第15色
第15色
着いた頃には、全てが終わっていた。
「……っ」
横たわるのは細く、美しく、醜く、儚く。
子を抱き締めるように。
終わっていた。
全部。
出来ることも出来なかった。
何も。
間に合わなかった。
間に合わなかった。
間に合わなかった。
間に合わなかった。
間に合わなかった。
間に合わなかった。
間に合わなかった。
―――いや。
眠るだけの女性が、かすかに指を動かす。
「……っ」
もう、何も出来ない。きっと、優季だけでは―――。
「まだ、出来る―――」
優季の声に呼応するように、ハルが懐から出てくる。
静かな響きが風に乗る。それと共に、ハルが紅に散っていく。舞っていく。形を無くし、色を無くし、存在を無くし、優季と成っていく。
すぅっと、空気が本来のものへと戻る。
閉じていた眼をゆっくりと開く。映るのはモノクロ。どちらが狂ったのか、それとも元々どちらも狂っていたのか、裏返るように、色は無くなった。
視線を移す。黒に染まった塊へ。すでに型を成さぬ屍へ。産まれぬままの残骸へ。
その色は安堵―――おしまい、と。
その色は別れ―――さよなら、と。
その色は―――。
「お疲れ様」
その感情は感謝―――『『ありがとう』』と。
ナニモノでもなくなったそれは、音も無く、消えていく。守ろうとしたものも、守るために尽くしたものも、あったかどうか分からぬように消えていく。
だから、足し算をした。とてつもなく薄い色彩だけれど、無くなるよりはましだ。無かったことにはならない。結局これは、裏返り、反転し、そして倒錯するだけの、そんな話。出来損ないの話だった。
そうでないと、彼女達の最期が『感謝』だなんて、到底、理解らないのだから。




