表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

私にはまだない、”答え”

「今のところ、」


「勇者が正しかったか正しくなかったかは立場によりますよね。」


「そーいうことになるな」

アレキがにかっと笑う。


「でもな。今のままじゃ記事は作れねぇ。」

サングラス越しに鋭い目が光る。

「足りないってことですよね。」

「ああ。事実がな。」


勇者が何をしたのか。教科書通りの解説では足りないところにまで来ている。

「と、いうことで軍部に行くか。」

その一言で、一瞬で体温が下がる。


「軍部…?なぜ軍部なんですか?」

「軍部の内部に記録課があるだろ。」

「他を当たればいいじゃないですか?」

「懐かしいだろ?嫌なのか?」


こうなった時のアレキは誰にも止められない。

従うほかなかった。


数年ぶりに世界政府軍支部へと足を踏み入れる。

支部といってもさすがは都市部。

さっきから数えきれないほどの兵士が行き交っている。


ふと、横を見ると兵士の一人が胸元に触れ、何かを祈る仕草をしていた。


「取材、受けてくれますかね?」

「何とかなるだろ。」

軽い口調だった。



「おーーーい!!!」


その時向こうから誰かが駆けてきた。

「ハルじゃん!」

「カルミア!?何でここに?」

予想だにしていなかった再会だった。


「こいつ何?」

アレキが気まずそうに聞いてくる。


「士官学校時代の友人で…」

「カルミア=スワン。今は立派な軍人やってまーす!」

「で、どしたの?」

「取材で…」

「マジで!?案内するよー!」

そのまま記録課へ向かうこととなった。



「ハルが記者になるなんてねぇ。似合わない似合わない」

「からかわないでよ。」

思わずつっけんどんな返事をしてしまう。

「サンダーソニアさん。こいつ士官学校をクビになったとき『軍人になれないー』なんて泣いてたんですよー。」

「意外だな。」

アレキがにやにや笑いを浮かべながらこちらを見る。


「言わないでよ…」

「で、なんでやめたの?」

「父親の命令だったっけ?」

「うっ。」

虫の居所が悪い。話を逸らす材料を探して辺りを見回す。


「あっ。」

「あれって……」

中庭には鎖でつながれた人たちと軍人たちがいた。


「危険因子。」

「え?」


「…魔法使っちゃったみたいだよ。」

——声の温度がさっきより低い。


「魔族だけじゃないよ。」

「たまに“よく分かんない種族”も混じってる。」

——友人の横顔は暗い。


「カルミアはさ…」

「これ、正しいって思ってる?」


「勇者は正しかったと思う?」


「……あたし軍人だよ?」

「“友達”のカルミアに聞いている。」

カルミアは周りに人がいないことを確認してから


「必要ならやるよ?」

「守るためならさ、切り捨てるしかないときもあるでしょ。」

そう答えた。


「そっか。答えを持ってて羨ましいよ。」

——本心だった。昔からカルミアは私の一歩先を行く。

自分をしっかり持っている。


「私もさ、答え出せるかな。」


「ねぇ、ハル。」

カルミアがふいに立ち止まる。


「ハルはさ、そのままでいてね。」


彼女らしくない一言だったが、それがいつまでも耳に残った。


「さっ、ここが記録課。ごゆっくりどーぞ。」



知ったら戻れない。

それでも——

止まれなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ