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ラシェルの未来

ラケールとラシェルのお話は続くのだ

帰国すると王子たちにいいように使われると知ったラシェルは、信じられない表情を浮かべ、自分の将来に恐怖と不安を感じたのか少し手が震えていた。


「ラ、ラケール様、その、私の身の振り方をご存知でしたら是非お教えください」


「簡単よ、大物貴族の愛人として貴女を送り込むのよ、もちろん後ろ盾の褒美としてね。第二王子のサヴァリオが画策しているわ」


「サヴァリオですか・・・確かに少し前に連絡が入りました。戻ってきたらそれ相応の居場所を用意すると申されておりました」


「アイツの考えそうなことよ、根性が曲がっているのよ」


「勝つためには手段を選ばないですか・・・小さい時から変わっていませんね」


王位移譲を巡り、熾烈な争いをしている第二王子のサヴァリオは当然だが元々劣勢だった。だがここで有力貴族の後ろ盾を貰えれば、逆転までとは言えないがそれなりに拮抗する事は確かだった。王の座をめぐり手段を選ばない彼らしいやり方だ。


「貴女がサヴァリオの為に愛人になって、もし候補から外れたらどうなると思う?」


「白い目で見られ後ろ指を刺されますね。結局、飽きたら捨てられますので、そもそも愛人にはなりたくありません」


「頼みがあるの、一旦帰国してユーリー陛下とサヴァリオの話を聞いてきて下さらない?」


「まさか、盗聴するのですか」


「そうよ、その時の会話を録音して第一王子ジャレッドに聞かせるだけでいいわ。後は貴女自身で判断してくれないかしら」


「まさかジャレッド王子に加勢するのでしょうか」


「加勢?はぁ?何いってんの両方とも潰すのよ!だけどもしジャレッドが貴女を王家に戻すと話せば少し考え直してもいいわ」


「何故そこまでして王家を潰すことに執着するのでしょうか」


「あのね、あの王家はもう駄目なのよ、全てにおいて腐っているわ」


ディスティアに服従していたアーヴィン王国は、星団連合との諍いが始まってもその姿勢を変えることはなく。言われるがまま無理な要求ですらひたすら飲んできた。ラケールが最も腹立たしく思う出来事があった。それは応援要求に応じ1万の兵を差し出し気がつけば数千名が棺桶に入り戻ってきたのだ。その事自体は仕方ないことなのだが事後処理がとても酷かった。


「ディスティアに傷病手当すら請求しないのよ、それもユーリーは見舞金もケチって大して出して無いの、あの件は流石に頭にきたわ」


「それは致し方のないことなのでは」


「当時の私は大使としてユーリーに進言したのよ、請求をしないと彼らは払いませんよってね」


親善大使だった当時、ラケールはユーリーに傷病手当くらい請求したほうがいいと進言。しかし事なかれ主義の王は請求することが不敬にあたると勝手に思い込み請求しなかったのだ。


「それだけでしょうか」


「まさか、ベルから愛人の話を聞いて呆れたのよ。貴女の送り先は親戚の上級貴族アベラルドよ。女を使っての票集めは禁忌よ!人の上に立つ人間のやることじゃないわ」


ラケールはアーヴィンで行われていた熾烈な王位争いを、なんて醜い争いをしているのだろうと引いて見ていた。ラシェルの件も勿論ベルナールから聞き飽きれていたのだ。


「それは確かに・・・」


「ユーリーは全て知った上で好きにやらせているのよ。ねぇ、これだけの理由で十分でしょ、一番の被害者は国民よ」


「私がいない間に変わってしまったのね・・・」


「変わるも何も元から何も変わってないわ!腐っているのよ。今回の親善大使の件もそうよ、既に候補者は数人に絞られていたのよ、けどねハインツが私を指名したの、直接聞いたわ。そしてユーリーは何も考えずに勅命を出したの」


「それは確かに為政者としては駄目な判断ですね・・・」


「そうでしょ、私の身分はまだ一般人よ、貴族として転籍してないのに勅命って頭狂っているわ」


ベルナールと結婚したラケールは我関せず順風満帆な日々を送れると思った矢先に親善大使の話が蒸し返され、王家との繋がりが切れた彼女を呼び出し、いきなり”勅命”を発動。それはあまりにも身勝手な行動で”一般人”になった彼女に対しては慎むべき事なのに強権を振るい、あの忌々しい事件の救済すらしない王に対し見切りをつけた彼女は、王家を潰し復讐を果たすとあの時、固く心のなかで誓っていたのだ・・。


「ですが、腐っていても陛下は私の父親です!」


「ふん、普通の家庭ならそれでいいでしょう。けど彼は王よ、このまま事なかれ主義を貫くなら国民が一番貧乏くじを引く事になるわ。絶対潰さないと駄目よ没落させるのよ」


王家を潰すと宣言したラケールに対しラシェルは動揺を隠せなかった。もちろん現国王は自分の父親でもあるのだから当然の反応だ。


「ええ!!没落させるのですか・・・それは流石に」


「私が受けた屈辱は誰が晴らしてくれるのよ。貴女にも救済の書簡を送ったわよね、けど無視したんでしょ。別にその事を責めるつもりは無いわ」


「・・・・」


当時のラケールはドン底に追いやられていた。もしかして姉のラシュルならアマンシオの嘘を問いただしてくれると思い、藁をもすがる思いで出した書簡は無残にも無視され返信すら来なかったのだ。その事が気がかりなのか彼女は押し黙ってラケールをジッと見詰めていた。


「あのね、懺悔したい気持ちがあるなら私に協力して貰える?言い方は悪いけど貴女はこの先アイツらに利用されて捨てられるだけよ」


「もしかして、オーバン様のご子息に王位を譲るのでしょうか」


「アハハ、何を言っているのかしら。潰すならすべて潰すのよ、分かったかしらアハハ」


「ですが、オバーン様はラケール様の実の父親ですよ」


「何いってんの、未成年の私を守りきれず、引き止めることもなくただ黙って見送った奴なんて家族でもなんでも無いわ。貴女も駒のように扱われ、最後は政争の具として使われ捨てられるのよ!アハハ」


ラケールにとって実の父親ですら既に敵とみなしていた。あの時アマンシオを断罪する勇気がオーバンに有ればここまで憎しみを高めることは無かった筈だ。


「私は駒・・・」


「そうよ、だってそうでしょ、アハハ。王族の嗜みなんてクソっ喰らえよ。絶対許さないから、絶対根絶やしにするんだアハハ、そうでしょアハハ」


高笑いし断罪するラケールにラシェルは狂気を感じ恐怖を覚えたが、駒と言われ自分の半生を振り返ると、絶対王族としては考えてはいけない”そう私は友好のためだけに送り込まれた女”といういけない考えが浮かんでしまう。


「私は女としての道具。。。」


「そう道具よ、使用済みの貴女は王家になんて絶対帰れないわ」


「そ、そんな、道具じゃないわ。きっと王家に戻してくれる筈よ」


「アハハ、戻れる訳ないよ。振り返ってみなさいよ、道具として扱われ不要になったのよ。有終の美は愛人で飾っておしまい。なんて悲惨な人生なんでしょうアハハ」


「最後・・愛人」


「堕ちるのよ、更に落ちていくだけなの。愛人の話だってユーリーは知っている筈よ。だから貴女を落とす連中に復讐しないと」


「王家の嗜み、友好、愛人、復讐・・・」


「王家に生まれ将来を夢見て淡い希望を抱いて、最後は愛人!キャハハ」


「くっ!・・・クッソ!」


ラケールの悪魔の囁きが心を揺さぶり、自分の半生を振り変えると、エドガーに娶られた後は不幸の連続だった。そして心の奥底に、決して灯ってはいけない小さな復讐心の火がポツンと灯ってしまう。


「そうよ、その目よ、目が覚めたかしら」


「終わり、私の人生は終わりなの?」


湧き上がる憎悪で一瞬、眼光が厳しくなったが、冷静さを取り戻したラシェルは諦めが入ったのか目が虚ろになっていた。


「そう、もう終わりなのよ貴女は、賞味期限切れでもうおしまい。捨てられるのを待つだけの存在、だから見返すのよ、復讐して見返すの」


「捨てられるの、私・・捨てられる・・いや!それは嫌!・・復讐」


「そうよ、けどね私にいい考えがあるのよ、一緒に復讐しない」


「考え・・復讐・・・何かいい方法でもあるの(暗」


心の隙間にラケールの憎悪が入り込んだのか、目を見開き悲壮感が溢れたと思いきや、眼光が厳しくなったり座ったりと、心情がクルクルと変化していた。ここまで来れば最後に軽くトンと背中を押せば決して消えない復讐心が燃え上がるのは確実だ。


「うふふ、ねぇラシェル、あなた自分の赤ちゃん欲しいでしょ!」


「えっ・・赤ちゃん・・欲しい・・時間がないし、けど私の身体は壊れて・・」


悪魔の囁きに続き、とんでもないことをいい始めるラケール。これも作戦なのか?だがラシェルの身体は既に・・・。


「ねぇ、誰の子供が欲しい?ベル?エドガー?有名な将校なんてのも準備できるわよ」


ラシェルの呟きが耳に入らないのか、無視しているのか勝手に話を進めていると、レイラが近づいてきた。


「ラケール様、このリストをお見せすれば宜しいかと」


レイラが頃合いを見計らい、数ページに及ぶリストを差し出した。もちろん人工授精を行うための登録されたDNA情報だ。パラパラ捲ると知っている名前がチラホラ載っていた。


「そうね、これから選べるわよ、いっぱいあるわね」


「ま、まさか、体外受精・・・けど、わたしの子宮は不妊薬と堕胎の手術を何度も受けてボロボロなのです。妊娠しても死産する可能性が高いとお医者様から言われています・・」


「知ってるわよ、貴方は妊娠する前の着床は難しい状態よ、だから卵子だけ貰えれば代理出産で赤ちゃん生んでもらうのよ。ねっ!いい考えでしょ」


「ですが、ここはディスティア、代理の母親なんてすぐには・・・」


「ラシェル様、私がそのお役目を行いますのでご安心下さい」


「そう、レイラが代わりに生んでくれるわ」


「えっ・・」


因みに代理出産をして貰えるなら、”ベルナール第二夫人の座は貴女よ”と絡み終わったベッドの上で言い放ったのだ。もちろんレイラは何の迷いもなく快諾した。そしてラケールはこれにサインをしなさいと、契約書を渡すのだった。


「あのねリシェル、わたし妊娠してるのよ、一緒に育てない?ねっいい考えでしょ」


「・・・うん」


とんでもない計画はまだ始まったばかりだった。この後ラシェルを完全に落とし、真の仲間として深い絆を作らなければいけなかった・・。


「今日はここに泊まってよ、色々お話があるの」


「ありがとうございます。ご厚意に甘えさせていただきます」


「それじゃレイラ、お部屋に案内してあげて」


「かしこまりました。ラシェル様こちらにどうぞ」


「うふふ・・・」


キラリとラケールの目が光ると、レイラは軽く相槌を打ちラシェルを部屋へと案内していくのだった。


「今晩は楽しみましょうねラシェル。貴女には色々頼み事があるのよ・・」


意味深な言葉を発しラシェルを優しい眼差しで見送るのだった・・。

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