表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミニ四駆続けていたら人生が変わったでござるの巻  作者: さかざき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/14

いつまでも

テーブルの笑いは、しばらく止まらなかった。


コウスケはまだ肩を震わせている。


「いやー……」


「今年一番笑ったかもしれない」


丸井は笑いを抑えてため息をつく。


「もう勘弁してほしいでござる」


ユリが肩を振るわせながら言う。


「だって面白いんだもん」


美咲もまだ少し笑っていた。


「純一さん、面白すぎる」


丸井は小さく言う。


「若気の至りでござる」


少しして、テーブルの空気はゆっくり落ち着いていった。


料理の皿も、ほとんど空になっている。


ユリが箸を置く。


「なんかさ」


「この空気、懐かしいね」


コウスケが頷く。


「ほんとそれ」


「5年経っても、全然変わんないな」


5人は、さっきまで大笑いしていた。


昔の話で。


ミニ四駆の話で。


子供みたいに。


美咲は知らない話ばかりでも心地よかった。


美咲がふと聞く。


「皆さんは」


「今はもうミニ四駆はやっていないんですか?」


その質問に、少しだけ間ができた。


最初に答えたのはコウスケだった。


「俺はやってないですね」


「まだ部屋にはありますけど」


「ユウと別の高校で部活ばっかりだったし」


ユリも頷く。


「あたしも」


「アメリカじゃ走らせる場所ないし」


「マシンは飾ってあるよ」


ユウが静かに言う。


「僕もほぼやってないですね」


「大会もなくなっちゃいましたし」


丸井は湯のみを持ちながら言った。


「拙者も」


「たまに触る程度でござる」


美咲は少し意外そうな顔をする。


「そうなんですね」


「純一さんの話を聞いていると、皆さんすごく熱中していた感じだったので」


コウスケが笑う。


「そりゃそうですよ」


「当時は本気でしたから」


ユリも少し懐かしそうに言う。


「毎週どこかで走らせてたもんね」


ユウが続ける。


「大会も多かったですし」


「街レースもありました」


美咲が首を傾ける。


「街レース?」


コウスケが説明する。


「非公式のレースですよ」


「店とか公園とかで勝手に集まってやるやつ」


ユリが笑う。


「今思うとすごいよね」


「よくあんなに走り回ってたなって」


丸井は少し遠くを見る。


「拙者にとっては」


「青春でござった」


その言葉で、テーブルが少し静かになった。


コウスケがふと思い出したように言う。


「そういえばさ」


「美咲さん」


「テレビチャンピオンって知ってます?」


美咲は頷く。


「知ってます」


「純一さんから聞きました」


ユリが笑う。


「ジョン、どれだけ話してるの」


丸井は照れながら言う。


「まあ……多少は」


ユウが言う。


「あれが一番大きかったですね」


コウスケも頷く。


「テレビ出演はインパクトあったよな」


美咲が少し身を乗り出す。


「実際はどうだったんですか?」


ユリが笑う。


「もうね、めちゃくちゃ燃えた」


コウスケが言う。


「あとカメラマンが何気に怖いんだよな」


ユウが言う。


「緊張してた記憶しかない」


丸井はゆっくりと言った。


「あの時拙者は思ったでござる」


「とんでもない場所に来てしまったと」


コウスケが笑う。


「確かに」


「あれは別世界だった」


ユリが少し遠くを見る。


「でもさ」


「楽しかったよね」


ユウも小さく頷いた。


「楽しかった」


ユリが思い出したように声を上げた。


「あー!テレビチャンピオンで思い出した!」


「テレビ出る前にチームの写真撮るってことで、みんなでコスプレしたの覚えてる?」


コウスケは思い出して反応する。


「あったなー!あの格ゲーのコスプレだろ?」


ジョンもユウも思い出す。


「懐かしいでござるな」


「結局テレビでは使われなかったやつね」


ユリが続けて喋る。


「あたし、あの写真みんなに渡さないまま持っていっちゃったから今日みんなの分持ってきたんだ」


「美咲さんはジョンと見てくださいね」


写真を見ながら、またあの頃の話に花が咲く。


コウスケが言う。


「あとさ」


「最後のジャパンカップ」


その言葉で、空気が少し変わる。


ユリが静かに言う。


「96年?」


ユウも頷く。


「最後に4人で集まった日」


丸井がゆっくり言った。


「そうでござるな」


美咲が静かに聞く。


「その時」


「何があったんですか?」


3人は少し顔を見合わせる。


そしてユリが小さく笑った。


「……少し長い話になるよ」


コウスケが言う。


「これはまだジョンから聞いてないんですね」


ユウが言う。


「あの頃の僕たちの最後の話です」


丸井は湯のみを置いた。


「すべては」


「ここに繋がっているのでござる」


コウスケが身を乗り出す。


「じゃあ話すか」


「最初はさ――」


その時だった。


店員の声が聞こえた。


「ラストオーダーになります」


一瞬、全員が顔を上げる。


ユリが時計を見る。


「ほんとだ」


「もうこんな時間」


コウスケが言う。


「早くない?」


ユウが笑う。


「どれだけ話したんだろ」


丸井も小さく笑った。


「あっという間でござる」


会話はそこで止まった。


でも、その空気は不思議と心地よかった。


丸井が湯のみを持ち上げる。


「では一旦締めるでござる」


「改めて、出会いと再会に感謝でござる」


5つの湯のみが静かに重なった。


カラン。


小さな音がした。


その音を聞きながら、美咲は思った。


この人たちは、


きっとずっとこうやって笑ってきたんだろう。


ミニ四駆で。


大会で。


街のコースで。


たくさんの時間を一緒に過ごしてきた。


そしてその時間は、


今もちゃんと続いている。


美咲は小さく笑った。


(本当に――)


(素敵な仲間なんだ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ