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劇団マジーア・スオーノ

 ついつい魔法を使っちゃったけどバレてないでしょ?でも、めちゃくちゃ可愛かったなぁ、パチンって指鳴らしたらピクンピクンって体で反応してた。

「ただいまー」劇場に戻ると、いきなり頭を小突かれる。

「コン!」

「いったー」

「あれほど街中で魔法使うなって言ったでしょ?」

 私の頭をいきなり小突いたのは、この劇場で花形を務める女性で、名をベアトリーチェ・アマーラと言う。私は彼女を姉のように慕っているけど、ちょっと性格が・・・ね。

「姉様!痛いよ!」

「んっ?それが返事なの?」

「ごめんなさい」

 (何も叩く事ないじゃんって、もしかしてまだ終わってない?)

 「もうしないでね」と人差し指を私の額に向け注意する。

 (だから、その人差し指こっち向けないでよ!めっちゃ怖いんだから!)

「これくらいでアーシャが反省するとは思えないわ。本当に打っちゃおうかしら?」

「それだけはやめて!もうしないから!」

 

 姉様もと魔法使いであり彼女は、水の魔法と音の魔法を操る事が出来た。彼女の指先から放たれる水の威力を知っている私は、恐怖で許しを請う。

 恐怖で縮こまっている私の後ろから、肩を「ポン」と叩き、私と姉様の間に一人の男性が割り込んできた。

 (誰?助っ人?)

「それぐらいでいいんじゃないか?赤子に笑顔を齎せ(もたら)たんだし」

「ルー!貴方はアーシャに甘いのよ!この子の身に何か起きてからじゃ遅いのよ?」

 (あっ、貰い事故だ。ごめんアーシャ、助けらんない。)

 私の横で同じように説教をされるこの男は、劇場の団長で名をルーカ・シモーネと言い、私達はルーと呼んでいる。

 (何故俺まで・・・)

 もちろんルーも同じ魔法使い。私は皆んなに妹のように扱われてるけど、ルーは少しシスコンに近い。

「ヤバいな姫様がお怒りみたいだ、逃げるぞアーシャ」

 コソコソとはなし、タイミングを合わせて姉様に背を向けダッシュで駆け出す。

「甘いわよ残念ながら、そうくる事はお見通しなのよ」

 

 私達が逃げるのは想定内であった姉様は、背を向けたルーに人差し指を向けていた。

「ピュッ!」空気中の水分が圧縮された水玉が指先から放たれ、音速を超えてルーの頬を掠める。

 (それはダメなヤツだろ?っていうか、魔法使うなとか言ってるヤツがバンバン撃つなよ!)

 恐怖で一瞬硬直したルーは足を止めて「アーシャ!ストップ!」観念した私達は両手を上げ、「ごめんなさい!」と叫ぶ。

「逃げても無駄なのは分かってるわよね?」

 彼女の指先から放たれた水玉は、ルーの頬を掠めその後、私達の目前で停止し空中をフワフワと漂っている。

「姉様やめてよー!」

 殺意の塊のような水玉は、フワフワと私達の周りを何か品定めをするように回っている。

「本当に、ごめんなさい!」(二人)

 叫び続けるが、水玉は消える事がなくどんどんスピードを上げて行く。高速で回り始めた水玉は、いつの間にか水龍のように形を変え、頭上へと舞い上がった。

「パチン!」姉様が指を鳴らすと、水龍は頭上で弾け私達をびしょ濡れにする。

「少しは目が覚めたかしら?」

「はい・・・」

 (やっぱりアーチェの水魔法は危険すぎるよな。ほとんど何でもアリな気がする)

「パチン!」もう一度指を鳴らすと床の水も、私達に掛かった水も一つの塊になり、近くのバケツに収まった。

「アーシャ?ルー?反省した?」

「はい・・・」

「じゃあ、今日のステージの準備を始めましょう」

「暗くなってきたから、外と中のランプにも火を灯してね」

「はーい」

 ステージを作って行くのも私達の仕事の一つ。ただ客を喜ばすだけではない、お客様を迎えるためにやるべき事は沢山あるし、何より次も来たいって気持ちで帰ってもらいたいしね。そこを雑には扱わないように心がけている。もちろんステージでの演技も失敗は許されないけどね。

 

 一通り準備を終えたそんな矢先に劇場へ一人の女性が足を運んで来た。

「アターシャ居る?」

 この声は、さっきの赤子のお母さんね。

「はーい、どうしたの?また泣き止まなくなった?」

 女性は、赤子を抱き抱え空いた方の手で大きなバスケットを持っていた。

「さっきは助かったわ、これ焼き菓子作ったから皆んなで食べとくれ」

 美味しいそうなバターの香りが私の鼻を突き抜けると、途端にお腹が空いてしまい、生唾を飲み込む。

「ゴクン」

 何それ?めっちゃ良い匂い!食べたい!でも、姉様に何でも貰うなって怒られたばっかりだし。でも折角くれるって言ってるし・・・どうしよう。

 

「アーシャ、せっかくの好意だ貰っときな」

 後ろから見ていたルーの声に直ぐ反応し、バスケットを直ぐに受け取り、涎を垂らしながら「いただきまーす!」と変なお礼をしてしまう。

 子供っぽい反応を見せた私を、二人はクスクスと笑うが私はそんな事より食欲が強いから、サッサと劇場に入ってしまうのであった。

「はは、あの歳の女の子は色気より食い気かな。ありがとう開演前にでも頂くよ」

「いいよ、正直助かったんだし。ああ、それとね此の前言っていた話なんだけど、近くの農村に大道芸人が来てたみたいだよ。もしかしたら、あんた達の探してる人かもしれないね。」

「それが俺達の探している人なら、是非とも行かないといけないな!教えてくれてありがとう」

「でも、ここからだと馬車で二日はかかるわよ?早く行かないと会えないかもしれないわね」

「そうだな、この町を出るのは正直名残惜しいけど、出来るだけ早く出発するよ」

「それとアイリスさん、指を鳴らす手品教えて欲しいんじゃない?」

「ハハハ、バレた?本命はそっちなんだけどね」

「実は、あの手品はアターシャにしか出来ないんだ。昔居たマジシャンがね、この劇場を去る時にアターシャにコッソリ教えたみたいなんだ。はっきり言って、どうやってるのか、俺にもベアトリーチェにも分からないんだ。ただ指を鳴らすだけなら教えれるがそれでもいいかな?」

「わかったわ、じゃあこの町を出るまでの間でいいから、教えてくれないかい?」

「ああ、次に行く所が決まったけど、明後日まで町には居るから、午前中に来てくれると教えれるよ。」

「わかったわ。あまり長居すると準備の邪魔になるわね。今日は泣き虫な娘も一緒に観に来るよ。じゃあ頑張ってね」家に帰って行くアイリスさんに手を振り、ルーは劇場に戻ってくる。

 探し人って言うのは、私達以外の魔法使いを見つける事。そして仲間になってもらう為。ただ探すだけなんて面白くないとルーが言い始めたのがキッカケみたいで、手品と酒場をやりながら旅をしている。もちろん旅費を稼ぐ為でもあるけどね。

 手品はルーと姉様の魔法使いの師匠から教えてもらっている。私が入団するまでは、師匠と四人で旅をしていたみたいで、道中の旅で孤児だった私を、ルーが見つけてくれたのがキッカケかな。今は楽しく、皆んなと一緒に旅をしている。

 

 (師匠の熱血指導が良かったのか分からないけど、アーシャがこんなに手品と魔法が出来るようになるとは思わなかったよ。今のアーシャを見たら師匠もビックリするかもな。次の目的地も決まったが、ヤツとの接触だけは避けたいな。表に出てくるヤツではないが、大道芸人を扮している可能性もゼロではないから一応気をつけるか。)

「さっそくだが聞いてくれ。やっと手掛かりが見つかったんだ。隣の農村に大道芸人が現れたらしい、その人が俺達の探し求める人とは限らないが、行ってみる価値はあると思う。とりあえず明日のステージを最後に此処を発つ、今まで良くしてくれた人達に感謝を込めて最高のステージにしよう。」

「名残惜しいけど、仕方ないわね。アーシャ?後たった二回のステージよ?気合い入れていくわよ」

「うん!」

 ルーの話を聞いた私達は、いつもより気持ちがキリっとし自然と表情にも現れる。


 後二回・・・頑張って恩返ししよう。

 

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