2.異世界
「っ、痛てて」
眩しさで閉じていた目を恐る恐る開くと、カケルの目の前には見知らぬ光景が広がっていた。
そこは太くて大きなたくさんの柱に囲まれていて、茶髪の美少女と白髪交じりの太った王様らしき人がひときわ目立つ教壇のようなものの上にいた。
「ようこそ勇者様、そして同志の方々。わが国アルバーンへ。私はこの国の国王を務めさせてもらっていますキルバス・モルドと申します。以後お見知り置きを。」
「メディナと申します。この教会の教皇を務めております。」
まわりを見渡してみると、ここにいるのはどうやら俺だけではないようだ。あのとき理科室にいた40人弱がいた。
いきなりの出来事ばかりで、自分の置かれている状況がわからない。どうやらそれを察したのか、国王が、
「早速、なぜあなたたちが召喚されたか、話したいところなのですが、いきなりのことで混乱されているとおもいますので、少し場所を変えましょうか。私についてきてください。」
と言った。
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俺たちは大広間に通された。
みんな出されたお茶を飲んで、「ここはどこなんだろう」「テレビのドッキリじゃない?」などという会話をしている。
そんな中、国王が広間の中に入ってきた。
「皆さん。大変お待たせしました。では、状況を理解されていないと思われるので、1から説明していきます。」
そこで広間にいた美少女が、喋り始めた。
「改めまして……」
うん、長い……この人話すのうまくない……
ということでまとめる。
まず、この世界は大きく分けて人族、亜人族、魔神族の3つの種族に分かれている。
もちろん他の種もいるが、個体数が極めて少ないため、その他という枠に入っているらしい。
人族と魔神族が長い間戦争していたが、なんやかんやで魔神族が勝ちそう。
だから、最後の力を振り絞って異世界の勇者召喚をした。
偉大なる勇者様一行、どうか私達にお力をおかしください。
ということらしい。
う〜ん……嘘はついていないけど、なにか隠している感じ?
だって、勇者を召喚した時、普通は「おお、成功だ。ついに異世界の勇者一行を召喚したぞ……!」的なことを言うのがテンプレでしょ。
なのになんか落ち着いてたしさ……ね?
そんな事を考えていたら、凛華が口を開いた。
「私は嫌です。だいたいなんで、あなたがたの都合で、元の世界からこちらへとばなくてはならないのですか?私達も元の世界に、やらなければならないことをたくさん残してきました。なのではやく帰してください」
さすが凛華!よくやってくれた!
まわりからも「そうだそうだ!」などの声があがる。そこで国王が、静かに口を開いた。
「……お気持ちは理解します。ですが…現状、あなた達は元の世界へ帰ることができません」
「え……?なんでですか?こっちの世界に来れたのに、帰れないなんてことはないでしょう!」
「たしかにあなた達はルミナ様によってこの世界に召喚されましたが、召喚をしたのはルミナ様であり、私達の力では、どう頑張っても世界に鑑賞するなんて言うことはできません。なので、ここからは私の憶測ですが、ルミナ様の望みの通り、魔人族そして『魔王』を討伐していただき、ルミナ様に役目を終えたことを見せなければ元の世界へは帰れないかと……」
「そんな……」
凛華が崩れ落ちる。
「憶測ってことは一生帰れなくなるかもってことだろ……」
「そんなぁぁ〜〜〜!」
「戦うなんて嫌よ!なんで……」
「魔王を倒したあとでも、魔人族がたくさん残っていたら戦わなきゃいけないってことか?
「なんで俺達がそんなことやらなきゃならないんだよ。ふざけるな!」
生徒たちはパニック状態になっている。
俺もはじめは動揺したが、元の世界でオタク生活をしていたとき、こういう異世界召喚のテンプレートな場面はよく見てきたからか、まわりよりは落ち着いていられた。
そんなときに龍輝がバンと机を叩いて言った。
「みんな!こんなところでモルドさんを攻めたところで、俺達が帰れることになるわけじゃないだろ!魔王と魔族を倒せば元の世界に戻れるかもしれないんだろ。なら、僕は早く魔王と魔族を倒して、女神様に元の世界へ帰してもらったほうがいいと思う!それに、今も魔族のせいで苦しんでしまっている人たちが大勢いるんだろ。俺達はこの世界を救うために召喚されたんだ。なのにその人たちのことを見過ごしてここを去ることなんてできない。…だから、俺は……俺は、魔族と戦う!」
明らかに困難で危険な未来が待っていることはわかっているんだろうけど、拳を天井に突き上げて堂々と言う龍輝は決意を固めた目をしている。
「お前はやっぱそうだよな。お前一人だと不安だろ。だから俺もついて行ってやるよ」
「銀河……」
「こんな流れで手伝わないってわけにはいかないよね。私も手伝うよ!」
「詩葉……」
「はぁ……私もやるよ……今のところ自分たちにできることなんて、それぐらいしかないしね…ただ、やるからには手を抜かないし、絶対に元の世界に戻るから!」
「凛華……」
そこからは、「俺も戦う!」「私も!」という声がたくさん上がり、なにげに直也先生も賛同していた。
そんなかんじで、クラス全員が戦いに参加することになった。
俺は、みんなが決意を固めて盛り上がっている中、一人、じっと国王を見ていた。
彼は満足そうに、龍輝達を見ながら微笑んでいる。
このとき俺は、国王とはどれほど恐ろしい存在なのかを理解した。
おそらくこいつは長年人と関わり合ってきたという経験から、誰がどのような性格で、影響力がある人物は誰なのかということに気づいていたのだろう。
正義感の強いものは、誰かを救い、目立ち、皆を引っ張っていけるだろう。
だが、その性格が、悪用されることもある……
国王が口を開く。
「どうやら意見を固めていただけたようですね。では、魔王、魔族を倒すために今後の予定について説明させていただきます……」
まだまだ、国王の話は終わりそうにない。
俺は国王、キリバス・モルドのことをブラックリストに追加したのだった。
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その日の夜……
大きな食堂で、みんなで、用意された夜ご飯を食べていた。
「なんか長い一日だったね〜!」
「そうだな詩葉。明日も早いみたいだから早く寝ないとな」
「イェーイ!パーティーだ!」
「「イェーイ!」」
「銀河も、みんなもほどほどにな……」
苦笑しながらみんなを見る龍輝。
さすがの龍輝でもこの流れを変えられそうにない。
っていうか、異世界料理うまくね!?高級フランス料理食べてる気分だわ!
直哉先生、酔っ払って生徒をナンパしてる……なんというか、控えめに言って死んだほうがいいな。
そんな楽しいひとときを過ごし、みんな、ひとりひとりに用意された個室のベットに入り、目を瞑る。
かなり疲れていたんだろう。ベッドに入るとものすごい眠気に襲われた。眠気に身を任せて目を閉じる。
ここから、俺の第2の物語が始まる。
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