6.漢、はめられる(強敵のアシストのおかげ?)
人間亜人の未来へ向けた大会議である。各国、各人種の代表が一同に集う。
何かあったら大変だ、安全はいくら期しても万全といかないだろう。取り敢えず四天と呼ばれるほどの二人が会議の広間に詰めたほうがいい。決して邪魔にならないよう隅で控えていよう。
以上がヨシツネとベルが会議へ潜りこむため駆使した方便だ。
お前たちは別に中へ居なくていいだろ、とイザークにすげ無く言われた。お二方はまだ傷が癒えていないようですから、と警護主任は気を遣う。ニンジャがいるから大丈夫だぞ、とユリウスが高笑いしながら、おまえたちはいらん! でくる。
残念ながらベルは外から耳を澄ますかとしたが、ヨシツネは通常の聴力だ。室外にあっては様子がつかめない。
昨晩のユリウスが示した自信満々な言葉の結果をぜひ見てみたい。
特にヨシツネが頑張った。やはり狙い所は警護担当者だろうとして、最後の最後で粘る。確かな身元とした警護の者は一人でも多いほうがいいはずだ。会議の成功のためなら負傷を押してでも協力したい。
熱意は警護主任に届いた。何より四天とする勇名が心強い。おかしな人物であるはずがない。
ヨシツネとベルは世に名を馳せる戦士である。怪我していようとも頼りになるだろう。ただし世に知られていない私事では、悪童とする面がある。かなり強くである。
しめしめと二人は広間の片隅に陣取った。
会議が始まれば、胸中に昨晩の出来事が鮮やかに甦る。
はっはっは、とユリウスが笑ってくる。きっと誰もが俺の話しに賛成し、おまえたちの希望に返事はないぞ! と断言してきた。なぜそこまできっぱり、と不思議なくらいだった。
たまに団長は希望と現実をごちゃにするからなぁ〜、とヨシツネがのんびり推察を述べれば、ベルは笑っていた。
そして予感は的中した。怖いくらいに、である。
ユリウスが次の実権者に年長者の二人を推したら反応なしとくる。ちょっと気の毒になるくらい慌てふためいている。会議の進行役であるイザークには、諦めろと言われる始末である。
これは詰みかな、とベルが小さく口にする。だな、とヨシツネも相槌を打つ。
突如であった。
「ユリウス、お前の気持ちはよくわかったぞー」
龍人の部族長ダイロンの隣りで座っていたアーゼクスが立ち上がってきた。不躾な行動に発言だったが、重要な局面である。列席者はとがめるより成り行きを見守った。
それに何より似た者同士であるから、しゃべらせるだけしゃべらせておいたほうが後々の面倒にならなそうだ。
実際ユリウスはとても嬉しそうだ。我が意を得た仲間が見つかった気分だろう。
「おお、アーゼクスよ。わかってくれるか、俺の気持ちを」
「もちろんだ。何度、命がけの勝負している。剣越しに伝わってくるユリウスの熱い想い、ここでもしかと受け止めた」
ずいぶん盛り上がっているようではないか。厄介ごとが増えそうだな、とヨシツネが広間の片隅から思っていたらである。
アーゼクスが拳を振り上げて力説してきた。
「ユリウス王! いい響きではないか。今度、剣で打ち合う際は呼び捨てなどしない。ちゃんとユリウス王! と呼びながら剣を振るって相談することにしよう。たまにオルフェスを誤解してしまう己の未熟さは、ユリウス王にしか聞かせられないからな」
いろいろ問題を含有しているが、兎にも角にもユリウスの叫びは一言だ。
「なんで、そうなる、アーゼクスよ!」
どうしたわけか、アーゼクスが酷くうろたえだした。
「どどどういうことだ。ユリウスは王となったら、俺と剣で打ち合うことはしなくなるし、何より相談に乗ってくれなくなるということなのか。オルフェスとの問題は、おまえにしか話せないんだぞー」
まるで泣きつくみたいだ。
ちなみに周囲で聞く者には、アーゼクスという龍人が王とする称号の意味を理解しているか甚だ疑った。王とする一方で、おまえ呼ばわりである。以前のままとしそうである。
そして問いかけられた方も変わらないを望むようだ。
「バカヤロー、なんで俺が剣を受け止めないとなる。まともに打ち合えるのは、おまえだけだぞ。それにアーゼクスとオルフェスが俺とプリムラに夫婦の在り方を教えてくれているんだ。そこは、わかれっ」
「そうなのか、ユリウスは王になっても剣で打ち合ったり話しを聞いてくれるのだな」
「ああ、もちろんだ。俺は王になっても変わらない」
胸を張ったユリウスが輝きを放つかのように堂々と断言した。
この機会を、イザークが逃すはずはない。
「ユリウスの了承を得られたましたところで、これより帝国は王国とし、新たな王の誕生をここに宣言とします。詳細については打ち合わせを必要としますが、取り敢えずです。王の戴冠式もかねた、ハナナ王国第一王女プリムラとの結婚式を近々挙げるよう予定します。ぜひご参列のほどをよろしくお願い致します」
万雷の拍手が湧き起こった。いずれの顔も、にこにこである。
例外としてグネルス皇国カナン皇王だけはちょっと涙ぐんでいた。決して祝福していないわけではないが、「そうか、そうか」と納得に腐心されているご様子である。
例外は、もう一人いた。
王とされた当人である。当初は、やられたとする顔をした。けれどもすぐに気持ちを切り替えて、真面目腐ってレオナとシルフィーを呼ぶ。
なんだろ? と二人の亜人女性が肩をそろえて奥へ進む最中だった。
自らユリウスが駆けていく。
レオナとシルフィーの前へ立つなりだ。
両手両膝を床へ着く。すまん、と額までこすりつける。
ヨシツネ辺りに言わせると、すっかり板に付いた土下座をしていた。




