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ミニ四駆続けていたら人生が変わったでござるの巻  作者: さかざき


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8/14

ルーツ

ジョンがミニ四駆を始めたのは、社会人になったばかりの頃だった。


23歳。


もともとプラモデルが好きだった。


戦車やガンプラに城。


休日になると机に向かい、静かに組み立てる。


塗装して、乾くのを待つ。


それだけで時間が過ぎていく。


そんなある日、模型屋で小さな箱を見つけた。


ミニ四駆。


店の奥では子どもたちがコースを囲んでいた。


アニメも始まったばかりで、店の中は少し騒がしい。


棚に並ぶ箱の中で、ジョンは1つのマシンに目を止めた。


エンペラー。


「皇帝……でござるか」


値段は600円。


アニメの主人公マシンということでなんとなく買った。


家で組み立てて、近くのコースへ持っていった。


走らせる。


それだけだった。


でも――


思ったより楽しかった。


モーターの音。


コースを駆け抜けるスピード。


気づけば夢中になっていた。


しかし。


速くならない。


パーツを買った。


軽量化もした。


おすすめのモーターも使った。


それでも。


子どもたちのマシンに勝てなかった。


「拙者の方が金をかけているはずでござるが……」


アニメを何度も見返した。


コロコロコミックも読み返した。


それでも答えは出なかった。


仕事もうまくいかなかった。


社会人1年目。


毎日怒られた。


頑張っても、なかなか上手くできない。


ミニ四駆も同じだった。


でも――


ミニ四駆は楽しかった。


仕事と違って怒られることはない。


うまくいかなくても。


どうすれば速くなるのか。


それを考える時間が、楽しかった。


やがて。


アニメは終わった。


ブームも静かに去っていった。


模型屋からコースは消え、


ミニ四駆の棚も少しずつ小さくなっていった。


それでも。


ジョンのミニ四駆の熱は消えなかった。


1人で続けていた。


パーツを買い、走らせ、考える。


ただそれを繰り返していた。


ミニ四駆を扱う店も、少しずつ減っていった。


コースを置く店も、ほとんどなくなった。


そして最後に残った場所が――


駄菓子屋「みつば屋」だった。


店の奥に、古いコースが1つだけ置いてある。


灰色の2レーンコース。


少し大きめのオーバル。


それがジョンのホームになった。


ブームはもう終わっていた。


それでも。


ミニ四駆で遊ぶ子どもが、まったくいなくなったわけではない。


たまに。


ぽつぽつと走らせに来る子がいた。


ある日のことだった。


ジョンはコースの端に立っていた。


モーター音が聞こえる。


子どもが数人、マシンを走らせていた。


何気なくコースを眺める。


その中に。


見慣れないマシンがあった。


「……?」


ジョンは目を細めた。


モーターが、前にある。


「子どもが……FMでござるか」


そのマシンは速かった。


コーナーを抜ける。


立ち上がりが鋭い。


見たことのない走りだった。


ジョンは黙って見ていた。


次の日も。


また別の日も。


その少年は、みつば屋に来ていた。


マシンを走らせている。


ジョンはコースの端に立っていた。


走り方を見る。


コーナーの入り方。


ジャンプの着地。


何度見ても理屈がわからない。


「……妙でござる」


ジョンは何年もミニ四駆を考えてきた。


それでも。


目の前のマシンの速さの理由がわからない。


ある日。


ジョンは思った。


(聞いた方が早いでござるな)


そして。


その少年に声をかけた。


「やあ、そこの……ミニ四駆、詳しいでござるな」

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