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絶望にもなり得る

 流観はショッピングセンターがどうなっているのか、一目見ようと走り出した。


 走っている間、流観は目の前に広がる光景が、少しづつ、変わっていることに気がついた。それは当たり前の変化ではなく、突拍子もないこと。皆が気がつくはずのものであって、一人しか気がついていないこと。


 近くにあった石が急に消えた。看板に書いてあった病院の広告がショッピングセンターの広告に変わった。目の前を走っていたトラックが消えた。


 流観は既に最高潮であった自身の興奮が限界を超えてさらに高まっていくのを感じた。


 目的地へとたどり着いた流観は、すぐに中へと入っていった。都会に初めて来た田舎者のように、あたりをキョロキョロと見回し、はしゃぐ。


 別に流観が田舎者というわけではない。むしろそこそこ都会人な方ではあるし、このようなショッピングセンターであれば隣町で何度も行ったことがある。重要なのは、昨日までこの町にショッピングセンターは一軒もなかったのだということ。


 昨日まではなかったというのに、もう既に出来てから何年もたっているような風格を持つ建物が存在しているという点が流観をはしゃがせていたのだ。


 中を回っていく流観。中に入っている店は、特別というわけでもなく、普通の店だった。もっとすごいものがあるのではと想像していただけに、そこそこ普通であったことを知った流観の興奮は少しづつ収まっていった。


 結局流観はショッピングセンター内をぐるりと回り、いくつかの店に入った後に家へと帰っていった。



 夜のリビングで、流観は母と話す。


「もうほんとすごかったんだよ!メッセでもうそのこと言ったかもしれないけど、昨日まで見たこともなかったショッピングセンターがいつの間にかあって!めっちゃ興奮した!」

「うーん、私の中ではもう何年も前からあれはある感じだし、なんとも言えないけど……面白そうね!誰も気がついていない中で、自分だけが気づいてる!ああ、非日常!いいわねー」

「あれ?ご飯のおかずが変わってる!さっきまではハンバーグだったのに!」

「まったくもう、何言ってるの?さっきからずっとキャベツの煮物だったじゃない。もしかしてそれもさっきから過去がなんだって言ってたやつ?」

「うん、そうだよ!絶対にそう!」

「まあ、それはすごいわね!少ししたらまた何か変わってたりするの?私も体験してみたいなー」


 子供の話を信じる親。そこそこ当たり前のことではあるが、このような話を信じるというのはなかなかに珍しい。しかし母親はそうでも父親はそうでもないようで、


「うちの娘は大丈夫なのか?昔からあんなのではあったけど、流石に……」


 などと言っている。しかし当然あの母娘の耳にその言葉が届くはずもなく、そんな状態のまま時川家の夜は更けていった。




 流観は眠っている間に、夢を見た。


 夢の中で流観は、赤、青、黄、緑、橙とひとつの色が現れては別の色に目まぐるしく変わる、そんな夢を見た。それは流観の非日常を求める気持ちが表れているようで、流観にとっては楽しいものだった。


 しばらくの間それは続いていたが、ある時、流観の中の世界は一変した。少しづつ周りが暗くなっていき、心の内が不安で満たされた瞬間、いつの間にか一面が黒で染まった。見渡す限りの黒、黒、黒。流観は何も見えなくなり、そのまま黒に塗りつぶされた。


「っ……はあ、はあ……なんだったの……」


 流観は息を荒らげながら目を覚ました。悪夢を見た、と流観は考え、気持ちを落ち着かせるために朝ごはんを食べることにした。


「おっはよー……あれ?」


 いつもならば親がいるはずの時間であるというのに、誰もいない。例えいなかったとしても、いつもならば用意されているはずの朝ごはんがどこにもない。


 どこへ私の両親は行ってしまったのだろう、と流観は両親を探し始めた。


「お母さーん、お父さーん、いないのー?」


 見つからない。もう既に出かけてしまっているのだろうか、仕方ない、自分でご飯作るか、と流観は考えた。そして適当なご飯を作り、食べ始めた。


 食事を終えた流観は、嫌な予感がしていた。自身の家族に何かがあったのでは、と。流観はそんなはずはない、とその考えを振り払い家から外へ出た。


「おはようございます。あの、私の両親を見かけませんでしたか?朝からいなくて」


 近くにいた近所の人にそう話しかけると、その人は少し驚いた顔をし、その後に悲しそうな顔をした。


「そっか……まだ一ヶ月もたってなかったもんね。まだ整理がついてないんだね」


 ここから先は聞いてはいけない、自分の平静が保てなくなる。流観の心の内で、警鐘が鳴る。しかし流観は動くことができなかった。


「もう、あなたの両親は……」


 まさか、そんな、嘘だ。そんな言葉が流観の中を駆け巡る。


「この世で生きていないのよ」

「嘘だ、そんばはずない。昨日の夜私はお母さんとお父さんと話した!生きてたんだから!」


 流観はすぐさま自身のスマホを取り出し、メッセージアプリを開いた。昨日母に送ったメッセージがあるはずだ、あるはずなんだと必死になって探す。


 何度見返しても、流観は母、そして父とのやり取りを見つけることができなかった。見つかったのは知り合いの心配する声、それも両親が死んだことで悲しむ流観を励ます内容ばかり。


「どうして、どうして見つからないの、どうしてっ……まさかっ、まさかそんな、そんなことって、そんな……」


 流観はわかってしまった。なぜ、周りが両親がもう生きていないと言ってくるのか。なぜ、自分は昨日まで生きていたと認識していたのか。それは今まで起こってきた現実が変化する現象、それが親の命で行われただけだったのだと。


「どうしてっ……私はこんな非日常求めてなかった!お母さんを、お父さんを返してよ!返してよ……」


 流観の悲痛な叫びは、虚しくこだまするだけであった。


「とりあえず……家に戻って落ち着こうか?」


 流観のことを見かねた近所の人が、流観を一旦落ち着かせるために家に戻るように促した。


しかし放心状態にある流観の耳にそんな言葉が入ってくるはずもなく、しばらく流観はその場で立ち尽くしていた。

個人的に自分が中二病患ってんなあと思いました。あとはセリフいっぱい入れると文字数がすごく増やせるんだなと気が付きました。


どうやったら毎回何万字も書けるんですかね

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