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だから、後悔のないように

 立ち尽くしている間、流観の頭の中は自己嫌悪で埋め尽くされていた。


 何が非日常だ。母を殺してしまっただけではないか。何が非日常だ。父を殺してしまっただけではないか。私は何を喜んでいたんだ。こんな恐ろしいことになるかもしれないということは少し考えればわかったはずなのに!


 そんなことを考える流観であったが、しかし考えてみると、たとえ流観がこうなることを知っていようといなかろうと、結果は同じだっただろう。


 だがそんなこと流観には関係ないようで、もっと、もっとなにかしてあげれたはずなのに!と結果よりも更に過程を後悔している。


「あ……ああ……」

「ちょ、ちょっと大丈夫なの?」


 ゾンビのようにゆらりと動き出した流観は、近所の人の心配の声を無視して家へと戻っていった。


「わ……私……どうしてっ……」


 流観は泣きたくてたまらなかった。喚いて叫んで涙を流して、後悔に押しつぶされそうな心を少しでも軽くしたかった。しかしどうしても泣くことができなかった。涙が出てこないのだ。


 それは後悔から逃れようとするのを体が拒絶しているようで、流観が感じる後悔はさらに重くなった。






 何日もの間、流観は家に引きこもった。ろくに食事もしないで、何日も。流観の体はやつれ、顔色も悪かった。


 しかしどれだけ苦しもうが、流観の中の後悔は消えなかった。むしろ増すばかりであった。


 二人の少女が流観の家へとやってきた。流観の友人の琴音と香奈見である。二人はいつになく暗い表情をしていたが、流観の家の前へたどり着くと、力強い表情をした。


「流観!出てきなさいよ!そんなずっと引きこもって!そんなんじゃ、いつまで経っても立ち直れないよ!」

「そうだよ、流観ちゃん!みんな待ってるよ、戻ってきてよ!」

「うるさい!」


 ベランダから顔を出した流観が、二人の言葉の続きを遮るように叫ぶ。


「私だってわかってるよ!戻らなきゃいけないことぐらい!でも、ダメなんだよ!私のせいで、誰かが消えるんだ!私のせいで、お母さんは、お父さんは死んだんだ!私がわかるから、死んだんだ!だから私と関わったら、いけないんだ!私が、私が、私が……」

「違う!流観のせいじゃない!流観のお父さんとお母さんは事故で亡くなったんでしょ!」

「違う、違う、違う!」

「流観ちゃん!」


 香奈見に名前を呼ばれ、ビクンと体がはねたあと、流観の顔がさらに曇る。


「……ほんとは、わかってるんだよ。私が何をしようと、結果は変わらなかったんだってことは。……でも!……それでも、私はお母さんとお父さんに何かできたはずなんだ!なのに、何もできなかった!……後悔が、後悔がどんどんとふくれあがるんだよ!こんなこと、私が関わった人みんなそうなったら、私は!」

「だったら、後悔しないようにすればいいじゃない!」

「だから!……だから私は後悔をしないように、誰ともかかわらないようにしているんじゃない!私のせいで誰かが傷ついて、そのたびに私が後悔するよりは、ずっとマシよ!」

「私たちが傷ついても、流観ちゃんのせいじゃない!」

「そうよ!私たちがどうなっても、それは流観の責任じゃない!……だから、怖がらずに、出てきてよ。流観のお父さんとお母さんだってこんなこと望んでないよ」


 二人の言葉に目を見開き、ハッとする流観。流観は家の中へと戻っていき、しばらくバタバタと音がした後、出てきた。


「ごめん、そうだよね、お母さんも、お父さんもこんなこと望んでないよね」

「そうだよ、流観……」

「私たちは、何があっても流観ちゃんを恨んだりしないよ」


 涙を流し、抱き合う三人。


「……でもさ、もしみんながどうにかなったら、なんでもっとなにかしてあげられなかったんだろうって、絶対に毎回思って、毎回後悔すると思うんだ」


 表情を暗くした流観が言う。


「一緒にいるだけでもみんな救われるよ、流観ちゃん。だからさ、後悔のないようにめいっぱい今を過ごそうよ」

「いつか終わりが来るなんて当たり前なんだよ?たとえどんな理由があったってそうなんだから、ね」

「……うん!」


 流観はニコリと笑った後、ゆらりと揺れて琴音に倒れかかった。


「大丈夫かな、流観。こんなにやつれちゃって。私たちにはわからないことで悩んでたっていうのはわかるんだけどね」

「私たちは流観ちゃんのせいだー、なんて本気で言わないのにね」

「冗談では言うけどね」

「それもそうだ」


 琴音と香奈見の二人は、流観を、寝かせるために家の中へと運びながら笑い合った。




 夢の中で流観は、暗闇に染まっていた世界が明るく照らされるのを感じた。


 流観は、先へ、前へ進もうという決意を固めた。変化などもう求めない、私は自分の力でこの先を切り開いて進んでゆくのだと。それこそが、琴音が前に言っていたような非日常、真の非日常なのだと考えて。


「うぁっ」


 流観は口の中に入ってくる何かを感じ取ることで目を覚ました。


 なんなのだ、と目を開くと、そこにはスプーンを持った琴音の姿があった。


「やめてよ琴音、私は弱って寝てたんだよ?最悪の目覚めだったよ」


 最悪の目覚め、と言ったが、本心では流観はそこまで嫌がってはいなかった。数日前に体験した悪夢からの目覚めと比べると全く別の、じゃれあいのようなものだからだ。


「ごめんごめん、じゃあわざわざ材料買ってきて作ったこのご飯はいらないんだね。私、悲しいよ」

「いやそういう問題じゃないでしょ」


 楽しく話をしながら流観はご飯を食べさせてもらう。そこで香奈見がひとつ疑問を投げかける。


「ところでさ、なんで流観ちゃんのせいで誰かが傷つくー、なんて言ってたの?」

「うーん、そうだなあ……秘密、かな?」

「えー、どうしてー?」

「私のせいで、っていうのは本当にそうってわけじゃないっていうのはわかってたんだよ」

「じゃあ」


 香奈見の言葉を遮るように、流観は続ける。


「どうしてこうなってしまったのか、その原因をしているからこそ、どうにかできたんじゃないかって思っちゃって、でも何もできなかったんだろうなとも思って」

「でも、流観ちゃんのお父さんとお母さんは事故で……」

「そうだけど、そうじゃない。たぶん言ってもわからないし、言わなくたっていい。だから秘密」


 琴音と香奈見は顔を見合わせ、何かを決意したような顔をした。そして琴音が口を開いた。


「私たちは、ずっと流観と友達だから。だから、一人で抱え込まないで」


 その言葉に、流観はクスリと笑って、言う。


「さっきも聞いた気がするよ、そんな言葉。でも二人とも、もう心配しなくても大丈夫だって。お母さんもお父さんも私がずっと立ち止まってるのは望んでないんでしょ?それに、あれだけ関わらない関わらない言ってたのに関わったんだよ?後悔したくないし、とことん一緒にいるからね」


 三人はこれから先も一緒にいよう、と誓い合った。





 世界は常に小さいものから大きいものまで、様々な変化をしている。その変化にほとんどの人間は気づくことができない。


 では、気づくことの出来る人間はどう生きていくのか。大切な何かを変化が原因で失った時、どうするのか。


 どんなことがあったとしても、忘れないでいて欲しい。変化してしまったらもうどうしようもないことだってあるのだ。だから、後悔だけはしないように、今を生きなければならないのだ。

おおまかな流れは考えていたのですが、一部勢いに任せて書いたので支離滅裂な部分があるかもしれません。


あとは文字数が増えないのでどうにかして増やせるようにしたいです。


大まかな内容しか考えてないので設定とかはあんまり考えてないです。


ついでにいうと最初の数千字を何ヶ月か前に書いて、そのあとそのままにしておくとなんかなあと思って書いたものなのでおかしな点がまあまああると思います。まあ文字数少ないんであんまり関係ないですけど。

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