表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/16

第8話 エデンの園


そこに横たわっていたのは明らかに”僕”

だった。


「ーうわあああ!! ど、どうして…。」


驚きながら…観察してみた。


チューブに繋がれた僕は見た目が少し若いようだ。右腕や右眼もまだ元々の自分のものだ。


「ほ、本当に僕…!?」


生きているかどうか確認しようと僕が

”彼”の手首に触れたと思った瞬間、音楽が止まり、ホール中にブザーが鳴り響いた。


バーーーー!!


「α(アルファ)メタバース保守80%完了。問題は見当たりません。このまま進めます。」


アナウンスが流れた。なにかまずいことなのは確かだ。


僕は僕に別れを告げてこの地獄のような光景を後にする事にした。


…急げ、急げ。 ただひたすら真っすぐに走って出口を探した。


周りを気にする心の余裕なんてなかった。 見つかっても隠れずに走り続ける。絶対に止まらない。ただ来た道をなぞって戻るだけ。


逃げろ。理由はわからない。でもとにかく何があっても逃げろ。


どれぐらい走っただろうか?


…幸いな事に、警備員らしい者に誰にも会わず、暗い小道を走り抜けたらいつの間にか再び元居たネズミの迷路に戻っていた。


「ハァ、ハァ…やっと…かよ汗。」


息を整えて周りを見ると、

今はもう停電は復旧していた。


磁気嵐も収まりかけているようだった。


「なんだ、2週間ぐらいかかるって聞いてたのに。」


僕はスクロールを開いた。


「ん?」


日付は、エリサと別れてから13日後になっていた。


「あれ…?」


ダメだダメだ。こういうときはひとまず落ち着こう。


「えと…浦島ですやん。」


ツッコミが冴えない。

そりゃそうか。こんなに心が落ち着かない事は初めてだから。心臓もまだ騒がしい。


…まぁとりあえず、その謎が一つ。


次にあの光景。


「あれ…は夢、じゃないよな?」


そしてそこで会ったちょっと若い僕。

さらに突然ブザーが鳴って逃げ出したので無視したが、僕はあの時僕に”触れられなかった”のだ。


…あれは”ホログラム”か何かだったのか?


わけが分からない。


とにかく帰ろう。



はぁっ、はあ…。



そして13日振りの自宅にくつろぐこともなく、大急ぎでネットを繋げた。


スクリーンをテーブル大に拡げて手掛かり(クルー)検索を始めた。


「磁気嵐/つくば/施設」


望みのものは、無し。


「つくば/施設/ベートーヴェン」


関連のあるもの、ゼロ。


「つくば/13日/数分しか」


自分でも何を検索しているのか分からなくなる。


(他のクルー、何か手がかりは…。)


…思い出せ!


(そう…あのアナウンスが言ってた…「αメタバース保守80%完了‥」 ”アルファ”ってなんだ?)


…思い出せ!


(エリサが言ってたな…「第5層とか深く潜りすぎちゃって頭のおかしくなった科学者が…。」 ”層”ってなんなんだ?)



「αメタバース/第5層、…。」


(つくば市、を追加してみる。)


これだ! 見つけた!!


ーASIメタバース開発機構”The garden of EDENーEnvironment Design & Engineering Network.”


ーエデンの園…か。


サイトに入ってみると、当然ながらログインを要求された。


「そりゃそうか。はは…。」


僕はふと自分の手首を見た。QRコード…三上さん…


((ピッ


「ア…アア笑」


「ん…うん。これでしっかりとした食事とか…。」 ))



もしあの時彼が…。


僕はダメ元でQRコードをIDリーダーにかざしてみた。


‐フォン-


EDEN・AI

「…おかえりなさい!三上博士。本日はどのようなご要件ですか?」


(うおっ、いけた!)


…画面上に文字が現れた。まさかARGOが物乞いのIDをそのままにしておくとは考えられないが…。


僕は外を見た。うっすらだが空には磁力バリバリの我らがムンク様がまだ渦巻いている。


「…そういうストームのおかげにしておくか。」


……考えてる暇はない。


僕は質問した。


若者っぽさや無知を見せたら即座に『不法アクセス』で警報が鳴り、こいつは一瞬で僕個人を特定して「排除すべき侵入者」として通報するだろう。開拓団側の権利剥奪か、最悪の場合は…ミラバース送りになるかもな。


…指先が震える。心臓の音がうるさい。僕はゆっくりと深呼吸をして、”初老の科学者”を意識しながら質問を始めた。


(いったい何を?どこから調べよう?とにかくマグネティックストームが去るまでの時間しかない。)


「んーあー、そうだな。αメタバースって言うのは?」


EDEN(・AI)が答えた。

「それこそがARGOのご意思でしょう?まったく、貴方がたは見事な(ふるいをお作りになられました。」


(ふるい?)


僕は聞き直す。

「そうだろう? ー賞賛の声は何度でも聞きたい。いいかい、私…私たちは何を作った、のかね?」


EDENの応答。

「良いでしょう 笑 。 何度でもお聞かせして差し上げますよ。ーまずARGOは人類にアメとムチの両方を与えてどのように振る舞うか、何種類ぐらいの行動パターンと性質をもつのか?のデータを必要とされました。人間の実験場を希望されました。」


僕にはまだ理解不能だ。


「そう。そこから具体的に何をした…のかね?…君の口から聞かせてくれ。」


EDEN

「もちろんです。ARGOから依頼を受けた貴方がた科学の権威たちは無限ともいえるARGOからの資源の供給をベースに、壮大な仮想空間を作り上げました。そしてそこのαメタバースという第一層の住民に、身体の機械化を強要、従えない者には第二層のミラージュメタバース-《ミラバース》に送り込むという”ムチ”を与えました。同時に”ジャンプ”という瞬間移動の快楽ー”アメ”を与えました。次に行動の差異を測るために格差社会を構成。具体的にはαメタバース内でミラバースの人間をホログラムという異なる存在にして”溝”を作りました。」


(…な、なにを言っているんだ?…αメタバースの話だったよな。これはまるで僕らの‥。)


僕は恐る恐る質問した。


「…”ジャンプ”はアメだって?」


EDENは解説した。


「その通りです。少し物理を通った者なら誰でも瞬間移動など不可能だと知っています。」


「……え?」


「でも”ジャンプ”は惜しいところまでは行っているのですよ。”藁人形プロトコル”といってカー・ブラックホールを対消滅させて 笑…。」



「もういい!もう…十分だ。」



…いつも何か違和感はあった。



これは自分以外のすべてがおかしいんじゃない。



ーおかしいのは、僕だ。



(続く)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ