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異世界で英雄な俺。パート5


「いきましょう!お父様!」

アリアの屈託のない笑顔、その直前までの雰囲気が嘘みたいだ。

いやこれは間違いなくアリアは無理をしている。

何事もないと振舞ってくれている。

俺はどうする。

このまま流して先に進むべきか。

アリアの状態を後伸ばしにしてよいのか。


思えばこれまでずっとアリアに無理をさせてきた。

俺が弱いばかりにずっとだ。

それが自分でも戦えるようになって、少しは役に立てるようになった途端これだ。

今までのことを薄っぺらくして、これからは任せろとでもいうのか。


今はルイスがいる。

こいつがどこまで協力してくれるかわからないが、たぶん悪い奴ではない。

性根が勇者なのだ、困った人をそのままにしておけないタチだろう。

ちょっと素直じゃないけど。


だからなんだ。

だからアリアは後ろに下がってろというのか。

あんまりではないか。

今まで散々利用しておいて、必要がなくなったらポイか。

もしかすると聡明なアリアの事だからルイスの加入を経て、自分がいらなくなるとそう思ったのではないか。

賢いアリアなら十分にあり得るし、たぶんそうだ。


ならば俺がアリアに掛ける言葉はこれしかないだろう。


「アリア」


「はい」


「これからもずっと、頼む」


先ほどのアリアの笑顔もよかったが、今回はもっと良い。


はじめて年相応の笑顔が見れたような気がした。


俺は心に強く、強く誓う。


アリアに助けてもらったこの恩と愛を生涯忘れない。




お父様が変だ。


まるで私の心の中を見たのかと思うほど、今この時にほしい言葉をくれた。

嬉しいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしい。

幸せしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせしあわせ。

やはりお父様こそ至高。

この世の絶対神であると同時に世界そのものでもある。

お父様が黒というならこの世界はすべて黒くなければいけない。

幸運な事にそのお父様は私のお父様である。

つまり私はお父様の娘であり、お父様にもっとも近くはないが、

近しい存在である。

お父様がお優しいのは私が娘であるから、他人とは絆のレベルが段違い。

むしろ次元が違う。

私はお父様の特別であり、嗜好品。

神であるお父様に望まれたい。消えろというのなら喜んで消えたい。

むしろお優しいお父様から強い言葉で命じられたい。

え、もしそうなったらどうしましょう。

ええ、さすがにお優しいお父様の事、私に消えろなんて言わない。

でもでも、少し強い言葉で呼ばれたり、なじられたりしたい。

そうしたら私…もう無理かもしれない。

お父様と一生居たいし、もう一部になりたい。

あれ、どうすれば一部になれるのだろう。

そうか、ずっと繋がって離れなければいいのか!

なーんだ簡単だ!昨日と一緒って事だ。

でもまって、じゃあもう私は神であるお父様の一部って事?

そうか、もう私はお父様と一生一緒なんだ!

え?でも今離れていない?

繋がってないよね、これってどういう事?私とお父様は別々?は?無理なんだが。

私は常にお父様の一部でなければいけないのに、くっついていなければいけないのに、とりあえず今はその逞しくも神々しい神の左腕の一部になろう。


「お父様だーい好き」


よかった。

アリアがたぶんいつも通りっぽい。

俺のセリフは間違っていなかったようだ。

心なしかアリアの目がいつもより蕩けているように思ったが気にしすぎだろう。


「仲直りはすんだか?」


「そもそも喧嘩してないし、私がお父様のご意見に反対するなんて絶対にないし、仮にそうしなければいけない状況なら即時自害するわ」


「大層なことだ、落ち着いたなら先に進むぞ、世界が私を待っている!」


ルイスは待ちきれないと先にどんどん進むし、そのあとを足早に進もうとするけどアリアがくっついて上手く歩けないし、ルイスのことを考えると気持ちもわかるし、アリアに邪魔なんていえないし。


「…詰んだか」


「何を積んだのですかぁ?お父様ぁ」



先ほどは年相応に感じたアリアが幼児退行している?


「ねえねえお父様ぁアリアの事無視しないでぇお話してぇ」


これまでの極度の緊張感から過度のストレスが限界を突破。

そこに最上の喜びが加わった事で理性が崩壊。

これまで厳格に律してきた自意識が消滅。

これまでも母親からも厳しく躾を受けてきており、およそ甘えた事などなかった。

それも厳正なる血筋からと本人は納得しており、むしろ喜んでいた。が、

ここにきて無常の喜びである無償の愛を実感。

それを自身も体現をしたてしかたなくなってしまった。


結果


アリアは10歳程度の思考になった。



「お父様お父様」


「はいはいアリア」


「えへへ、お父様は私のお父様でしょー?」


「うんそうだね、アリアのお父さんだよ」


「違うでしょ!アリア、だけ、のお父様でしょ!」


「うーん、そうかな」


「ち…違うの…?」


「ああそうだよ、アリアだけのお父さんだよ」


「ええ!やったぁ、アリアだけのお父様だ!ほんとにほんとだからね!」



アリアがやばい。

たぶん今までの心労がたたり、限界がきたのか。

まあ行き過ぎではあるが、今までが大人すぎたのだ。

アリアを甘やかす事はやぶさかではないし、むしろしたいが行き過ぎではなく異常だ。

もう今までのアリアと同一人物と思えない。

可愛いよ?それはかわいいけど、なんというか子供すぎる。

ルイスもあきれているし、どんどん先に進んでいくし、何度か先で待っていてくれたけど、そのたびにすごい形相で見てくるし、それもいつ限界を迎えるかわからない。


「お前の娘、そんなだったか?ちょっと変だぞ」


これはちょっとではない。

今までのアリアをお前は知らないからそんな態度でいれるのであって、

俺は今まさにパニック。


「ちょっと変ですってぇ!このおばさん!」


「お…おばさん!」


まずい!


「おばさんってなんだ」


ルイスでよかったってことだよ。



つい先ほどのシリアス展開から急なコミカル展開。

暗いよりはいいかと思っていたが、ようやくドワーフの里に到着し、イシスが困り果てていた。


「お前たち…どうしたのだ」


ずっとマッパのルイス、もはや赤ちゃんのアリア、そしておれ。


「説明は…お主にお願いするほかあるまい、それと勇者よ服を着ろ」


「この光っている状態が好きなのだ!鎧を着ると少し暗い!」


「もうよい、勇者を連れていけ、気に入る服をさがしてやれ」


イシスの取り巻きがルイスを連れていく。

一瞬不安そうな顔を俺に向けたが、イシスは信用できる。

俺は頷き返した。

「して、聡明な娘はなぜそうなっている、先日はいつも通りだったが、勇者が裸体であることと何か関係があるのか?」


ない、わけではないのか?

わからん。



「貴様では話にならんということか」


「こらあ!お父様を悪くいくな!この…」


おっと危ないと口をふさぐ。


「これは本当に重症だな」



状況を整理する前に一度落ち着く必要があると、時間と場所をくれた。


俺たちは本当に久しぶりに柔らかいベッドによこになれる。


それぞれ別の部屋を用意してくれたが、アリアが固くなに俺と同じ部屋を希望し、今も一緒にいる。

俺もこのアリアが嫌いなわけではないが、いつもと違うという点で心配している。

せっかく時間をもらったし、きちんと向き合わなくては。



「お父様…?」


「アリア」


「お父様…好き」


そのまま押し倒されてしまった。

即座に拘束魔法が発動。


俺は、アリアのされるがままとなった。


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