ラシェルの復讐心は沸々と沸き上がり、そして・・・
思いっきりサブキャラ、ラシェルさんのお話です
ベルナールの精液を使い受精させ、無事レイラに着床することが確認されて1ヶ月後・・・。
「ラケール様、必ずや作戦成功させます!」
「ラシェル頼んだわよ、貴女の働きが全てを決めるの」
「はい!」
晴れ晴れとしてなにか吹っ切れた表情をしているラシェルは、純白のドレスを身に纏い、大使館が用意したシャトルに乗り込むと一路アーヴィン王国に帰国するのだった。
「ラシェル様は凄く変わられました」
「うふふ、貴女と私で完全に落としたからね!」
「もう、恥ずかしいです!」
出発したラッシェルを見送り、ラケールの自室に向かいながら話すレイラは、何か思い出したのか急に顔が赤くなり始めた。そして腕を前に交差させて少しモジモジしていた。
「着床も安定したらしいから、もう大丈夫じゃない?」
「えっ、宜しいのですね。はい、今晩お邪魔致します!」
ラケールはレイラの腰に手を回しにっこり笑っていた・・・。
「けど、薬は使っちゃ駄目よ、胎児に影響するからね」
「勿論です、うふふ楽しみです。久しぶりに”2人”だけですから・・」
微笑ましい笑顔の2人は部屋の中に消えていくのだった。
ーー
「おお、よくぞ戻られた、この度は大変残念な結果になったな」
「陛下、帰国が遅れたことお詫びいたします」
数時間後、アーヴィン王国に戻ったラシェルは数年ぶりに父であるユーリーと謁見をする事になるが、残念だ、ご苦労だった、ゆっくり休まれよなど、王家に戻る話をはぐらかしていた。
「そうか、それでこのままアーヴィンに戻るのか」
「アーヴィンに住居を構えるか、ディスティアに戻るか思案中です」
「それならサヴァリオが”良い所”を紹介すると申しておったぞ。帰りに寄っていきなさい」
「承知しました陛下、それでは失礼します(やはり知っている、私は用済みなのね・・・」
王家に戻る事など1ミリも触れず、逆にサヴァリオが居場所を用意したぞ、と言い出す始末。ラケールが”王家になんて絶対帰れないわ”と話していたことを思い出していたラシェルは、怒り心頭で謁見室を後にするのだった・・。
執事「陛下、ラシェル様を王家に戻さなくても宜しいのでしょうか」
「ふぅ〜、戻るのだけは勘弁してくれ。エドガーの後家なんぞ誰が好き好んで引き取るんだ。下手に貴族に恩を売るのは得策ではない。まぁサヴァリオがなんとかするだろう」
「ですが、流石に愛人は」
「置いておいても何を言い出すか分かったもんじゃない。もう彼女には帰る場所なんて無いんだよ。これ以上悩みのタネをふやさんでくれ」
「そうですか・・・」
ユーリーは実の娘であっても、王家に戻せば悪影響を及ぼすと判断したようだ。結局独身のまま放置しても良かったが、一番年上の彼女がもし王政に対し発言すれば何かと不都合が起きる可能性も捨てきれないと邪推までしていた。
「やっぱりラケール様の言った通りになってしまった・・・」
王宮の廊下を歩くラシェルは屈辱的な謁見を済ませると顔には出さないが相当ご立腹だ。そしてその怒りの矛先は復讐心へと変化し、憎悪の炎は増すばかりだった。
「おお、よく来てくれました、ささお座り下さい」
「サヴァリオ王子、わざわざ私のような出戻りのためにお手を煩わせ大変恐縮です」
軽く頭を下げている相手は第二王子のサヴァリオだ。現在22歳で少しぽっちゃり系王子様だ。ユーリーとは顔立ちが違い、目が細めで鼻筋もキリッとはしていない。
「さて本題に入りましょう。早速ですが上級貴族アベラルド家に入って貰えますか」
「確かアベラルド家には既に第二夫人がいらっしゃいますよね、私が入り込む隙がありませんけど」
アーヴィン王国の貴族は第二夫人まで奥様を持つ事が出来る。それ以上娶りたい場合、王族になるしかない。まぁ愛人は夫人として”一応”カウントされるが、簡単に切られる存在だ。
「あっ、大丈夫です。私が王位を引き継いだら即座に法律を変えますので、第三夫人になれます」
「成る程、それまで愛人としての扱いでしょうか」
「まぁ、率直に言えばそうなります。お嫌ですか?それなりのお小遣いは出ますよ」
サヴァリオはなんとも言えない嫌な表情をしている。頬の肉が盛り上がった作り笑顔の下にある眼光は鋭く全く笑ってない。この男、口約束なら簡単に破りそうだ。
「口約束でしたらなんとでも言えますからね。契約書を頂けるのでしょうか?簡単に捨てられるのは御免だわ」
「あらら、私を信用できないと仰るのでしょうか。王籍が無い貴女にその様な事を言われたくありません」
「王子ご冗談を、愛人などいつでも捨てられてしまう存在です。本来なら王家に戻った後、正式な手続きを行わなければなりませんのよ」
とても兄妹の会話では無い。これは欲と思惑が交差する男女の話し合いだ。サヴァリオは口約束で誤魔化そうとみえみえだ。察したラシェルはわざと挑発して相手の出方を確かめようとしていた。だが、表情を見ただけですべて丸わかりだった。
「それはまた突飛なお話ですな、アハハ。王家に戻る事など無理ですね、私も懸命に貴女の居場所をご用意したのですよ」
「そうですか、即断は懸命ではないようですね、これにて失礼します」
「クッ(こっちの足元見やがって帰る場所なんか無いんだろ。大人しく愛人になれよババア」
「どうなさいました?(昔から変わらないわね、腹黒なのよ貴方は・・」
「いえ、何も。良いご返事お待ちしております、姉上」
「今更、姉上呼ばわりですか!失礼にもほどがあります!」
2人共ポーカーフェイスだが本音は分かっていた。しかし今回の愛人の件は一旦持ち帰りとなり、後日結論を出すことにするのだった。
「うーん、ラケール様はすべてを分かって私に大役を任せてくれたのね・・・」
話し合いは物別れに終わり部屋を出たラシェルは、そのまま第一王子のジャレッドに面会を申し入れ、執務室に向かうと早速、陛下とサヴァリオの会話音声を聞かせるのだった・・。
「ウフフ、ジャレッド、コレ聞いてどう思いましたか?」
「ラ、ラシェル姉さん、これって余りにも酷くないですか!」
「実の娘を陛下は何だと思っているのかしら、ジャレッドも政争の具くらいにしか思って無いようね。もう、私の居場所は無いのかしら」
「・・・・」
ラケールに言われた通り二人の会話を聞かせたラシェルは次の言葉を待っていた。元々茶番の王位継承争いはジャレッドが王になることが既定路線なのだが、次の判断は実は重要な意味を持っていた。
「ジャレッド王子、貴方ならどうなさいます?王になる貴方なら難しい問題ではないですよね」
そう、ジャレッドがもし仮に王になると考えれば、この問題解決の行方は次期王の考えと等しいと判断しても間違いないのだ。そして少し考えた王子が下した決断は・・・。
「その事なんだけど今回はタイミングが悪いよ。知ってると思うけど王位継承を巡って争いの真っ最中なんだ」
「恒例行事とは言え、結局貴方が継承するんでしょ」
「そうなんだけど・・・サヴァリオが勘違いして猛追してるんだ」
アーヴィン王国は王位継承の前に本人の力量を試す伝統行事みたいな仕来りがあり、第二王子が成人した後に行われる。ルールは至って簡単だ。貴族から委任状を期限までに過半数持ってくるだけだ。とは言え帝王学を学び貴族と付き合い、その過程で余程バカでは無い限り第一王子が信任を得るのが通例だ。しかし今回はディスティア帝国からの要請で全艦隊が出撃。大量に燃料を消費したことにより燃料費が高騰、一部の不満を持った貴族が意思表示の代わりに第二王子に信任状を渡したことで拮抗してしまい、欲深いサヴァリオが勘違い。本気で王位を狙い始めたのだった。
「ふーん、次期王が決まるまで愛人になって我慢しろと?」
「悪いんだけど、貴族たちの第二夫人の席が全て埋まっているんだ。それと仮に僕が引き継いで姉さんを王家に戻すと、ユーリー陛下の面子を潰しかねないんだ」
「ではどうするのが一番なのかしら?ディスティアに戻ったほうが良いのかしら。そうよね、結局お払い箱だしね」
「そ、そんなことはないよ。けどディスティアに行くならそれ相応のお金は出すよ・・」
自信なさげに声を小さくしながら答えたジャレッド。事なかれ主義のユーリーと何ら変わらない。扱いに困った彼はディスティアに戻ったほうが良いと暗に語っていた・・・。
「ふーんそうなの、わかったわ」
結局、扱いに困っているようだ。一言で言うならコイツは器が小さいのだ。ここで、僕がなんとかする、王家に戻ったら姉さんを相談役にするとか何とか言えば、王としての資質が見え隠れして将来に希望を持てるのだが、事なかれ主義のジャレッドにラシェルは見切りを付けるのだった・・。
「さてと、ラケール様は預言者なのかしら・・・」
ジャレッドの執務室を出たラシェルは、カフェでお茶を飲みながら今までのことを振り返っていた。
「結局、全員駄目ね・・・これが現実なのですねラケール様」
ラシェルは説得されたあの日のことを思い出していた。それは人工授精前のDNA検査が終わり、2人の健康状態が確認され何ら問題がなく代理出産は出来るでしょう。と医者に言われた夜。ラケールが部屋に現れ自分に課されるミッションの説明をしてくれた・・。
「今晩はラシェル、いきなり本題を話すわね」
「はい、覚悟はできています」
「それは良かった、あのね私としてはサヴァリオの策に乗って色々聞き出してほしいの」
「そ、それは・・愛人になり悪事の証拠を掴むのですか・・・」
察しのいいラシェルは、愛人になり情報を聞き出す汚れ仕事だと一瞬で理解するのだった・・。
「そう、それと聞き出した情報の裏を取るために、両陣営の証拠が必要になるの。たぶん貴方自身の身体を使ってね」
「ま、まさか・・その証拠とは・・・映像とかですよね」
汚れ仕事とは理解していたが、複数の男を相手にするとは思っていなかったらしい。だが走り出したミッションを止めるわけにはいかなかった。
「そうそう、動きやすいように新興貴族のレイチェルとして登録するから」
「そのレイチェルを使いこなして、生きる道を自分で切り開くのですね」
「ラシェル、ありがとう、そしてごめんなさい・・本当にごめんなさい」
ラケールはラシェルを抱擁すると涙を流しながら謝り始めた。説得し汚れ仕事をさせる事に実は心を痛めていた。できれば自分がすべて行えば一番いいのだが、それが叶わない彼女は涙を流し謝るしか無かった・・。
「ラケール様・・・」
「私の計画が達成できたら、必ず貴女が幸せになる居場所を用意するから、だから、だから・・」
そしてふと我に返るとラケールの最終目標がなんとなく見えてくるのだった。
「新興貴族のレイチェル・・・たしかレイラは没落貴族・・・ラケール様は王籍破棄・・・ベルナール様は上級貴族・・・まさか・・まさかね・・」
脳裏をよぎったこの先の目標は余りにも野心的で、思わず口をつぐんでしまった・・。
「うん、邪推するのは止めましょう。さてと愛人ラシェルを演じますか!」
カフェを出たラシェルは空を見上げ、自分に与えられたミッションを必ずやり遂げようと思うのだった。
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