緊張の告白
それから2人は、よく食事に行くようになった。
丸井はミニ四駆の話をする。
昔の仲間のこと。
大会のこと。
あの頃の熱。
美咲はその話を楽しそうに聞いていた。
代わりに、美咲は音楽の話をした。
好きなバンド。
ライブの話。
昔から聴いている洋楽。
丸井は頷きながら聞いていた。
「覚えておくでござる」
数日後。
丸井の服装が少し変わっていた。
新しいジャケット。
新しい靴。
美咲はすぐ気づいた。
「それ、もしかして」
丸井は少し照れたように言った。
「例のバンドの人と似た服でござる」
美咲は思わず笑った。
「覚えてたんですね」
「当然でござる」
丸井は真顔で言う。
「好きなものは覚えるでござる」
それからだった。
美咲は時々、丸井に服のアドバイスをするようになった。
髪型。
アクセサリー。
メガネの形。
丸井は意外と素直に聞いた。
ある日の帰り道。
駅の近くで2人は立ち止まった。
少し沈黙が流れる。
美咲は緊張して言った。
「丸井さん」
「んむ」
「私、丸井さんのこと好きかもしれません」
丸井は一瞬、固まった。
「……拙者でござるか?」
美咲は笑った。
「丸井さん以外いません」
しばらく沈黙が続く。
それから丸井はゆっくり言った。
「拙者も」
「佐倉殿と話す時間は何事よりも好きでござる」
それが。
2人の交際の始まりだった。
ただし。
職場では秘密にしていた。
会社では今まで通り。
丸井は丸井のまま。
ござる口調の社員。
ただし。
最近は少し変わった。
髪型。
服装。
雰囲気。
それに気づく女性社員も増えていた。
「丸井さん、今夜飲み行きません?」
「申し訳ない」
「予定があるでござる」
「また断られた」
女性社員たちは笑う。
美咲はその様子を少し離れた席から見ていた。
(ごめんなさい)
少しだけ思う。
でも。
悪い気はしなかった。
丸井はパソコンに向かっている。
その横には、いつものメモ。
モーター
タイヤ径
美咲は小さく笑った。
(やっぱり)
(変わってない)
そして思った。
(でも)
(少しだけ)
(私だけが知ってる)
純一さんのことを。




