ヴィラン
ストロング・バッカスと氷雪華はSGJの車に乗って、現場へと向かっていた。
「相変わらず、この車は狭めぇなぁ」
運転席では、バッカスが窮屈そうに巨体を縮めていた。
「これ、ワゴン車ですよ。これより大きいとなると、トラックくらいじゃないと・・・」
雪乃が助手席で、バッカスのウィスキーを大事そうに抱えている。
「さっき聞いたとおり、『太陽の導き手』ってヴィランの小せぇねぐらを叩きに行く。お前は俺の後ろから付いてくるだけでいい」
「はい!」
「ところで・・・バッカスさん、その『太陽の導き手』という連中は何者なんですか?」
「あいつらは、総長と五人の幹部を筆頭に、大勢の下っ端の団員で構成されたヴィラン組織だ」
「総長が何かの目的で、幹部や団員を動かしているんですか?」
「あいつらの行動理念は『強い日本に戻すこと』だが、団員達がその理念や、総長の命令で動いているわけじゃねぇ」
「それは、どういうことですか?」
「団員達は、トップの力を笠に着て、好きなように悪行を働いているだけだ」
「ええ!?じゃあ、団員には何の大義名分も無いってことですか!?」
「持ってるヤツもいるだろうが、大半は違うな。しかも、SNSで簡単に団員になれる」
「トップの六人を倒さないと、犯罪を起こす連中が増えるってことですか・・・酷い!」
「だが、その六人は滅多に姿を現さない。一度、総長の『ハー・マジェスティ』の居場所を掴み、ヒーローたちが踏み込んだことがある。だが、散々な結果だった」
「まさか・・・皆、やられたんですか!?」
「いや、一人の犠牲で、他の者は助かった。その時の犠牲者が鬼紗羅だ」
「!」
雪乃は言葉を失った。
「ヤツは必ず、俺がブッ殺す!」
バッカスが鬼気迫る表情で言った。
雪乃はそれ以上、バッカスに声をかけることができなかった。
しばらくすると、ナビの目的地付近から少し離れた場所に、バッカスは車を停めた。
そこは駅の近くで、人通りの多い場所である。
「雪乃、ここから歩くぞ」
バッカスが体をくねらせながら車から降りる。
「はい!それと、氷雪華です」
「ルイーズ、現着だ」
バッカスがインカムの通信機で報告する。
「了解!現場の警官からは、対象が移動したという報告は来ていない」
ルイーズがバッカスに応答する。
「わかった。突入して確保する」
「バッカスさん」
雪乃はウィスキーの瓶をバッカスに差し出す。
「おう」
バッカスはウィスキーを慣れた手つきで受け取った。
「あ、ちょっと待ってください」
雪乃は車のスライドドアを開けた。
「君と一緒に戦うのは、まだ早いから・・・」
雪乃はそう言うと、氷牙を車内に残した。
そして、腰の木洩陽を握りしめた。
ーーー頑張ろうね!




