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ミニ四駆続けていたら人生が変わったでござるの巻  作者: さかざき


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5/14

さりげない優しさ

美咲の歓迎会は、少し遅れて開かれた。


場所は会社近くの居酒屋だった。


最初は席も決まっていて、美咲は課長の隣に座っていた。


「前の会社では、データ管理はどうしてた?」


「はい、紙が中心でした。必要なものだけパソコンに入力する感じで」


「なるほど。うちもまだ紙が多いけど、これから少しずつ電子化していこうと思っててね」


上司の話を聞きながら、美咲は笑顔で相槌を打つ。


一方。


店の奥では、丸井の周りが妙に盛り上がっていた。


いつもの男子社員たち。


そして。


最近になって急に話しかけるようになった女子社員たち。


「丸井さん、何か頼みましょうか?」


「まだ大丈夫でござる」


「どんな女性がタイプなんですか?」


笑い声が上がる。


美咲はその様子を少し離れた席から見ていた。


(人気者だな)


歓迎会も進み、


料理も一通り出て、


会話も落ち着き始めた頃。


誰かが外に出てタバコを吸い、


誰かがトイレに立ち、


席は少しずつバラバラになっていった。


その時だった。


丸井が近づいてきた。


「佐倉殿」


美咲が顔を上げる。


丸井は少し身をかがめて、小さな声で言った。


「窮屈ではないでござるか?」


「歓迎会の主役の席は、だいたい楽しめない場所でござるからな」


そう言って、周りをちらっと見た。


課長が席を外している。


丸井は少しだけ笑った。


「拙者は、ああいう席が苦手でござる」


美咲は思わず笑った。


「ちょっとだけ、そう思ってました」


丸井は軽く頷いた。


「やはりでござるか」


「もう終盤、肩の力を抜いて自由にするでござる」


それだけ言うと、また元の席へ戻っていった。


歓迎会はそのまま、ゆるく終わった。


店を出ると、夜の空気は少し冷たかった。


「お疲れさまでした」


「また来週」


社員たちはそれぞれ帰っていく。


その時。


美咲は気づいた。


丸井と帰る方向が同じだった。


「丸井さん」


「んむ?」


二人は並んで歩き始めた。


少し沈黙が続く。


美咲は思い切って言った。


「丸井さんって、ミニ四駆お好きなんですか?」


丸井が立ち止まった。


「……え?」


驚いたような顔だった。


「なぜ、それを」


美咲は少し笑った。


「机のメモです」


「見ちゃって」


「最初は何のことかわからなかったんですけど」


「弟が昔、ミニ四駆やってたんです」


「それで気づきました」


丸井はしばらく黙っていた。


それから、少しだけ笑った。


「そうでござったか」


そして歩きながら話し始めた。


ミニ四駆のこと。


あの時、出会った不思議な少年たち。


楽しい毎日で情熱を注いだ日々。


「しかし今は」


丸井は空を見上げた。


「ミニ四駆の世界も、だいぶ静かになってしまったでござる」


「それが、少し寂しい…」


美咲はその話を聞いていた。


楽しそうに。


(この人……)


(昔から芯がある人なんだ)


美咲は思った。


自分の趣味と少し似ている。


美咲は音楽が好きだった。


洋楽。


少しマイナーなバンド。


ずっと追いかけている。


流行とは関係なく。


好きだから聴いている。


「なんだか」


美咲は言った。


「私の好きな音楽と似てるかもしれません」


丸井は聞き返した。


「音楽?」


「はい」


「好きなものを追いかける感じ」


丸井は少し笑った。


「なるほど」


「それは素敵でござるな」


美咲は思った。


ミニ四駆なんてやったこともない。


詳しくもない。


でも。


丸井の話は、面白かった。


それからだった。


2人は、時々一緒に食事をするようになった。


丸井はミニ四駆の話をする。


美咲は音楽の話をする。


2人はお互いの趣味を理解しながら、


少しずつ仲を深めていった。

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