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ミニ四駆続けていたら人生が変わったでござるの巻  作者: さかざき


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12/14

んむ

丸井が手を上げる。


「こちらでござる」


店の入口から1人の女性が歩いてくる。


黒髪で低めのひとつ結び。

落ち着いた雰囲気の女性だった。


丸井が立ち上がる。


「紹介するでござる」


「拙者の恋人、佐倉美咲殿でござる」


女性は席の前で軽く頭を下げた。


「初めまして、佐倉美咲です」


そして少し申し訳なさそうに続ける。


「せっかく皆さん久しぶりの再会なのに、お邪魔してしまってすみません」


3人は顔を見合わせた。


ユリが先に笑う。


「全然気にしないで。むしろ会えて嬉しいです」


美咲は少し安心したように笑った。


コウスケが言う。


「じゃあ、こちらも自己紹介しときますか」


「俺、コウスケです」


「ジョンさんには昔めちゃくちゃ世話になりました」


ユリは、軽く手を挙げる。


「はい、ユリです」


「ジョンにミニ四駆作りを手伝ってもらってました」


ユウが湯のみを持ちながら言う。


「ユウです」


「ジョンさんには車で色々連れて行って貰いました」


美咲は3人を見て緊張が少し解けた。


「ありがとうございます」


「純一さんから、皆さんの話はずっと聞いていました」


その言葉にコウスケが身を乗り出す。


「へえ」


「どんな話してたんですか?」


美咲は少し考える。


「ミニ四駆の話が多いです」


「大会のこととか」


そして少し笑った。


「あと……皆さんのことを、すごく楽しそうに話していました」


丸井は照れたように咳払いをする。


「んむ……事実でござる」


美咲は少し嬉しそうに言った。


美咲は続ける。


「それで、どうしても一度会ってみたくなって」


「今日は無理を言って来てしまいました」


コウスケが笑う。


「いやいや、大歓迎ですよ。いつもジョンがお世話になってます」


ユリはコウスケを少し睨む。


「お調子者がすいません。あ、敬語じゃなくて大丈夫ですよ。」


美咲はそこで、ふとユリを見る。


「それと」


「ユリさん」


ユリが首を傾ける。


「はい?」


美咲が素直に言った。


「想像以上でした」


ユリが笑う。


「何が?」


「純一さんから、美人だって聞いてましたけど」


「ここまでとは思ってなかったです」


テーブルに小さな笑いが起きる。


コウスケが煽る。


「ジョン、ユリちゃんのこと狙ってたのか?」


丸井は慌てている。


「誤解でござる!」


ユウが湯のみを持ちながら静かに言う。


「ジョンさん、ユリちゃんの話よくしてました?」


美咲が頷く。


「してました」


「あとユウさんの話も」


ユウが少し意外そうな顔をする。


「僕ですか?」


「ミニ四駆以外にも考え方がすごいって」


丸井が力強く頷く。


「それは今でも思っているでござる」


コウスケが笑う。


「出た、ジョンの師匠の話」


美咲が先程から気になっていたことを聞く。

「ジョンって純一さんの事?何でジョンなんですか?」


ユリが眉間にシワを寄せる。

「あれ?そういえば何でだっけ?」


コウスケが答える。

「あの当時の小学生が駄菓子屋に出入りするジョンを見て、丸メガネとボサボサの長髪だからってジョンレノンと安易につけたあだ名ですよ」


ユウは楽しそうに答えた。

「そうそう、いつの間にか浸透してたよね」


少し不満そうにコウスケが話し始めた。


「俺のことは何も言ってなかったですか?」


美咲が首を横に振る。


「いえ、コウスケさんの事を羨ましいと言っていました」


「羨ましい?」


美咲は話を続ける。


「コウスケ氏は、いつも周りに仲間が集まって自分の目標をしっかり見定める。その真っ直ぐな思いと情熱は自分にはないって」


コウスケは驚いた素振りを見せる。


「そんな事ないでしょ。」


「一番真っ直ぐで、情熱あるのはジョンだよ」


ユリが静かに続けた。


「本当にそう」


「ジョンがいなかったら、あたしたちあそこまでミニ四駆やってなかったと思う」


丸井が少し驚いた顔をする。


「……そうでござるか?」


ユリはジョンを見つめる。


「だってさ」


「誰より楽しそうだったじゃん」


「ミニ四駆」


ユウも頷いた。


「それは確かに」


「ジョンさんが一番好きだったと思う」


コウスケが笑う。


「俺ら途中で疲れても、ジョンだけずっとマシンいじってましたから」


丸井は困ったように笑った。


「それは……」


「ただ好きだっただけでござる」


美咲はそのやり取りを静かに見ていた。


丸井が


どうしてこの仲間達のことを今でも楽しそうに話すのか


少しだけ分かった気がした。


その時、美咲がふと思い出したように言う。


「そういえば」


「1つ聞いてもいいですか?」


丸井は嫌な予感がした。


「何でござるか」


美咲は少し楽しそうに言った。


「虹野たんって知ってます?」


その瞬間、丸井が固まった。


ユリが一瞬で笑いをこらえる。


コウスケはすぐに察する。


「それ言ったんですか」


美咲は首を傾ける。


「丸井さんの部屋にグッズがあったので」


丸井は静かに目を閉じた。


「……終わったでござる」


ユリが吹き出す。


「まだ持ってたんだ」


美咲は笑いながら言う。


「好きだったんですよね?」


丸井は小さく言った。


「過去の話でござる」


ユウが静かに補足する。


「かなり好きでしたよ」


コウスケが言う。


「車で何度、虹野さんのCDを聞いたことか」


丸井は机に肘をつき、額を押さえた。


「なぜその話になるのでござるか」


ユリは少し悪い笑顔をする。


「ねえジョン、あの話してみよっか?」


丸井がすぐに顔を上げる。


「それだけはやめるでござる」


しかしユリは止まらない。


「あの時さ」


「ジョン、あたしのスケッチブック見て」


美咲が興味を持つ。


「スケッチブック?」


ユリが頷く。


「そうそう、大会用に考えてたミニ四駆の自作ノートがあったんですよ」


「あたしセーラームーンの絵がめちゃ得意で、それ見たジョンがね」


ユリは姿勢を正し、声を真似する。


「ユリ殿」


「虹野たんを描いていただけないでござるか」


テーブルが一瞬静まり――


次の瞬間、コウスケが吹き出した。


美咲もつられて笑う。


丸井は完全に崩れ落ちた。


「黒歴史でござる……」


ユリは楽しそうに続ける。


「しかも注文細かいんだよ」


「目は潤ませ気味」


「頬はほんのり赤く」


「上目遣い」


そして少し間を置いて言う。


「セリフ付きでね」


美咲が笑いをこらえる。


ユリが最後を言った。


「ジュンイチさん……大好き♡」


コウスケが机に突っ伏して笑う。


とうとう丸井も笑い始めてしまった。


「何という記憶力…」

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