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婚約破棄され続きの騎士は想いが重い王女の愛で進撃す!  作者: ふみんのゆめ
【長めのエピローグ】漢、そして漢たちの夢

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3.漢、やっぱり気を遣う(生きるほうが大変)

 ユリウスの判断にいち早く意を唱えた者はミケルだった。ヨシツネやベルを差し置いてでもする。せずにいられなかったのだろう。


「僕に追わせてください。ローエンは僕の手でけりをつけます」

「ミケルよ、俺は追跡するまでもないと考えるぞ」

「もしユリウス様が僕なんかに気を使っているなら無用です」

「気を使うだろう、当然だ」


 おやおやとイザークを始め三人は苦笑いしそうになった。さすがにここは深い思惑があっての判断だと考えていた。ところがどうやら私情らしい。親友だった者に対する配慮だと公言していた。気持ちいいほど、はっきり認めている。


 だからこそミケルは引き下がれない。愛する人を傷つけられた本人が辛かったはずだと思えば、なおさらだ。


「ユリウス様の優しさに甘えるわけにはいきませんです。ローエンは許されるべきでない。だから僕が……」


 ぐっと両手を握り締めてミケルはうつむく。やはりどこか辛そうだ。


 今度こそ苦笑したイザークはユリウスに代わって返答を引き受けた。


「ミケル。放っておくことこそ、最も重い処罰に相当するかもしれない」

「そ、そうなんですか?」

「ユリウス王の妃になる女性だけではなく、皇帝の弟まで手をかけた人物が、どこへ行く。少なくともこの大陸において行き場はない」

「……生きているほうが死ぬより大変という処罰ですか……」


 ため息と共にミケルは沈痛な面持ちへなった。心中はさぞかし複雑だろう。


 待て! とユリウスが上げた。


 鋭い声だ。タイミングもある。四天(してん)と呼ばれる三人は、おっとなる。さぞかし含蓄ある話しが出てきそうだ。いざの際のユリウスは、普段から想像つかない言動を繰り出してくることが稀にある。

 やはり斜め上からの発言がきた。ただし今回は良くない方向だった。


「なぜ俺が王となっている。婚約破棄されるしかない、しがない男がどうしてそんな偉そうな位になる。おかしいだろ」


 うーん、と四天の三人だけでなくミケルさえ唸ってしまう。


 取り敢えずヨシツネが各国の最高位にある方々へ対して行ってきた失礼を糺した。


「よく言いますね〜。団長の時から、偉そうだったじゃないですか。むしろ今の位になってようやく態度が合致するようになりましたよ、ユリウス『王』!」

「なにを言う、ヨシツネよ。俺は無礼なだけだ、偉そうにしていたわけではないぞ。第一だ、ここは帝国だぞ。王ではなくて皇帝だろう」


 うんうんとユリウスは胸の前で腕を組んで悦に入っている。


 ヨシツネのほうも揚げ足を取られて黙る玉ではない。 

 

「そういいますけどね。肝心の皇帝がどこかへ逃げ出して行方知れずじゃーねー、どうにもならないじゃないですかー」


 こちらも王を相手にしているようではない。


 やれやれとイザークが間に割って入った。


「少し私も先走りすぎたようだ。ともかく当面は調査を進めつつ、あまり混乱が酷くならないよう努める。決定は各国及び各部族の長たる人物が揃った話し合いのうえで出すことになるだろう」


 だね、とベルのノリいい同意がお開きの合図となった。


 つまりローエンは放置で結論が出たわけである。



 ※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※



 失礼します、とミケルが出ていくなりだ。

 ユリウス相手にムキとなって楽しんでいたヨシツネが、がらり態度を変えた。


「オレはローエンを見つけたら、ぶっ殺しますよ。いいですね」

「うん、僕もそうなるかな。やっぱり姿を見たら我慢できそうもないな」


 まったく同じ気持ちだとベルも表明してくる。

 イザークは念の為か、耳をすまし、ぐるり室内を見渡してからだ。


「ユリウスは、どうなんだ。ミケルを思いやっての結論だろうが、実際目の前にしたら我慢できるのか」


 少しは悩むだろうと予想していたが、即答だった。


「もちろんだ。ミケルに言った手前があるからな。それにもうプリムラを狙うこともないだろう」

「逆恨みしての襲撃をしてくる可能性もないとも言いきれない」 

「その時はその時だ。それに俺の目の前へ来たら、やっぱりぶった斬ってしまうだろうしな」


 なーんだ、とヨシツネにベルが笑う。結局は自分たちと同じでないか。当面は変に追う真似を止しておく、今はそれでいい。


 けれど二人が納得している一方で、イザークがちょっと難しい顔をしてきた。

 こういう際、ユリウスは目ざとい。


「どうした、イザーク。しばらくグレイに会えていないせいで寂しくなったか」

「いや、この頃は以前より連絡をくれるようになっている。男色家の誤解は解けたらしい」


 もう隠さないようだとヨシツネにベルは認識する。そもそもグレイがイザークを男色家と勘違いした時期があったか、と疑問も湧いてくる。でも二人は学んでいた。現在はユリウスよりグレイ絡みのイザークのほうが厄介者だ。


 難しい顔の真実について聞き出すには、余計なことを引きずらないほうが得策だ。

 経験は大いに役立ち、イザークは自ら語り出す。


「ローエンの件で私が懸念を深くした点は、ユリウスの優しさだ。いや我々の間で遠慮は止そう。はっきり言えば甘さだ。いつかユリウス自身を苦しめることになるのでは、と心配になる」


 はっはっは、とユリウスが今晩初めて高笑いを上げた。狭い一室であれば、よく響く。


「俺が甘いだと、バカな。これまで散々ぶった斬ってきたヤツだぞ。命を多く奪ってきたろくでなしと言われたら反論できない男だぞ」

「戦場か乱暴狼藉を働いている者にしか、ユリウスが大剣を振るっているところを見たことないな」

「それはあれだ、おまえらもそうだろ?」


 ベルは肩をすくめ首を横に振ってくる。


 まっさかー、とヨシツネはあっさり否定してくる。


「私は手段を選ばない」


 そうイザークは答えてから、逆にユリウスへ問う。


 まさかウイン皇弟ですら気の毒に思っていないか、と。 

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