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「えっいや、ちょっ、臭っっ!!!!」
「文句言わないの。
譲ってくれたおじさんに失礼でしょ?」
「いやでも何か酸っぱい臭いがするわ!!
何だか酸っぱいの!!」
「お兄さんからおじさんへの切り替わりの匂いだね。
歳を重ねた証だよ。」
今ビアンカは無理矢理ライオンの着ぐるみを着せられていた。
ネロが貰ってきたと言うライオンの着ぐるみはとてもリアルだった。
鬣や牙も怖いくらいにリアルだった。
だがそんなリアルな着ぐるみは重たい上に暑い。
そして何故か臭い。
「で、ビアンカの着ぐるみには勿論爪なんてないからね。
武器は必要だから、はい。
ちゃんとこれ付けてね。」
「…鉄爪?」
「そっ。
あっ似合う似合う。
凄く強そうだね。」
リアルなライオンの着ぐるみを着てアイアンクローを付けられる。
そりゃあ強そうだろう。
だがしかし問題がある。
明らかに怖すぎるのだ。
殺傷能力の高そうな鉄爪は太陽の木漏れ日を反射してキラキラと黒光りしている。
今にも誰か殺りますと言わんばかりに輝いている。
ビアンカがドロシーなら絶対こんな恐ろしいライオンを仲間になんてしない。
そもそも近寄るわけがない。
何から突っ込むべきか分からず途方に暮れているビアンカの横でネロもいそいそとブリキの全身鎧に着替えていた。
所謂プレートアーマーだ。
「俺は木こりだから斧なんだよ。」
「…なんでわざわざ長戦斧なのよ。」
ネロは全身鎧に巨大な戦斧を肩に担いでいる。
もはや明らかに戦士だ。
どこかの城に仕えている戦闘民族にしか見えない。
「バトルアックスじゃなきゃ見た目的にイマイチしっくり来なくてね。
これなら敵も殲滅出来そうだろう?」
「…オズの魔法使いって戦記物だったかしら?」
ビアンカは首を傾げる。
何だか物語のジャンルが変わってしまう様な気がした。
そんなビアンカにネロは首を横に振った。
「あっあとビアンカ。
口調そのままじゃダメだからね。」
「口調?」
「ライオンはオスだよ?
かしら?なんてオネエキャラに改変なんて許されない暴挙だよ。」
「散々改変という名の暴挙を犯してきたあんたには言われたくないわね。」
「ほらそれ。
ライオンが女言葉なんて使っちゃダメだよ。」
そう指摘されるが言葉使いは一朝一夕に治る物ではない。
ネロはうーんと顎に手を当てた。
「敬語キャラは木こりの物だからねえ。
ライオンのキャラ設定って覚えてるかい?」
「…覚えてないわね。」
「ちょっと偉そうな王子様風のキャラなんだよ。」
「何その小難しい設定。」
「まあビミョーに俺様風のヘタレキャラ?」
「…はっきりしないキャラね。
ダメよそんなの。
他の濃いキャラが現れたらすぐに食われるわよ。
レギュラー降格の危機よ。」
「それは大変だね。」
「それにネロが敬語って多分とてつもなくムカつくと思うの。
敬語を使われてるのに敬われてない感満載になる予感しかしないわ。」
「確かにそれはそうかもね。」
さてどうしようかと2人は頭を悩ませる。
見た目はそれっぽくなったが肝心のキャラ設定がブレブレと言うのは宜しくない。
「…あっ語尾にがおーって付けるのは?
そうねがおー。」
「…俺ならだけど途中で面倒臭くなって言わなくなると思う。」
「確かに。」
「でも語尾に何か付けるってのはお手軽だし良い案だと思うよキコリ。」
「…なにそれ。」
「ブリキの木こりだから語尾に付けてみたブリキ。」
「邪魔で仕方がないわね。
外しましょ。」
2人は暫く悩んでいたが結局キャラがぶれるのは良くないと言う意見で纏まった。
自分を貫き通す事に意義があり、それが強さなんだと少し格好良い感じの言い訳をしながら。




