兎族にはすんごい奴がいた
兎族・・・耳が良いのに
「うぎゃ〜」
アーリー「ふん!(ドヤ」
兎族の里に到着したアーリー達交渉団の一行は、ユリアの家に向かっていた。途中、警備兵に止められユリアを母親の元に届けると説明したが納得せず。後ろで見ていたアーリーがドヤ顔で立ちはだかると皆一斉に平伏す結果に。そして無事に彼女の家に到着したのだった。
「ママ〜!」
「ユリア!嗚呼、ユリア、ユリア」
玄関に立つユリアを見るなり抱きしめて泣き崩れた母親は、顔立ちがそっくりで毛並みは同じ薄いピンク色だが、やはりこの星の住人はみな毛が濃かった。結構フサフサしていた・・。
「ママ、心配掛けてごめんなさい」
「良いのよ、良いのよ無事に戻ってきてくれたから、ああ良かった」
「ミーシャさんが助けてくれたんだよ」
ボロボロに泣いていた母親は涙を拭い立ち上がり、ミーシャを一目見るといつもの反応を見せた・・・。
「わわ、猫族!」
「ママ、助けてくれたミーシャさんとジャガーさんだよ、それとワルワラさん」
「へっ?狼族と猫族・・・ウーン」
「あのね、アーリー女王様だよ!」
「へっ?女王様?人間?うひゃひゃ!」
と、まぁいつもの反応というかこれが当たり前なのだろう。母親のミケーレは相当混乱していたが、アーリーを一目見るとこれまた平伏すことに。落ち着いた頃を見計らい、ユリアがお茶の準備をしてくれたので、そのまま嗜むことにしたのだった。
「助けていただいたのはアーリー様の配下だったのですね、本当にありがとうございます」
「まぁ、獣人の女王だしね、当たり前のことしただけよ。礼なら3人に言ってあげて」
「はい!」
アーリーがこの星に来てから話が早く進む。このまま兎族は協力してくれるだろうと、アーネストは楽観視していた。
「今から族長のニコロの所に案内します」
「おねがいね、顔見せが済んだら急いでクーンに戻らないと・・」
「アーリー、もしかして軍備の件だよね」
「そう、戻ったら見せるわ」
アーリーは次世代艦の事をここに来て教えるつもりらしい。それ以外にも予算を捻り出すために政務が忙しいのだ。謁見が終わったら速攻で戻るそうだ。
ーー
「ニコロ族長、ミケーレから面会の希望が来ました。何やら高貴なお方をお連れするそうです」
「そうか分かった」
「大変申し上げ辛いのですが、猫族が混じっているようです」
「何だと、屋敷に猫族が入っただと!ふ、ふざけるなスペンちょっと相手してやれ」
「わかりましたお館様」
誰もいないのに声だけが流れ、何やらいつもとはちょっと違う力比べが始まりそうな雰囲気だ。
「あのー、族長お連れするのは・・」
「ええ、五月蠅い!猫が猫が・・・(怒」
真っ赤になりプンスカ激昂しているニコロは相当頭に血が上っていた。そして程なくするとアーリーとアーネスト、ミーシャ、ジャガーの四人が最初に入ってくるのだった・・。
「お客様がお見えになりました」
「うっ!敵だ、クソ猫!」
ミーシャはアーリーの少し前を警戒しながら客間に入って来た。可愛らしいメイド服を着ているが、猫と認識するやニコロは警戒心丸出しの鋭い眼光で睨んでいた。
「あらあら、敵意剥き出しね」
「くっ、お前なに奴」
だが、ニコロはアーリーのオーラを感じたのか急にソワソワし始め、緊張の余りプルプルと小刻みに震え、汗が吹きだしていたが決して平伏すことはなかった。
「うわぁ何だ、気配が無いぞ」
いきなり目の前に現れた刃物を見たジャガーは瞬時に戦闘態勢を取ったが、相手を確認する前に気配が消えた。
「陛下、不審者が周りにいます。お気をつけて下さい気配を感知しません」
百戦錬磨のジャガーですら完全に気配が読めないらしく、珍しくアーネストに忠告した。
「成る程、確かに分からないが、何か違和感を感じるな」
気配を感じさせ無い特殊な能力なのだろう。アーネストはディスティアの報告書に書いてあった正体不明の兎族の事を思い出した。
「ふん!ジャガー、あなたの真後ろよ」
言われたジャガーは返事をする代わりに後ろ廻し蹴りを斜めに入れると、ビッっと何かを掠る音だけが響いた。
「ニャ、気配が極端に薄いと言うか、消滅してるニャ!」
「貴方族長よね、手厚い歓迎をするならコッチにも考えがあるわ」
「ふん猫は嫌いだ、死ね!」
ジャガーを狙ったのは囮だ、ザクッと音がするとミーシャの胸にナイフが突き刺さった。
「痛いニャ〜、お返しニャ!」
「コ、コイツ、死なないのか」
刺さったナイフのグリップを既に掴んでいたミーシャは抜きながら、相手の腕に手刀を入れるとそのまま力任せに押し込んだ。
「ぎゃー、痛い!」
右肩を刺され痛みで集中力が切れたのか、ぼんやりと姿を表したのは茶色い毛並みの普通の兎族の男だ。この星固有の特殊能力を持つ兎なのだろう。アーリーは慌てること無くその刺した男を見ていたが、突然何も無い空間に往復ビンタをくりだした!
「バシン、パチン!痛っつ!」
「アリャ、ステルスうさちゃんね!隠れんぼが好きなのね!」
丁度、頬か鼻先にヒットしたのか、鼻血を出して唖然と立っている男の姿が見えた。
「クッソ、全員で攻撃だ!」
「無駄よ、お遊びはこれまでよ、グラビティ!」
「ギャン!」
「グワッ!」
いきなりアーリーの重力魔法が炸裂。ミシミシと部屋が揺れ悲鳴があちこちで上がった。
「お前ら暗殺部隊だろ、どうにかするんだ!」
喚き散らすニコロは結構慌てていた。だがアーリーはニヒっと笑うと、追加の魔法を発動した。
「あはは、これを受けてみなさいよ、アロー!」
「ニャー、終わったニャ!」
ニコニコ笑いながら手先が青く光りスッと持ち上げると同時に、無数のグリーンの矢が四方八方に飛び出して行くと誰もいないはずの空間に突き刺さり、呻き声と共に数十名の暗殺者であろう男女が姿を表した・・。
「アーリーを怒らせたから仕方ないか・・・」
「チマチマ小さいのよ、ミーシャが猫族というだけで狙った時点で無理ね、仲良くなれないわ」
「クッソ、アーリーとか言ったな、おまえはどんだけなんだよ!」
「あらら、ねぇ、あなたさ〜、部下を信じるのは良いけど相手を見て判断しなさいよ〜、ほれアロー!」
「グッソー、これは魔法なのか・・(縛」
そしてアーリーは追加で天井に隠れていた暗殺者をアローで打ち抜き、バインドで動けないニコロに近づくと頭をなでながら時折、長い耳をクルクルと指に絡め遊んでいた。彼はバインドと精神魔法で全く動け無いのだ。
「久しぶりに本気のアーリー様を見ました(汗」
ジャガーは久しぶりに魔法を繰り出すアーリーを見て、相当怒っていると感じ冷や汗をかいていた。それとミーシャも同じだ”嗚呼ニコロ残念ね”という表情を浮かべていた。
「わ、悪かった少し試しただけだ」
「ふーん、私って試されるの大嫌いなんだ〜、貴方私に勝てると思ってるの?」
「いえ、アーリー様、完全降伏を宣言します!」
「ふーん」
アーリーは意識を読み取り分かっているのだろう。ニコロの頭に拳をグリグリ押し付け始めた。
「このまま耳をチョッキンしていいかしら、私に敵意を受けた罰よ!」
「くそムカつく女だ」
「そう?貴方は弱くて単純で無能な、お・と・こ!」
「言わせておけば」
「あなた平伏しなさい、私に楯突いたら死ぬだけよ」
ニコロはアーリーの覇気というかオーラが見えているはずなのだが反抗心丸出しで、意識もそれ相当だ。族長としてのプライドが高すぎるのだろう。降参すると口だけで平伏す事は無かった。
ーー
近くの控室では落ち着かないシャルロッテは席を立ちウロウロしては座り、歩き回るのを繰り返していた。
「アーリー様、大丈夫ですかね・・・」
「シャルロッテ、君が心配して部屋に入れば間違いなく戦いが始まるぞ」
皆心配なのか表情が芳しくなかった。流石に猫族族長のシャルロッテが入れば大変な事になるのはわかりきっていた。
「俺達が心配しても仕方がない、呼ばれるまで待つしか無い」
「もう、そんなに心配なら見に行くね!」
ユリアがそう話すと気軽に部屋を出ていき、ミケーレは慌てること無くゆっくり後を追うのだった。
「俺達も行きたいので待って下さい」
「そうですね、わたしと一緒なら入れますよ」
「へっ?」
「ほら、カーチャン早く行こうぜ!」
「もう、ヴァン待ちなさい」
結局全員、ミケーレと一緒に謁見の間に移動することになった。そしてピョンピョン跳ねながら嬉しそうに向かったユリアは、アーリーがニコロと仲良く?遊んでいると勘違いしたのか、トンデモ発言をするのだった。
「あー、おじいちゃん、アーリー様と仲良しになったのね!」
「はっ?族長の孫だったのか?あはは・・」
その言葉を聞いたアーネストは苦笑いをしていた。このポンコツニコロが自分たちの訪れた目的を聞けば、争いにはならなかった筈だと思ったからだ。
「ユ、ユリア、危ないから近づくな!」
「あれでしょ、また人の話を聞かずに喧嘩したんでしょ!」
「うっ、そ、それは・・・」
ユリアは全く気にすること無くおじいちゃんをポンコツ扱い、そしてアーリーに近づき謝罪を述べるのだった。
「アーリー様ごめんなさい、おじいちゃん気が短いからすぐに喧嘩を始めるの」
「そうね、短すぎるわね。んっ?もしかして話が伝わってなかったの?」
「そうみたいね」
「は、話とは何だ。ユリアは何故この女と仲が良いんだ!」
部下「嗚呼、やはり聞いてなかったんだ、猫族と聞いて激昂してたもんな・・」
後ろに控えていた秘書か手下かわからないが頭を抱えていた。きっとアーリーの事を説明したはずだ。たぶん推測だが猫族と聞き激昂して頭の中に入っていかなかったのだろう・・。
「だって、わたしを助けてくれたのはミーシャさんよ!ああ、怪我してるよ、ミーシャさん大丈夫!」
「ニャ!全然問題ないニャ〜」
「そうなの血が出てるよ・・これ使って!」
振り返ったユリアはミーシャの胸部の血を見た途端、驚き慌ててハンカチを取り出して近づいて行くのだった。
「マ゛ヂ・・」
ガーン!と頭を殴られる感覚?今更、衝撃的な内容が頭の中に入ってくるニコロはどんどん顔色が青ざめてきた。そして全てのピースがパズルのようにピタピタと合わさって行くのだった・・・。
「やっと理解したかしら?」
「大変申し訳ございませんアーリー女王様!わたしの首で良ければ差し上げます」
「首なんか欲しくないわ!耳が良いくせに話を聞かないとは、このアホ!」
「はい、アホでございます」
ニコロはひたすら平伏していた。そして意識は申し訳ない気持ちで埋め尽くされていた。そして影の薄い暗殺者達も全員が平伏していたが相変わらず存在が薄かった・・・。
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