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第14色

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 一瞬の静寂。聞こえるのはクラウスの小悪魔的な微笑と、ガタガタとうるさい換気扇の音だった。

「……成功も失敗もしないって、どういうこと?」

 優季より先にカナエが沈黙を破る。無理もない。優季はその言葉すら頭に入って来なかったのだから。

「そのまんまだよ、カナぴょん、優ちゃん。君の出来ることは失敗もしないし、成功もしない。うんうん、こう言うと禅問答みたいだね」

 ぷしっと音を立てながら、クラウスは瓶ビールを開けた。

 自分に出来ること。自分にしか出来ないこと。自分達にしか……。有り得ない、そう思ってしまう。少なくとも、そこに自分は要らないと。不要品だと。不良品である優季は思う。人間として不良品の優季は、そう思うしかない。

「おっと、優ちゃんは少しだけ勘違いをしているね。優ちゃんは出来ることを出来るのだよ。ただ、結果が付いてこないだけ。文字通りね。失敗もしなければ成功もしない。それだけなのさ。わくわくする展開だね!」

「それ、クラウスだけだから」

 ため息混じりにカナエが突っ込む。実際、この変態生命体以外は心踊るような話ではない。

 失敗も成功もしない。それがどれほどの不安と不信をもたらすのか、理解るはずだろうに。理解ってしかるべきだ。

 だから、言ったのだろう。

 これに関して言えば、真を理解しているとは断言できない。ただの道楽に過ぎないのかもしれない。

 通過点。

 もはや当たり前のように置かれたそれは、儀式も礼儀も無く、ただそこにあった。優季の道筋に、目前に、当然に。その程度の話をしたまで。

 けれど、優季が何を選ぶのかは、そして失敗も成功もしない優季達にしか出来ないことを出来るかは、存外、誰にでも理解る話である。

「それで……僕は何をすれば……いいんですか?」

「ノンノン。優ちゃんがするんじゃない、優ちゃん達が出来ることをするのだよ」

 話は続く。

 こちらだけ理解しても、当人達にとっては意味不明であるのは明白なのだから、わざわざ言う必要もない。

 クラウスが瓶の中のビールを飲み干す。数秒で。

 少しだけ、間が欲しかったのだ。

 次の話に入る、心構えのための間が。

「優ちゃん、先日出会った"あれ"ともう一度視ておいで。そこから先が、君達にしか出来ないことだよ」

 面白おかしく、淡々と告げるその言葉には、今までには無い強さを秘めていた。まるで、呪文のように。言霊のように。優季達を縛るのだった。

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