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異世界が残虐で非道。Part4
気絶と覚醒をもう何度繰り返したのか。
もはやこの状況をどうにかしようとも思わない。
覚醒、衝撃、激痛、気絶、覚醒、衝撃、激痛、気絶…。
まるで部屋の電気をつけたり消したりしているような感覚。
俺はなぜ死なないのか。
このまま一生繰り返し続けるのか。
それもいい。
もう何も考えたくない。
俺なんか、このまま一生。
いや
俺にはやらなくてはいけない事があったのではないか。
俺の子供たちを。
きっと助けをまっている。
ドワーフの里の事はよくわからないが、
それでも俺は。
『ほう、ゴミカスからゴミ溜めくらいにはなったか』
気が付けば、俺は自称神のこぶしを右手で受け止めていた。
「ボカスカ殴りやがって、いてえっての」
『ゴミ溜めのくせに痛覚があるか、***も捨てたものではないな』
「だから所どころ何を言っているかわからないっての!」
つかんだこぶしを思いっきり投げる。
え、、投げれた。
『心境の変化でもあったのか、****のくせにな。もう我も飽きた。どうやらお前は***の死徒ではないようだしな』
「死徒?」
『貴様など知らなくていい事だ、しかし死徒でないにしてはずいぶんと硬かったな。まあいい。面白そうだからこうしてやろう』
不意を突かれた。
急に左目が見えない。
『これでよし、ではなゴミ溜め。我が退屈しないように精々いそしむがよい』
また目の前を光に包まれ、俺はまた草原にきていた。
不意打ちをくらった左目も普通に見える。
見える?
なんだこれ。
空間がぐにゃぐにゃで、酔っぱらっているみたいだ。気持ち悪い。
思わず左目を瞑った。
『おい、それでは我が見えぬ、仕方ない少し調整してやるか』
「まさか、お前俺の目に何をした」
『察しが悪いな、ゴミカスに降格だ。我の窓だ。その目は。まあ少しマナの動きが見えてしまうのはおまけだ』
これがマナの動き?
先ほどよりは多少薄くなったが、なんだこの景色は。
『どうせゴミカスには使いこなせない。慣れろ』
「こいつ。」
『ああ次にわざと目を瞑ったり、目隠しすればそのまま頭を吹っ飛ばす。』
これが自称神。
とんだ疫病神だ。
余計な横やりが入ったが、俺の目的は魔族の国へいき、アルクエイドとやらに話を聞いてもらう。
俺の意味不明な状況と、娘たちの事。
アリアについても話さなければいけない。
気は思いが、せめてもの償いだ。
それにしてもマナの動き?
なんだか色のように感じるな。
おい自称神。解説しろ。
『今すぐに死にたいならいいがな、まあ暇つぶししてやろうか』
『マナには発生時にすでに特徴がある、それがマナゲインだ。そもそもマナとはこの星を創造した時に出た搾りかす。この星はいくつものマナゲインを組み合わせているから、それがゴミどもがいう火?水?知らんがそうなっている。お前は我の神の目でみる事で、普通では見えないマナではない原初の光であるマナゲインが視認できるというわけだ。』
こいつ、さてはおしゃべりが好きだな。
「マナゲイン?」
『なんだマナゲインも知らないのか、ゴミカスから…ああもう面倒だ虫、もうお前は虫だ。虫にもわかるように説明をしてやろう。そもそも虫どもが使っている魔術やら魔法やらは我が創造したこの星から漏れ出している神の力を盗んでいるに過ぎない。まあ面白いし、興味もないからどうでもいいが。我の力、つまり神の力をマナと呼んでいるな。我の力は当然ひとつではない。無限にある。そのひとつひとつをマナゲインと呼ぶ。このマナゲインを使って、虫たちが自分の術式に流し、現象を体現しているのが魔術やら魔法だな。もう面倒になってきたから、概念をそのまま虫の脳に流すぞ。焼き付くなよ』
正直直接頭に話かけられるのも相当気持ち悪かったが、なんだこの情報がデジャブのような知識と映像と音声が全部バラバラで一気に視点が定まらない。
知らないのに初めから知っていたような、情報、情報、情報。。。
この世界は…この星は…そうか…俺は…いや…我は…あがあがががががあああっがが。
『耐えられなかったか』
「あががっががががああががああがが」
『しょせん虫か、仕方ない我の好きにさせてもらうとしよう』
「ルイス様」
「なんだ、フェルト」
「もしかしてルイス様はこういった旅は初めてですか?」
「む、なぜだ。どこかおかしいだろうか」
「私も集落を出たのは初めてですが、本でよく読んでいました。お母様も集落の外で活動されていて、その話をもとに考えると」
「いいから何か変なのであれば、前置きはいい。早く言え」
「服を着てください」
「なぜだ」
ドワーフの里に向かう道中、私は衣服を着ていなかったが、あの男も娘も何も言っていなかった。
むしろ娘に至っては、むしろその恰好が一番いいと言っていた。
確かに私は今まで勇者としての力を制御するために鎧を着ていた。
寝る時もだ。
しかしそれが呪いの一種とわかり、解呪をきっかけに鎧を捨てた。
力が溢れてきて体が発光し、気分の最高によかった。
あの男もどちらかといえば服を着ていない時間が長かったし、娘も移動時間以外は服を着ていなかった。
鎧の代わりになる服は持っていなかったし、問題ないのであれば、冒険の基本はこれではないのか。
「ヒューマンがなぜ野蛮で、下品で、年中繁殖期と呼ばれているか今、理解しました。」
「オーデンガルドの民は服を着ているぞ」
「ではなぜ今服を着ていないのですか。いえそれはいいです。もう今すぐに服を着てください。正直目のやり場に困りますし、同行している私の品性も疑われます。」
「この方が動きやすいのだがな、仕方がない。」
もっていた服を着た。
この服はドワーフの里でもらったもので、とても気にいっている。
ドワーフ族のきめ細かい作りが施されているが、その実生地が硬い。
防御面からすれば素晴らしいが、素早い動きに支障が出る。
「なんだかお父様も妹も信じられなくなりそうです。」
「いや、あの男はクズではあったぞ。が、アリアは優秀だった。」
「お父様の事は一旦おいておいて、妹について道中教えてください」
私は、アリアの優秀さについて語った。
フェルトは見た事もない姉妹の話を興味深く聞き、随所で質問も交えながら道中を退屈なく過ごした。
当然、魔獣や野党も現れ戦闘もあったが、接近戦では私が、遠距離ではフェルトが猛威を振るい、苦戦など一切なかった。
しかし道中のフェルトがある疑問をもっていた。
「魔獣が弱すぎる」
「フェルト、お前は魔獣と戦った事があるのか?私たちが強すぎるだけではないか」
「確かに私は魔獣を戦った事はありませんし、私たちは強いです。しかしこの弱さは尋常ではないと思います。今私たちはほぼ中央大陸に入っていますが、この地はどの勢力も統治しておらず、むしろ戦地としての側面が強いです。なので必然としてマナが集中し、そのマナに当てられた獣が魔獣となります。ここ数年は大きな戦争はなかったと聞いていますが、ヒューマンが魔族の国を襲った時にある程度戦場になったはずです。」
「私はしらんな」
「ルイス様は当時ヒューマンの国に拘束されていましたね。いずれにしてもこの地で発生するマナが薄い。しかも極端です。大規模なマナの消耗があったとしか考えられません。」
お父様がドワーフの里を抜けて、この中央大陸に入るのは必然。
ある程度のマナの消費と魔獣の撃退はあったとしても、もはや中央大陸にしては浄化が進みすぎている。
それに話に聞くお父様の戦い方は魔力をそのまま放出する大技。
確かにその痕跡は多少ある。
でもここまでの消費がお父様によるものであればもっとこの地は整地されている。
それはない。
では何が原因なのか。
タイミング的にお父様の件に関わっているとみて間違いない。
私が本気で結界を放ち、周囲一帯の気配を探って時間をかければ仮説くらいは立てられると思う。
でも時間があまりない。
もし万が一魔族の国に私の姉妹が生き残っていて、お父様を慰安の意味で慰めた時、
話に聞くお父様はきっと受け入れてしまう。
ある程度の消費をしたお父様のマナはいくぶんか循環と還元でも溢れる事はないが、
姉妹が一人だけとは考えられない。
もし複数で一度に循環と還元をした場合、お父様の限界がきてしまう可能性もある。
そうなれば魔族の国は一瞬だろう。
ただでさえヒューマンからの侵攻から日が浅い。
壊滅は確定的だ。
ハーフエルフである私が魔族の国がどうなろうとどうでもいいが、
心を病んでしまうお父様は見たくないし、次はヒューマンの国に進路が移る。
お父様とヒューマンは本質的に同質であるし、どうせヒューマンは年中発情期だ。
あっという間に姉妹が増える。
あとは時間の問題になるだろう。
そして最後はエルフの集落だ。
そうしてこの世界から文明と人種は根絶される。
お父様ただ一人を残して。
深い深い暗闇にいる。
何も見えないし聞こえない。
目を閉じているのか、開けているのかもわからない。
感覚がまったくない。
ただ、すごく疲れた。
今はずっと眠っていたい。
『ここが魔族とかいう虫の集まりか』
「あと一歩我が領地に足を踏み入れれば首を落とす」
『品のない言葉だ。』
即座に長刀が振り下ろされる、が、その刃は空を切る。
その代わりに視界が反転。
ボトっと何かが地面に転がった。
『ずいぶんと柔い素材だな、この虫ケラは』
この肉体もずいぶんと脆い。
うっかり力を込めすぎると簡単に壊れてしまうな。
面倒だ、すこし頑丈にしておくか。
それにしても虫けらにしては見事な造形物だ。
我の所有にしても遜色はなさそうだ。
頂いておくか。
その日以降、魔族の姿を見るものはいなくなった。
「ルイス様、まもなく魔族領です、気配をもっと消してください」
「む、しかしフェルトよ。これ以上気を消すと不意打ちに対応が出来なくなる」
「大丈夫です、気配のしない防御魔法を広めに展開しています、私たちに敵意を持って近づけばわかるようになっています」
「凄まじいなフェルト。わかった。」
ルイス様はよく私を褒めてくださるが、この人も相当だ。
勇者の称号は伊達ではない。
その身体能力、マナへの適合、ヒューマンとは思えない魔力総量、格闘センス。
どれをとってもヒューマンとは思えない。
多少お父様の力が働いていると言っていたが、私の目算ではあくまでも時間的制限があるはず。
私や姉妹たちはお父様の血が常時流れているために、恒久的に能力が底上げされているのだろうけど、あくまで体の関係を持っただけであれば一時的と考えるのが自然だ。
つまり、この人は通常時が異常なのだ。
「フェルト、おかしくないか」
「どうしたのですルイス様、私の結界には何も…」
「こんなにも魔族の領地に入っているのに、なぜ誰も何も来ない」
確かに、言われてみればおかしい。
魔族はエルフと違って結界による防御魔法が使えない。
だから城や門を作って見張りを立てている。
もはやその門の目と鼻の先にいて、見張りもなし。
それに静かすぎる。
魔族の話す言語は二つあるらしく、人型の魔人語と獣型の魔獣語らしい。
特に魔獣語はとても大きな音を使うので、ここまで何も聞こえないとなると魔獣語が話せるものが一切いない事になる。
いずれにしても不可解極まりない。
「さすがですルイス様、確かにおかしい。少しだけ結界の範囲を広げて、辺りを探ります」
ルイス様は私なぞの褒められて、うれしそうだ。
それはそうと結界を少しずつ、慎重に広げていく。
もし気配を隠して奇襲をかけようとしていても、私の結界に少しでも触れればわかる。
ゆっくり、気取られないように…
ずいぶんと広げてみたが、何もない。
「ルイス様、何かあったとしかわかりませんが、少なくてもあの先までは誰もいません。」
「そうか、では進むとしよう。まだ間に合うかもしれない」
ルイス様は目にも止まらない速さで走り出した。
私では絶対に追いつかない速さ。
隠すようにお願いしたマナも前回に近い、体は発光している。
体力には自信がないが、それでも力の限り駆け出した。
「今の私に何が出来るかわからないが…」
この感じ、ドワーフの里に似ている。
ただ死体がまったくない点は同じではないが。
嫌な予感がする。
そしてその予感は最悪の形で当たってしまった。
いや、むしろ凌駕していた。
『ほう、貴様。虫ケラにしては面白いマナゲインをもっているな。おそらくは***の使徒。いやその一端を担っているのか』
その男は間違いなくあの男であると見間違うわけもない。
が、その話方が、雰囲気が、気配が何もかもあの男とは違う。
ドワーフの里で暴れ倒した獣のような状況とも違う。
「はあはあ、ルイスさ、ま」
「来るなフェルト。あれはお前の父親ではない!」
フェルトは強い。
有能だ。
しかしそれは戦闘面よりも補助的な意味で壮絶であり、圧倒的な戦闘力はない。
これは勇者としての直観がいう。
目の前のあれは人知を超えた存在。
本能的に相対してはいけないと血が拒絶している。
『理解はしているな、虫けらよ。***もおぞましいものを作りおる』
「貴様!魔族はどうした!」
『魔族?この周辺にいた虫けらならば駆除が済んでおる。それ以外は何かいたか?』
「外道め!」
戦うべきではない。
そう本能が、感覚が私を形成するすべての細胞が拒否している。
勝てる勝てないではなく、背いてはいけない。
してはいけない事をするような罪悪感のような背徳感を押し寄せてくる。
「ルイス様、あの御仁は」
「お前の父親だったものだフェリス。が、今は違う。出来る限り離れろ」
あれがお父様?
確かに黒髪、黒目で私と身体的特徴が似ている部分もある。
でもなんだか変だ。
そのまなざしが。
オーラが。
私に対するありとあらゆる感情が皆無。
無関心とは違う、その辺の石と同価値のような。
『ん?お前、この男の子孫か?かすかだが同じゲインを感じるな』
急激な関心。
私は、これまでの人生で味わった事のない幸福感と使命感と本能を感じる。
私も感じる、目の前の男の人が自身の父親である事。
自分はこの人のために生まれてきたという事。
必要とされたい。
役に立ちたい。
私のこの力は全てこの人の為に使うために用意されたものだと確信する。
「おい!大丈夫か!」
ルイス様に声をかけられて我に返った。
私は今、何を考えていた?
「気をつけろ、あれはヒトではない」
確かにそう感じる側面もある。
神々しく、それでいて邪悪な。
『ほう、虫けらの分際で我を語るか、気分が悪い。消えろ』
圧倒的なまでの存在感と、形容しがたいまでの恐怖。
それでいて、人生まるごと差し出したいほどの包容力。
『…む、血に反応したのか。まあいい。この地も飽きた。』
それは、意味不明な事を言いながら眩い光を放ち、姿を消した。
「行ってくれたか…いや、私は勇者としてあれを止めなければいけない。が、ドワーフの時とまた様子が違ったぞ」
「おそらくはまったくの別要因。お父様は進化をしている?」
「私もわからない。だが間違いない事もある。このままではこの星の生物は絶滅をするぞ」
「お父様の状況がまったくわからないからこそ、この場所の状況からしっかりと調べる必要があります。ルイス様のいう通り、ドワーフ族虐殺と時に状況が違うなら何が要因で、原因は何か。そこにお父様奪還の糸口があると思います」
私たちは魔族の国を調べたが、誰もどこにもいない。
私の結界魔法を使って気配を探ったが、反応がない。
ひとつ可能性が残るとすれば、お父様と妹が脱出した秘密の通路。
場所はさすがにわからないが、何か痕跡が残っていれば私の結界魔法を応用して追跡する事も出来る。
が、城の中はまったくのも抜け。
ひとつの遺体もない。
「あいつは殺した相手をどうしたのだ」
「魔力の気配もありません。仮説すら立てられませんが、何か私たちの知りえない力をもっていたとしか」
「だとしたら、私はどうあいつを止めればいいのだ」
「ひとまず、脱出路を探しましょう。使っていないならそれで別の可能性を考えてみます。そうとう骨が折れそうではありますが」
私たちはしばらく魔王城で時間を過ごす事になった。
『貴様、我の力に抵抗するとはやはり***の死徒か』
何を言っているかわからない。
急に真っ暗な闇の中で、眩い光を感じた。
それは大切なもので、取り戻したいナニカだったと思う。
それをなんとかして守りたくて、手を伸ばした。
光には届かなかったが、少しずつ光に近づく事で周りが見えるようになっただけだ。
今、この瞬間目の前にはあの草原地帯。
『まあよい。我の知識を消化しきったとでも言っておこう。そもそも我は見たいだけだ。好きにすればいい』
確か俺は魔族の国を目指していたはず。
急ごう。
『くくく』
頭の中であいつが笑っているように思ったが、今は何もわからない。
ひとまずは進もう。
やっとの事でたどり着いた魔族の国は一度ヒューマンに落されたとは思えないほど、
栄えていた。




