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ちくわ探偵 第1部 ダジャレ編【連載版】  作者: 堀吉 蔵人
第一部

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14/15

【ちくわ探偵】白衣の迷宮と引き裂かれたソーメン

おでんの街の医療の要、「おでん総合病院」。

その正面玄関前で、おでん鍋を大量に輸送中だった大型トラックが激しく横転するという大事故が発生した。

病院内は騒然となり、緊急搬送されてきたおでんの具材たちでごった返していた。

鶏肉派閥の重鎮である、手羽元氏は激しい骨折。

軟骨氏は全関節の脱臼。

そして、手羽先氏はストレスによる極度の胃潰瘍。

誰もが医師たちの手によって病室へと収容され、事態は沈静化したかに思われた。……だが、真の絶望は、その日の深夜に訪れた。

「ちくわ探偵、起きてくれ! 中庭で……大変なものが発見された!」

深夜、ゆで卵刑事(デカ)の血相を変えた叫び声で起こされた私は、琥珀色(こはくいろ)外套(コート)を羽織って中庭へと走った。

月光に照らされた芝生の上。そこに横たわっていたのは、前回の決闘を生き延び、この病院で療養中だったはずの、あの「いかさん」だった。

だが、その姿はあまりにも無残だった。彼の真っ白な肉体は、鋭利な刃物によって細かく、細かく引き裂かれ、まるでソーメンのような、異様な変わり果てた姿いかそうめんで冷たくなっていたのだ。

「なんという猟奇的な……。いかさんを、これほどまでに異様な姿にするなんて」

「それだけじゃないんだ、ちくわ探偵」

刑事が、いかさんの息絶えた触手の先を指差す。そこには、自身の墨を使って、地面に消え入りそうなダイイングメッセージが遺されていた。

『 いたいよう 』

「痛いよぅ、という苦悶の叫びか。あるいは、犯人の名を示しているのか……。ちくわ探偵、この猟奇殺人の犯人は一体誰なんだ!?」

私はフッ……と自嘲気味に微笑み、自身の胸の空洞に右手を当てた。

「刑事、メッセージの『意味』だけに囚われてはいけません。被害者の状態、それからメッセージの『響き』を重ね合わせるのです。

被害者は、いかさん。その姿は、あまりにも異様。

そう、『いかさんが、異様いか・いよう』。

そして、残された文字は『いたいよう』。これを重ね合わせると、浮かび上がる病名が一つあります。

――胃潰瘍いかいよう・いたいよう

つまり、怪我で搬送されたフリをして、密かに病室を抜け出し、いかさんを細切れにした犯人は……重度の胃潰瘍を患っていた、手羽先氏、お前だ!!」

私がバシッと力強く指を突きつけ、中庭に劇的な沈黙が流れた、まさにその瞬間だった。

「……待て待て待て、ちくわ探偵」

それまで神妙な顔で推理を聞いていたゆで卵刑事(デカ)が、突然、私の琥珀色の外套をグイッと引っ張った。

「刑事、どうしたのですか? 私の完璧な『いか異様=胃潰瘍』のロジックに、何か不服でも?」

「いや、ダジャレのキレはいつも通り素晴らしいんだがな、探偵。お前、さっき自分で言ったよな? 『トラックが横転する大事故が発生し、緊急搬送されてきた』って」

「ええ、言いました」

「手羽元氏が骨折、軟骨氏が脱臼。ここまではいい。大事故だからな。

……なんで手羽先氏だけ、事故の衝撃で【胃潰瘍】になって救急車で運ばれてんだよ!!! おかしいだろ!!! どんな事故の食らい方したら胃に穴が空いて緊急搬送されるんだよ!! それ、ただのストレス性の内科疾患だろ!! 事故関係ねえよ!!」

刑事のあまりにも真っ当すぎる医学的ツッコミが、夜の中庭に響き渡った。

物陰でスタンディングオベーションの準備をしていたナルト氏も、「あ、言われてみれば確かに……」という顔でそっと手を下ろしている。

「フッ……さすがは刑事。ですが、手羽先氏の『殺意』は、その不自然な搬送トリアージすらも突破したのです。彼は事故の混乱に乗じて『痛い、痛い(いたいよう)』と腹を抱えて救急車に紛れ込み、入院手続きを済ませることで、完璧なアリバイを作ろうとした。そう、すべては計算通りだったのさ……胃の痛み以外はね」

「「「な、なんだってーーーー!!!?」」」

不自然な救急搬送の謎まで(力技で)解き明かされ、中庭に本日一番の、そして「まあ、おでんの街の救急隊員なら、お腹痛がってる鶏肉を乗せちゃうかもな」という圧倒的な納得が轟いた。

ナルト氏も、あまりの強引な回収と刑事の冷静なツッコミの対比に、大号泣しながらスタンディングオベーションを送っている。

「ク、クソッ……! 事故ドサクサ搬送の矛盾まで見破られるなんて……! 私は前回の決闘で生き残り、病院の出汁の利権を握ろうとするいかさんが許せなくて、事故の野次馬に紛れて『胃が痛いよう』と救急車をヒッチハイクしたというのに……!!」

犯人である手羽先氏は、あまりの探偵の強引な回収と刑事の冷静なツッコミに精神を完全に粉砕され、その場で現行犯逮捕(内科への強制通院)となった。

医療現場の常識をダジャレでねじ伏せ、私は一人、夜の帳が下りる病院の裏口へと歩みを進めた。

胸の空洞を、今夜の夜風は、いつもより少しだけ胃薬の匂いを乗せて、誇らしげに通り抜けていく。

私の名は、ちくわ探偵。

どんなに搬送理由が不自然だろうとも、完璧な『胃潰瘍』ロジックで事件も医療の矛盾も丸ごと解決してみせる、孤独で健康的な練り物である。

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イカさん散々だなぁwww もうダジャレ探偵
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