでだ、ヒューマン」
エルフだ。
間違いない。
「魔族だけでは飽き足らず、ついにエルフ族にまで手を出してきたとは俗物め」
「エヴァン、早くそいつに拘束魔法をかけて」
「無駄だ、ずっとやっているが無効化される」
「高貴なエルフよ、聞いて欲しい。私はヒューマンの戦士として攻めてきたわけではない。」
「嘘を言え!我々の結界を破壊し、侵入をしておきながら何を言う」
「エヴァン!早く殺そう」
「エオリス、落ち着け。単体で我らの結界を破壊した魔力の持ち主だ。出方を見る」
「手荒な事をして押し入った事は謝る!魔力に精通しているエルフたちに聞きたい事があってきたのだ。黒髪黒目の異世界人について」
「何?まさかエリスが連れてきたあの…」
「エヴァン騙されないで、適当に言っているのかも」
「しかし、黒髪黒目の異世界人など、あやつの他を知らん」
「エプリス、長に伝達を!」
「悪いがヒューマン、その場で大人しくしてもらおうか、本当に貴様があの異世界人と知人ならば信用しよう。だが、偽りであった場合は我々ムジュラが貴様を全力で抹殺する」
ここは大人しく待つしかないか。
それで戦う事が目的でないとわかってくれるならそれでいい。
しばらくするとどう見ても長に見えない、子供を連れた女のエルフが来た。
「あなた、あの人を知っているの?」
子供は母親であろう女の後ろに隠れているが、それでも興味からか半身を出し私の顔をじっと見ている。
髪と瞳が黒い。
まさか。
「この子はフェルト、あの人と私の子供なの。だから髪の色も瞳の色もあの人に似ていてね。」
「そういう事か、残念だがあいつは一緒ではない。とある事情で別れた」
「そう…元気ならいいのだけど」
とてもドワーフの惨劇をこの親子に伝える気にはならなかった。
少なくても子供には自分の父親がひとつの里を滅ぼした怪物であると受け止められるわけがない。
「しかし、私がここに来た理由はあいつの件だ。お前あいつの事を知っているならばあいつの魔力が普通でない事はわかっているな」
「ええ、異世界人ですね。あの人がこの世界に初めてきた時、私が保護をしました。」
「そうか、ならば話は早い。あいつの魔力暴走についてお前の意見が聞きたい」
「魔力暴走?」
エルフは魔力操作にたけていて、その力も4大陸中随一だ。
魔力暴走について知らないわけがない。
とぼけているのか。
「そうだ、知っているはずだ」
「あ…いえ、魔力暴走を知らないのではなくて、あの人が魔力暴走と何の関係があるのですか?」
「あれだけの力だ、もしもの話ではあるがあの力が暴走しないようにどんな方法があるのかを教えてもらいたい」
「ちょっと待ってください。あの人の魔力は確かに変わっていましたが、暴走するほどの量はなかったはずです。どなたかとお間違いではないでしょうか…?」
どういう事だ。
あの異質で禍々しい魔力。
異世界人と言わずとも肌で感じるほどの違和感。
この女もあの娘と同様、力を鎮める為に行為に及んでいたのではないのか。
「ではお前は何の為に子供を作ったのだ。」
「え…それは結果というか、流れというか」
確かに結果ではある。
が、流れ?
この女は何を言っているのだ。
「エミリア、そこまでだ」
初老のエルフが先ほどのエルフたちと現れた。
「長、どうやらあの人とは違う人を探しているようです。では旅のお方、私たちはここで」
そういうと女と子供はどこかへ行った。
が、女が私に背を向けたその瞬間、背筋に悪寒が走った。
子供だ。
先ほどまで私に怯えていたと思っていた子供が、一切の感情を感じさせる事のない表情で、真っ黒な瞳で私を見た。
殺気でも闘気でもない。
純粋な何か。
「フェルト」
名前を呼ばれた子供はゆっくりと私から視線を逸らし、その場を去った。
間違いなく普通じゃあない。
「して人違いを探してここまで苦労された旅人よ、今この瞬間にこのバハムートを去ればお互いの行き違いとして永久に忘れよう。が、これ以上何かあるのであればどうかな」
恐らくはエルフの長。
長寿として見た目が変わらない事で有名なエルフがここまでの老化をしている。
そうとうな年月を過ごしているのだろう。
魔力も桁違いなはず。
ならば。
「私は主らを攻めるつもりは一切ない。ただ魔力の操作、とりわけ魔力暴走について教えを請いたい」
「ヒューマンごときが魔力操作じゃと?笑わせる。確かにお主はヒューマンとしては魔力は高めじゃな、我らエルフからすれば下の下じゃが。」
「…私ではない。ある男が恐らく魔力暴走をしている」
「ほう?それがあの異世界人だと?」
「そうだ」
エルフの長はその年齢に似つかわしくない高らかな笑いをおこした。
「バカはヒューマンの中でしろ、あの異世界人が魔力暴走?笑わせる。我らエルフの中でも稀である魔力暴走がよりによってあの男とはな」
「お前たちの里にいた時よりも恐らくは魔力が上がったのだ。そうとしか考えられない」
「いいか小娘。魔力はな上がる事はない。生まれた瞬間にその総量が決まっておる。鍛錬で得る事ができるのは効率的な使い方じゃ。だとしてもあの異世界人の総量では暴走をしようにもないがな」
「しかし」
「くどい。どうやらエミリアのいう通り人違いのようじゃ。他の国で召喚でもしたのではないかな。だとしても我らには関係のない事だ。立ち去られよ」
これ以上の情報は得られる様子ではなかった。
私はその場を離れ、結界の外に出ようとした。
「お姉さん」
黒髪黒目の子供に声をかけられた。
周りに母親の姿はない。
「…お前。何かようか」
私が周りを気にしていると、
「大丈夫、私たちの周りに結界を張っているから誰にも見えないし聞こえない。あまり遅くなるとお母様が心配するから時間も少し遅くしている」
こいつ化け物か
「さっき話をしていた異世界人って私のお父様の事でしょ」
「私はそうだと思ったのだがな、どうやら違うらしい」
「たぶん違わない。お姉さんから私と同じマナを少しだけど感じる」
一瞬ではあるが、黒い瞳が鮮やかなエメラルドグリーンになった。
すぐに黒目に戻ると、子供は話を続ける。
「お父様の話が聞きたい。お母様は全然教えてくれないし、里のみんなもお父様について話を聞こうとすると変な顔するし」
「私はそこまでの時間を関わっていないが教えてもいい、が、私はここを立ち去らなければいけないようだ」
「それなら大丈夫」
その子供は両手を天に掲げ、吹っ飛ぶかと思ったほどの魔力を展開した。
「結界外との時差を1/10000にした。ほぼ止めたに近い。これでどれだけ話をしても外にでれば恐らくは1秒ほど。」
「お前、凄まじいな」
「お父様とお母様の子なので」
あまり感情がうまく出せないのかと思ったが、その時だけは年相応な健気さを感じた。
「そうですか。たぶんその人は私のお父様で間違いないですね。おそらくは私の妹にあたる魔族の子供、アリアでしたか。その子との魔力共有が今回の暴走の原因だと思います」
私の知りえるあいつを出来る限りそのまま伝えた。
この子供…いやフェルトは見た目通りの年齢ではない。
下手に隠すよりも、全て伝えた方が得策だと感じた。
「魔力の共有?」
「はい、お父様の能力はありていに言えば、魔力の譲渡。本来魔力は近しいものの他人の魔力を使う事は出来ません。拒絶反応が出ます。お父様は色で言えば白…いえ無色なので、誰でも使えるようですね。通常であれば、お父様から誰かへの一方にだけ魔力の供給が可能なはずが、お父様の血を分けている姉妹の一人と循環をして、お父様へ還元させていたのでしょう」
「すまんさっぱりわからない」
「つまり、お父様と姉妹の行為そのものが原因であり、その姉妹の一人が死んでしまったのであればもう暴走しようもありません。大丈夫です。」
「そう…なのか」
「はい、ですが、万が一、私のようにお父様の血を分けた子もしくは異世界人が現れて、また循環と還元をすれば魔力暴走をおこしてしまいます。」
「止めなければ」
「そうですね。この事実は私のお姉さんしか分からないと思いますし、私も同行したいのですが、お母様をどう説得するか考えています」
「いや、お前はまだ幼い。この話を聞けただけで十分だ。お前は里にいろ」
「ちなみにお姉さんはどう止めるおつもりですか?」
「まず追いかける、そして止める」
フェルトはどう見てもあきれ顔をしていた。
「おい」
「失礼、お父様がどこにいるかお分かりですか」
「ここではないのなら、ヒューマンか魔族かだろう。あいつはヒューマン族っぽいしそちらを目指してみる」
「…やはり、私が同行しなければ無理があるか」
「何か言ったか」
「いえ、独り言です。」
「この魔法も長い事使えば負担になるだろう、そろそろ解除してもいい。私はオーデンガルドを目指す」
「この結界維持は正直負担ではありません。結界発動時に少しマナを使いますが、私は1マナ/1秒で回復する術式を自分にかけていますのでもう満タンですし、あえて言えばこの結界内に長くいると見た目の年齢と精神の年齢に乖離が起きて、最近では子供らしくないと言われています」
「お前、化け物か」
「失礼ですよ」
「…すまん」
「お母様を説得する時間が欲しいです。一度結界を解きますので里の結界外で少しお待ちください」
「そんなには待たないぞ、手遅れになってしまってはオーデンガルドが滅んでしまうかもしれん」
正直、祖国といえど私にとってはいい思い出などない国だ。
滅んだ所で心は痛まない。
が、私の勇者としての血が、力が、意志が同郷の民が苦しむ姿を想像するだけで力が入ってしまう。
落ち着かないと体が光輝いてしまうほどだ。
私は待った。
あのフェルトという娘、異常だ。
さすがはあの男の子孫。
アリアと同じく知的で能力が高く、思慮深い。
当の本人はアホな癖に、その子供たちが優秀だから手に負えない。
魔力の循環と還元か。
確かに日に日にあの男の魔力が膨れていくのがわかった。
その前夜は必ずアリアと行為を行っていたように思う。
魔力暴走の可能性をなぜアリアが危惧していたか、あいつもわかってしていたのだな。
しかし、アリアの目算ではまだ先というか、あの娘が目算を誤るはずがない。
絶妙に発散させ、摂取させていたはずだ。
その証拠に私が同行していて、毎日のようにしていたわけではなかった。
今思えば、あの男が魔力を使った夜に限って、行為をしていたように思う。
その計算がどこかでくるった。
「お待たせしました」
私は驚きすぎて、思いっきり後ろに飛び跳ねた。
「お前か、驚かすな」
「すみません、里の近くですので私のマナだと里の人に気づかれてしまいますから」
だが、まったく気配を感じなかったぞ。
声をかけられるまで、一切のだ。
一応私も警戒をしていたし、考え事はしていたが。
それでもこの娘、やはり化け物。
「たぶん今、失礼な事考えていたとお見受けしますが、声に出していませんから不問としましょう。時間が惜しいです。このまま魔族の国へ向かいます」
「魔族の国?オーデンガルドではないのか」
「はい、お父様の状況から考えると魔族の国しか考えられないのです。」
「なぜだ。オーデンガルドの方がヒューマンがたくさんいるぞ」
「それが何の確証になるのかわかりませんが、お父様もご自身の事を知りたいはず。しかしそれが魔力暴走とは自分ではわかりようもありません。きっと姉妹のこと、アリアでしたっけ、への思いはあれどヒューマンの国には何もない。一旦身を寄せるにしてもエルフの集落には私がいる。巻き込みたくない。こんなかわいい娘を。と思うはずです」
こいつ、頭がいいのか悪いのかわからんな。
「お姉さんに一つ忠告を、口にせずとも表情や目線などで考えている事がわかります。特にお姉さんは。」
う、
「すまん」
「いえ、あと私の名前はフェルトです。お姉さんの名前を教えてください。これから長い旅がまっていますから」
「ああ、私の名はルイス。オーデンガルドでは勇者だった」
「ほお、勇者ルイス様でしたか。これは私の方が失礼を。お許しください」
「いい、そういうつもりで言ったのではない。フェルトは頭がいい。私の戦力として理解をしてほしかっただけだ。」
「ご配慮をありがとうございます。ではお言葉に甘えまして、ルイス様参りましょう。」
「そういえば母親の説得はどうしたのだ?」
「…秘密です!」
またも年相応な悪戯好きな子供の笑顔で、フェルトは茶化したのだった。




